俺と先生の出会いは、中学三年生の頃だった。
あの出会いは、お母さんのおかげだったかもしれない。
「ちょっと、蓮。何よ!この点数は!」
そういい、お母さんは机に2、3枚のテストを押し付けた。どれも30点台。中学生でこれはまずいとでも思ったのだろうか。皆の前で俺に怒鳴るお母さんを優とお父さんはどこか冷たい目で見ていた。
「お兄ちゃん。勉強すればいいのに。僕、手伝うよ?」
なぜか優は俺とお母さんだけの輪に無理やり入り込む
上目遣いで俺のほうを見る優を見ていると、なぜか無性に〝ある人〟に会いたくなる。
その〝ある人〟とは、誰のことだろうか。自分でもわかっていない。
「だから、家庭教師、探してきたの。」
突然『家庭教師』という言葉が出て開いた口が塞がらなくなった。それに、探してきたという言い方は合っているのだろうか。それすらもわからないのは俺だけだろうか。翌日から、さっそく家庭教師が来るらしいのだが、僕は一人でドキドキしていた。
どんな先生が来るのだろうか。
厳しくないか。優しいか。とにかく聞きたいことばかりで眠れなかった。
朝になり、僕は1時間も寝れないまま朝を迎えた。
寝れなかった理由はわかってる。家庭教師の件だ。眠気に堪えながらリビングに向かった。朝ごはんの匂いが階段まで匂ってくる。お腹がすいているからもあるからか、ますます眠くなった。
「おはよぉ……」
「蓮!ほら、もう7時よ。さっさと食べないと遅刻するよ!?」
時計を今日、一回も見ていなく、今が何時かもわかっていなかった。7時、あと30分で家を出なきゃいけない。鈍間な俺は、30分で準備も着替えをするのも、だいぶ急がなければいけない。
「兄ちゃん!もう何で何回も起こしたのに起きないのさ!」
起こしていた、のか?そんな全く感覚がない。というか、優が起こしても起きないくらい短時間で熟睡していたのか。自分でも引ける。
「もう、兄ちゃん!行くよ!」
優はそう言いながら俺の腕を引っ張り、学校に連れ去られた(?)。
「おはよぉごさいますぅ…」
まだ目が覚め切ってない。眠気がどうしても飛ばない。そんな俺を見て友達の康二が「昨日はゲームでもしたん?」と言いながら笑った。康二を見ていると無性に腹が立つ。
「違うって。康二、聞いてよね?」
昨日のことを話すと康二はニコニコして頷いた。〝納得できる〟という感じの顔だ。
「いや、何でニコニコしてるの」
康二に問いかけると考える間もなく
「いやぁ、あの点数はさすがにやばいんやて。蓮も気づいとらんの?」
気づいてはいたが、現実は現実だ。過去を変えたいとは思ったが、超能力なんかこの世にあるわけがないことはわかっている。ガラガラと音を立てながら先生が教室に入って、一気に場は静まった。
授業が終わり、皆が帰ったとき、俺はまだ教室に残っていた。居残りとかではなく、家庭教師に会いたくないからだ。でも、どうせ母は門限より後に勉強の時間を入れる。もう、どうしようもないと思い、俺は教室を後にした。
家の前についたが、なかなか鍵を開ける勇気が出ない。もう家庭教師が来ていて、「どんだけ寄り道してきたの!」と怒られるかもしれない。俺が遅く帰ってきたせいで、家庭教師がとても厳しくなってしまうかもしれない。なんてありえないデメリットしかない妄想をしていてもしょうがないと思い、思い切って鍵を開けた。
そこにいたのは、知らない男性と話しているお母さん。
「え、この人、誰?」
多分、家庭教師だ。
「あ、蓮君かな?これから蓮君の家庭教師になる阿部亮平です!よろしくね」
家庭教師の『阿部亮平』という人は、朝思っていた〝ある人〟と同じ人だった。
コメント
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家庭教師がSnow Manなんてどんな世界線歩いてきたんだよ~! しかも、めめの弟(優)とか、めめが飼ってる犬(モコ)は、前世何をしてきたんだ~?