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楽しい女子会は終わり、また次の週がやってきた。仕事だ。
課長と横山との打ち合わせが終わって、一息つこうと自販機に向かって歩いていると、横山と一緒に関西から異動してきた一つ後輩の宝山君がそばに寄ってきた。
「岡島さん、今度飲みに行きませんか」
これは……あれか? どっちだ?
「あ、僕横山先輩と仲良くしてもらってて、岡島さんも横山さんと仲が良さそうだから三人でどうかなと思って」
「そうなのね。ありがとう、ぜひ」
横山が行くかやめるか、きっと勝手に決めてくれるだろうと、私は適当に返事をした。今のところ、宝山君の私への態度に崇拝めいたものはなさそうだった。
その結果、その週の金曜の夜に私たちは三人で飲みに行くことになった。横山が言うには、宝山君のプッシュがすごくて断りきれなかったそうだ。
「たまにはいいんじゃない? 私も関西時代の二人の話聞きたいし」
と、私はなんだかんだ楽しみにしていた。
当日、普段クールな横山がとにかく喋る賑やかな宝山君を突っ込むのを見るという、とても楽しくて私得な飲み会だった。二人とも私を崇めないでいていくれるというのも大きかった。
崇めはしないが、宝山君は私に興味津々という感じで、彼氏の有無や好きなタイプをぐいぐい聞いてくる。メッセージの交換も申し込まれ、なんだか普通に口説かれているような気になってくる。
宝山君はかわいい。たった一つだけど、年下を全面に出してくる。これはモテるな、割とチャラ系だなと思う。
彼はまだ私の前世が効いていない、もしかしたら関西圏の人々には影響が出ないのだろうか。横山も普通だし。それともまだこれからじわじわくるのか……
「どしたんですか? ぼんやりして」
宝山君が目の前で手を振っている。
「飲みすぎちゃったかな。会社の飲み会ではそんなに飲まないから」
私は笑いながら答えた。
「宝山くんて、なんかめでたい名前で良いよねー! おぼっちゃまなの?」
「いえいえ、普通です。本家ってのがありますけど、あそこも普通ですよ。気に入ったならお嫁に来てくださいよ」
「またまたー、あははー」
そんなくだらない会話を楽しんでいた。サアヤとコトリ以外でこんなの久々かも。はしゃぐ私を尻目に、横山は割と無口になっていた。
宝山君がトイレに行っている間に、横山に聞いてみた。
「あんたはいつもこんな感じなの? 私と宝山君じゃつまらない?」
横山は少し不機嫌そうに返してきた。
「いや、二人で楽しそうだから邪魔かと思って」
「なんでよ。三人で楽しもうよ。私、最近親友以外とは入れ替わり立ち替わりお酌をしてくる人たちとしか飲んでないから普通に楽しくて、嬉しいの」
「それなんだけどさ、俺はまあ、わかる。完全に前世とやらを信じたわけじゃないけど。親友二人や宝山は何故平気なんだろうな。宝山だってもう異動してきてからそれなりになるぞ」
サアヤとコトリに関しては親友だから、で済ましてた。家族も普通だ。父親が娘に甘いのは通常運行よね?
「私の前世力? が効く人とそうでない人がいるってこと?」
「いや、全然わからん」
「思い切って、宝山くんもツクシちゃんに見てもらう?」
「そしたら俺のこともバレんだろ。嫌だな」
そこで、宝山君が戻ってきた。
「なんすかなんすか、二人でこそこそと。えっ、もしかして付き合ってるんですか? 僕が 岡島さん狙ってるのに」
「アホか」
「岡島さん、横山先輩は激しくモテるし、不誠実なこと全然してないのに別れる時に結構揉めるんですよ。やめた方がいいですよ」
「お前、それ褒めてるのか貶してるのか微妙だな。怒りづらいわ」
「揉めるってどんなの? 知りたい!」
「歴代彼女さんが、セフレでもいいから付き合いたい、他に彼女を作ってもいいからって言うんすよ。だから、先輩めっちゃテクニシャンって噂で」
「……うるせえぞ、宝山」
すごいな。私のは外に言いふらされるようなことはなったから、彼よりマシなのかも。
ほへーという顔をして横山を見ていた私に気づき、宝山君が驚いた顔で、
「えっ、岡島さんもそういうのがいいんですか」
なんて言うから、
「いや、私は普通がいいの!」
と大声で答えてしまった。
宝山君は大笑いしていた。こっちとしては切実な問題なんですけどね!
「僕は普通ですよ。上手いと褒められたこともないけど、少なくとも文句を言われたことはないです」
「そうなんだ」
私は思わず真面目に受け答えしてしまった。
「おい」
横山が仏頂面でツッコむ。
「下ネタはその辺にしておけ。コンプラコンプラ」
と、話を終わらせた。
その後は普通に仕事の軽い愚痴や、こっちの上司の噂話で普通に終わった。送ると言い張る宝山君を横山に押し付け、私は一人で楽しい気分で帰り道を歩いて帰った。
ぐっすり眠れそうな気分だった。