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マンションの部屋に2人でいることに、正直まだ全然慣れない。
何とも不思議な感覚――
かといって、ずっと一緒にいる……ということはない。
龍聖君の休みが少ない上に、休日が合うことはほとんどないので、リビングにいてもなかなか会わない。龍聖君が仕事を持ち帰り、自室にこもりきりになることも普通になっていた。
それでも、私にはそのくらいがちょうどいいのだと思っている。ずっと顔を合わせていれば、間違いなくドキドキしてド緊張するはずだから。
食事はデリバリーだったり、私が作ったりしている。龍聖君は食べればすぐにまた仕事、お風呂も私が眠ってから入っていると思う。おかげで私のスッピンを見せる頻度は少なく済んでいるのだけれど……
毎日そんな状況だから、この数週間、ゆっくり2人で話すこともなく、ただ時間だけが過ぎていった。
これは「契約結婚」――そう思うと、それもまあ納得だった。
本当の夫婦ではないのだから、自分から何かを求めることはしてはいけない。一緒の空間にいられるだけで、私は……1人幸せを感じていられた。
それだけで十分だった――
「琴音、いつも忙しくして悪い」
「ううん、そんなこと気にしないで。龍聖君、今、仕事が大事な時なんだから」
「ああ……でも、今夜は少し時間が取れるんだ。何か食べに行かないか?」
「えっ、本当に?」
思わず目が輝いた。
「ああ。外食もたまにはいいよな」
「嬉しい、行きたい! でも……龍聖君、無理してない? 疲れてるんじゃないの?」
龍聖君からの食事のお誘い、一緒に暮らすようになってからは初めてだった。
一気にテンションが上がりながらも、普段の仕事量を考えるとどうしても体調のことが心配だった。
「琴音と美味しいものが食べたい。2人で食べたら元気になれるだろうから。どこにする? 琴音が食べたいものでいいから」
一緒にいて元気になってくれるなら、こんな私でも少しはお役に立てているのだろうか。
――そうだと嬉しいな。
絶対疲れているはずなのに、自分より相手を思いやれるところは高校時代からずっと同じだ。
龍聖君は、本当に優しい。
「ありがとう。でも、今夜は龍聖君の食べたいものを食べようよ。いつも頑張ってるんだから」
「琴音だって仕事頑張ってるじゃないか。でも……じゃあ、今日は俺がわがまま言っていいか?」
「もちろんだよ」
「……だったら焼肉」