TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する





「なぁ、なぁ〜。最近、瑛斗ってやけに付き合い悪くね? 前は合コン三昧だったくせに、もう二カ月は行ってないよな。……お陰様で、俺も枯れる一方だよ」



 恨めしそうな顔を見せながら、首を直角に曲げて俺の顔を覗き込む健。まるで、壊れたブリキの玩具だ。



「なんだ、健知らないの? 瑛斗はね、今本気の子がいるから無理だよ」


「なんだよ、チクショー! やっぱ彼女がいるのかよっ!」


「いや……。まだ、彼女ではないらしいんだけどね?」


「えっ!? あの瑛斗が狙った女とまだ付き合ってないとかっ! そんな事あんの!? えっ! 大和やまと、その女見たことある!?」


「いや、『うさぎちゃん』って名前しか知らない」


「……あっ! その名前! 俺もこの間聞いたっ! おい、瑛斗! 誰だよその『うさぎちゃん』て!?」



 興味津々といった感じで、俺を見つめる健と大和。



(そんなに見つめたところで、お前らに会わせる気なんて微塵もないけどな)



「史上最強に可愛い、天使だよ」


「……えっ!? お前が天使とか言っちゃうわけ!? 俺のエンジェルをバカ呼ばわりしたお前がっ!?」



 チラリと二人を流し見れば、さも驚いたような顔をさせている健。大和はといえば、それは面白そうにニヤニヤとしている。



「へぇ〜、随分とご執心なようで。で、いつそんな子と出会ったの?」



(フッ……。そんなに聞きたいなら聞かせてやろうじゃないか。あの、天使が舞い降りた穏やかな午後の日のことを……)



「あれは……満開に咲き誇っていた桜が見るも無残に全滅した頃の、ある日の午後だった」


「なんだよ、そのナレーションみたいなの。……しかも下手すぎ」


「煩い! 黙って聞けっ!」





 ──あの日。

 バイトでやっているモデルの仕事がドタキャンになり、大学に行く気にもなれなかった俺は、そのまま真っ直ぐ自宅に帰ることにした。


 その日は何の気まぐれか、いつもなら絶対に通らないはずの道を歩いて帰っていた俺。いや、無意識に導かれていたんだと思う。

 普段なら絶対に歩かない時間帯に、絶対に通らない道のり。あの時は気付けなかったけど──。


 あれはきっと、運命だったんだ。


 ふと、何気なく通りがけに公園を覗くと、天使のような無邪気な笑顔を見せる、それはそれは可愛い女の子がいた。立ち漕ぎでブランコに乗る姿は、羽を広げて天を舞う天使のよう。

 俺は吸い寄せられるようにして天使へと近付くと、そこで、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。



『キャーーッ!!! 大丈夫ですかっ!!?』


『……えっ!!? 何この人!!? 今、自分からぶつかって来たよね!!?』






「……いや、それただブランコにぶつかっ──」


「煩い! 黙って聞けっ!」






 地面に寝転がる俺を心配そうに見下ろすその姿は、まさに地上に舞い降りた天使。



『あ、あの……。大丈夫ですか……?』


『やめなよ美兎っ! この人絶対危ない人だよ! 格好だってホストみたいだしっ! 変な因縁つけられるよ!?』


『で、でも……倒れてるのに放っておけないよ』


『放っときなよ! 勝手に自爆してきたのこの人だしっ! 怖すぎっ! ……しかもなんか笑ってるし! キモッ!』



 なんだか酷い言われようだったが、そんなこと俺にはどうでも良かった。ただ、目の前に広がる光景に酔いしれていたんだ──。



(なんて最高なアングル……)



『……パン……ッ』


『ぱん……?』


『……!? 美兎の持ってるパンじゃない!? 早く、それ渡して行こっ!』



 天使の持っていたパンを奪い取ると、俺に向かって雑に投げつけた堕天使──改め悪魔。そのまま天使の腕を取ると、足早に俺の元から去っていく。

 一人残された俺は、その場から動くこともできずに、ただジッと先程見た残像を眺めていた。


 パンツ越しに見えた、うるわしの天使を──。






「パンツが良かっただけじゃねーかよ!」


「……ちげーわっ!」


「いや。今のお前の話しからは、パンツへの熱意しか感じられなかった」


「っざけんな! 俺の純粋な気持ちをみくびるなっ!」


「……まっ。パンツなんて腐る程見てきただろうし? 瑛斗にしたらどーでもいいよな、そんなの」


「……おいっ!! うさぎちゃんのパンツは別格だ!!!」


「やっぱパンツかよ……」


「ダァーッ!! ちげぇーつってんだろ!?」



 俺の純粋な気持ちを全く信じようともしない二人に、呆れて溜息が出る。



(俺は純粋にうさぎちゃんに恋してるんだっつーの!)



「……で、たまたま運良く親同士が知り合いで、家庭教師をすることになったんだ?」


「バーカ。運良くじゃねぇよ。運命な、う・ん・め・い!」


「あー、はいはい。……で? いつ会わせてくれるの? 『うさぎちゃん』に」


「は? お前らに会わせるわけねぇーだろ!」


「はぁ!? なんでだよー! 『うさぎちゃん』のお友達、紹介してくれよ〜!」


「ふざけんなっ! いちごのパンツは俺だけのもんだっ!」


「は……? いちご? え、高校生ってそんなパンツ履くの? なんか萎えるわぁ……」


「バカ言え! フル勃○だろっ!」


 

 神聖なるいちごのパンツの良さがわからないとは、なんと哀れな健。



(俺なんて想像するだけで今にも昇天しそうだわっ! ……ま、それも美兎ちゃん限定でなんだけど)



「じゃ、俺もう行くわ」



 美兎ちゃんの顔を想像するだけで、思わず顔がニヤケてしまう。



「あー。今日もカテキョ?」


「そっ。レッツ、いちご狩り!」


「いちご狩りって……。カテキョだろ」



 ルンタッタ・ルンタッタとスキップで走り去る俺の背に向け、呆れ顔の大和は小さく溜息を吐く。その横で、「やっぱパンツじゃねぇかよ」と小さく呟いた健の声は、俺の耳に届くことはなかった。





君は愛しのバニーちゃん

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

234

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