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「……あの、すいません。チーフにまで、ご迷惑をかけてしまって……」
少しだけ頭を振り返らせて、あの男がもう追って来てはいないことを確かめてから、そう口を開いた。
「いや、僕は迷惑だなんて思ってはいない。それより君が、傷ついていなければいいと思っている」
肩に回されていた腕で、吐息が感じられるほど間近にギュッと強く抱き寄せられて、「あっ……」と、小さく声が漏れる。
彼が、私を思いやってくれていることが、抱かれた手の温もりから伝わってきて、
「……ありがとうございます」
と、一言を口にした。
「お礼なんていい。君が元気ならな」
「あ……ありがとう、ございます」
それしか言えなくて、お礼の言葉をくり返す。彼の優しさに、涙がじわりと滲み出しそうになる。
「そんなに一人で、気を張らなくていい。君はもう一人じゃないのだから、もっと僕に頼って甘えていいから」
涙がこらえ切れなくなって目尻から零れ落ちると、彼が道路脇にスッと手を引いて、
「……泣きたい時には泣いたらいい。いつでも僕の胸なら貸すから」
ワイシャツの胸元へ、私の泣き顔をグッと強く押し当てた──。