「そこのルビー回収してクリアだよ!」
深夜0時、私達はゲームで待ち合わせをする。何気ない会話をして。
「なゆ、あのさ」
きっと今夜もいつも通りの時間が過ぎていく
そう、思っていた。
「ん?」
「…俺、お前が好きだ」
だけど
あろうことかこいつ、橋川雪斗は深夜0時に大爆弾を投下しやがったのだ。
「…へ?」
いやいや、何言ってんの、こいつ。私達はずっと馬鹿みたいに笑い合うただの友達だったじゃん。
「冗談じゃないから」
いつもみたいにヘラヘラしてない聞き慣れない声。
「な、何言ってんの…」
「なにって、好きだって言っただけ」
調子が狂う、こいつが私を好き?
有り得ない。だっていつも可愛い女の子達に囲まれて、告白されてるのに。
私よりも魅力的な子がたくさん周りにいるのに。
「なんで私なの…」
「なゆがいいから」
「私じゃ…」
“私じゃ、ダメだよ“そう言いかけようとした時、画面が真っ暗になった。
「充電、切れた…」
まるで、さっきのことが夢だったみたい。…いや、夢に決まってる。
「なゆがいいから」
だけど
何度も再生される、あいつの声。心臓がぐっと掴まれたような感覚だった。
ため息をつくと、ベッドに乱暴に投げ出してあったスマホが光る。
夢じゃないと思わせるような
「また明日」
あいつ、雪斗からのメッセージだった。
* * *
一睡も出来なかった。それはもちろん、全部あいつのせい。
朝起きて1番にあいつの顔が浮かんだ。…やっぱり夢かもしれない。そう思ってスマホを開くと、「また明日」という雪斗からのメッセージがあった。
どんな顔して会えばいい?昨日は本気なの?それとも……
「なゆ、どしたその顔」
「ありさ?!」
机をバン、と勢いよく叩き大きな目を見開いて見上げる 私の中学の頃からの友達、ありさ。
…ありさなら相談してみてもいいかもしれない。
チラッと横目で雪斗の席を見て、雪斗がいないことを確信した私は
実はね、と昨日のことを話した。
* * *
「あ、ついに山が動いたってわけね?」
話を聞き終わったありさは、呆気ないような顔で言った。
「…へ?」
全て知ってますという顔で私に微笑むありさに頭が真っ白になる。
「雪斗くんさぁ、バレバレなのよね」
「バレバレって…?」
そんなの当たり前じゃん、とありさは雪斗の席を見て続ける、
「なゆを好きなのが、よ」
「い、今までそんな素振りなんてなかった…し、わかんないよ」
「でも昨日好きだって言われたんでしょ?」
…確かに言われた。
私と雪斗の間には恋話なんてものは今までなかった。なのに、いきなり…
いつもヘラヘラしてて能天気なあいつが私を好きだなんて、
「だ、だけどやっぱり昨日のやつは冗談っていうか…」
「…本気だって言ってんだろ」
ドンと机に鞄を置く音と、同時に不機嫌そうな雪斗の声。
「本気って、なんで私に…」
今までそんな素振り見せなかったじゃん、彼女がほしいって、好きな人いるって恋愛話もお互いなかったじゃん。動揺する私を置いて雪斗はぶっきらぼうに言う。
「何回言えば気が済むんだよ、俺はなゆが好きだって」
なゆがいいんだよ、
ため息混じりの声と、色素の薄い大きな瞳に吸い込まれそうになる。
「雪斗くん、ずっと好きだったもんね。なゆのこと」
ね?と雪斗を見て言うありさ。私、なにもわからなかったよ。
「あぁ、なゆ。そういうことだから。帰り待ってる」
「え、あ、うん…」
いやどういうこと?
