「大丈夫だ。僕がいるから」
低く穏やかな声とともに、あたたかな手の平で背中をぽんぽんと叩かれて、ささくれ立ってしまっていた気持ちが、じんわりと落ち着いていくのを感じた……。
「何か美味しいものでも食べようか。何でも君の好きなものでいいから」
「はい……」と、彼の優しさに応えて、「だけど……、」と、言葉を継いだ。
「だけど、私だけが好きなものじゃなくて、チーフも好きなものが、いいです……」
私一人よりも、彼も好きなものを二人で食べた方が、きっとより美味しく感じられるはずだからと思えた。
「君がそう言うのなら、二人で食べたいものにしようか」
滲んだ涙を拭い、「はい!」と、笑顔で頷くと、
「笑ってくれて、よかったよ」と、笑顔が返された。
「それじゃあ、歩きながら一緒に選ぼうか?」
彼から手が差し出されると、もう二度とは離したくないという思いで、その手をしっかりと握り締めた──。
コメント
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良かった。 美味しいものを食べて元気出して😊