と、突っ込む思考さえ回らなかった。
雪斗が席に戻った瞬間、チャイムが校内に響き渡る。チャイムが煩い、いいや。違う、私が。私の鼓動が煩いのかもしれない。
「なゆ、あんた顔真っ赤だよ」
今まで雪斗を意識したことがない、なんてことはなかった。1度だけ、雪斗には好きな人がいるのか、とか。告白の返事どうしたの?と聞きたいことがあった。
いつも囲まれている女の子の中に好きな人がいるんじゃないか、って
雪斗に彼女ができたら、好きな人ができたら
毎晩一緒にゲームできなくなってしまうのかな?なんて考えたり
雪斗はどんな子を好きになるんだろうと考えた瞬間もあった。
* * *
そんなことばかり考えていたからか
あっという間に終わった、今日。
夕焼けが教室を赤く染め、校舎は放課後の世界へと変わり始めた。
「なゆ」
雪斗はいつもと変わらない声
いつもと変わらない、私の名前を呼ぶ声。
…聞き慣れいるはずの声なのに、いつもはすぐに雪斗の目を見て話せるのに。
「な、なに?」
「なんだよ、ぼーっとして」
苦笑気味に雪斗は私の顔を覗く。
雪斗の隣って、雪斗と2人きりってこんなにもドキドキしてたっけ?自分が自分じゃないみたいに。
「だって……」
あんなこと言われたら、
「なんだよ」
「今まで、ずっと友達だって思ってたから急にあんなこと言われても私は…」
私は、どんな顔して雪斗といればいいのかわからない。友達なのは確か。雪斗に対して抱いているこの気持ちが恋なのかわからない。
ただ1つわかるのは、雪斗の周りがたったの一晩で輝いていること。
「…俺はなゆと出会った時から友達だなんて思ったことない」
「え…?」
色素の薄い大きな瞳と目が合い、雪斗はくすっと笑う。
その笑顔に不意にも胸が鳴る。
そんな優しく微笑む雪斗を知らない。
「俺は、ずっと必死だった今も」
雪斗と出会ったのは、高校1年生の頃。
席が隣同士で最初は少しツンとしてて苦手だった。
だけど、月日が経つにつれて
同じゲームが好きだったり、案外優しいところがあったりと自然と仲良くなった。
あの日からずっと私のことを…?
そう思うと急に体が熱くなる。
「なゆが好きなゲーム難しいから…」
「難しいって、ずっとやってたって言ってたじゃん」
「なゆがやってるっていうから…、話せる口実が欲しかっただけ」
まぁでも今はハマっちゃったけど、と言う雪斗の表情があまりにも真っ直ぐで。
…どうしてそんな、真っ直ぐなの。今まで目を逸らしてた私が嫌になるよ。
「少しは俺のこと考えてくれますか」
夕日の光なんかじゃない。
赤く染る雪斗の顔。
そんな顔、今まで見たことがなかった。…どうして今まで、気づけなかったの?
不自然な敬語を使う雪斗が面白くて
「あ、昨日セーブするの忘れた…」
「おい!無視かよ」
「セーブさせてよ〜」
考えてる、この気持ちはきっとあと少しで恋になる。
きみとの恋はセーブができない.(完)
「そこのルビー回収してクリアだよ!」
深夜0時、私達はゲームで待ち合わせをする。何気ない会話をして。
「なゆ、あのさ」
きっと今夜もいつも通りの時間が過ぎていく
そう、思っていた。
「ん?」
「…俺、お前が好きだ」
だけど
あろうことかこいつ、橋川雪斗は深夜0時に大爆弾を投下しやがったのだ。
「…へ?」
いやいや、何言ってんの、こいつ。私達はずっと馬鹿みたいに笑い合うただの友達だったじゃん。
「冗談じゃないから」
いつもみたいにヘラヘラしてない聞き慣れない声。
「な、何言ってんの…」
「なにって、好きだって言っただけ」
調子が狂う、こいつが私を好き?
有り得ない。だっていつも可愛い女の子達に囲まれて、告白されてるのに。
私よりも魅力的な子がたくさん周りにいるのに。
「なんで私なの…」
「なゆがいいから」
「私じゃ…」
“私じゃ、ダメだよ“そう言いかけようとした時、画面が真っ暗になった。
「充電、切れた…」
まるで、さっきのことが夢だったみたい。…いや、夢に決まってる。
「なゆがいいから」
だけど
何度も再生される、あいつの声。心臓がぐっと掴まれたような感覚だった。
ため息をつくと、ベッドに乱暴に投げ出してあったスマホが光る。
夢じゃないと思わせるような
「また明日」
あいつ、雪斗からのメッセージだった。
* * *
一睡も出来なかった。それはもちろん、全部あいつのせい。
朝起きて1番にあいつの顔が浮かんだ。…やっぱり夢かもしれない。そう思ってスマホを開くと、「また明日」という雪斗からのメッセージがあった。
どんな顔して会えばいい?昨日は本気なの?それとも……
「なゆ、どしたその顔」
「ありさ?!」
机をバン、と勢いよく叩き大きな目を見開いて見上げる 私の中学の頃からの友達、ありさ。
…ありさなら相談してみてもいいかもしれない。
チラッと横目で雪斗の席を見て、雪斗がいないことを確信した私は
実はね、と昨日のことを話した。
* * *
「あ、ついに山が動いたってわけね?」
話を聞き終わったありさは、呆気ないような顔で言った。
「…へ?」
全て知ってますという顔で私に微笑むありさに頭が真っ白になる。
「雪斗くんさぁ、バレバレなのよね」
「バレバレって…?」
そんなの当たり前じゃん、とありさは雪斗の席を見て続ける、
「なゆを好きなのが、よ」
「い、今までそんな素振りなんてなかった…し、わかんないよ」
「でも昨日好きだって言われたんでしょ?」
…確かに言われた。
私と雪斗の間には恋話なんてものは今までなかった。なのに、いきなり…
いつもヘラヘラしてて能天気なあいつが私を好きだなんて、
「だ、だけどやっぱり昨日のやつは冗談っていうか…」
「…本気だって言ってんだろ」
ドンと机に鞄を置く音と、同時に不機嫌そうな雪斗の声。
「本気って、なんで私に…」
今までそんな素振り見せなかったじゃん、彼女がほしいって、好きな人いるって恋愛話もお互いなかったじゃん。動揺する私を置いて雪斗はぶっきらぼうに言う。
「何回言えば気が済むんだよ、俺はなゆが好きだって」
なゆがいいんだよ、
ため息混じりの声と、色素の薄い大きな瞳に吸い込まれそうになる。
「雪斗くん、ずっと好きだったもんね。なゆのこと」
ね?と雪斗を見て言うありさ。私、なにもわからなかったよ。
「あぁ、なゆ。そういうことだから。帰り待ってる」
「え、あ、うん…」
いやどういうこと?
と、突っ込む思考さえ回らなかった。
雪斗が席に戻った瞬間、チャイムが校内に響き渡る。チャイムが煩い、いいや。違う、私が。私の鼓動が煩いのかもしれない。
「なゆ、あんた顔真っ赤だよ」
今まで雪斗を意識したことがない、なんてことはなかった。1度だけ、雪斗には好きな人がいるのか、とか。告白の返事どうしたの?と聞きたいことがあった。
いつも囲まれている女の子の中に好きな人がいるんじゃないか、って
雪斗に彼女ができたら、好きな人ができたら
毎晩一緒にゲームできなくなってしまうのかな?なんて考えたり
雪斗はどんな子を好きになるんだろうと考えた瞬間もあった。
* * *
そんなことばかり考えていたからか
あっという間に終わった、今日。
夕焼けが教室を赤く染め、校舎は放課後の世界へと変わり始めた。
「なゆ」
雪斗はいつもと変わらない声
いつもと変わらない、私の名前を呼ぶ声。
…聞き慣れいるはずの声なのに、いつもはすぐに雪斗の目を見て話せるのに。
「な、なに?」
「なんだよ、ぼーっとして」
苦笑気味に雪斗は私の顔を覗く。
雪斗の隣って、雪斗と2人きりってこんなにもドキドキしてたっけ?自分が自分じゃないみたいに。
「だって……」
あんなこと言われたら、
「なんだよ」
「今まで、ずっと友達だって思ってたから急にあんなこと言われても私は…」
私は、どんな顔して雪斗といればいいのかわからない。友達なのは確か。雪斗に対して抱いているこの気持ちが恋なのかわからない。
ただ1つわかるのは、雪斗の周りがたったの一晩で輝いていること。
「…俺はなゆと出会った時から友達だなんて思ったことない」
「え…?」
色素の薄い大きな瞳と目が合い、雪斗はくすっと笑う。
その笑顔に不意にも胸が鳴る。
そんな優しく微笑む雪斗を知らない。
「俺は、ずっと必死だった今も」
雪斗と出会ったのは、高校1年生の頃。
席が隣同士で最初は少しツンとしてて苦手だった。
だけど、月日が経つにつれて
同じゲームが好きだったり、案外優しいところがあったりと自然と仲良くなった。
あの日からずっと私のことを…?
そう思うと急に体が熱くなる。
「なゆが好きなゲーム難しいから…」
「難しいって、ずっとやってたって言ってたじゃん」
「なゆがやってるっていうから…、話せる口実が欲しかっただけ」
まぁでも今はハマっちゃったけど、と言う雪斗の表情があまりにも真っ直ぐで。
…どうしてそんな、真っ直ぐなの。今まで目を逸らしてた私が嫌になるよ。
「少しは俺のこと考えてくれますか」
夕日の光なんかじゃない。
赤く染る雪斗の顔。
そんな顔、今まで見たことがなかった。…どうして今まで、気づけなかったの?
不自然な敬語を使う雪斗が面白くて
「あ、昨日セーブするの忘れた…」
「おい!無視かよ」
「セーブさせてよ〜」
考えてる、この気持ちはきっとあと少しで恋になる。
きみとの恋はセーブができない.(完)
「そこのルビー回収してクリアだよ!」
深夜0時、私達はゲームで待ち合わせをする。何気ない会話をして。
「なゆ、あのさ」
きっと今夜もいつも通りの時間が過ぎていく
そう、思っていた。
「ん?」
「…俺、お前が好きだ」
だけど
あろうことかこいつ、橋川雪斗は深夜0時に大爆弾を投下しやがったのだ。
「…へ?」
いやいや、何言ってんの、こいつ。私達はずっと馬鹿みたいに笑い合うただの友達だったじゃん。
「冗談じゃないから」
いつもみたいにヘラヘラしてない聞き慣れない声。
「な、何言ってんの…」
「なにって、好きだって言っただけ」
調子が狂う、こいつが私を好き?
有り得ない。だっていつも可愛い女の子達に囲まれて、告白されてるのに。
私よりも魅力的な子がたくさん周りにいるのに。
「なんで私なの…」
「なゆがいいから」
「私じゃ…」
“私じゃ、ダメだよ“そう言いかけようとした時、画面が真っ暗になった。
「充電、切れた…」
まるで、さっきのことが夢だったみたい。…いや、夢に決まってる。
「なゆがいいから」
だけど
何度も再生される、あいつの声。心臓がぐっと掴まれたような感覚だった。
ため息をつくと、ベッドに乱暴に投げ出してあったスマホが光る。
夢じゃないと思わせるような
「また明日」
あいつ、雪斗からのメッセージだった。
* * *
一睡も出来なかった。それはもちろん、全部あいつのせい。
朝起きて1番にあいつの顔が浮かんだ。…やっぱり夢かもしれない。そう思ってスマホを開くと、「また明日」という雪斗からのメッセージがあった。
どんな顔して会えばいい?昨日は本気なの?それとも……
「なゆ、どしたその顔」
「ありさ?!」
机をバン、と勢いよく叩き大きな目を見開いて見上げる 私の中学の頃からの友達、ありさ。
…ありさなら相談してみてもいいかもしれない。
チラッと横目で雪斗の席を見て、雪斗がいないことを確信した私は
実はね、と昨日のことを話した。
* * *
「あ、ついに山が動いたってわけね?」
話を聞き終わったありさは、呆気ないような顔で言った。
「…へ?」
全て知ってますという顔で私に微笑むありさに頭が真っ白になる。
「雪斗くんさぁ、バレバレなのよね」
「バレバレって…?」
そんなの当たり前じゃん、とありさは雪斗の席を見て続ける、
「なゆを好きなのが、よ」
「い、今までそんな素振りなんてなかった…し、わかんないよ」
「でも昨日好きだって言われたんでしょ?」
…確かに言われた。
私と雪斗の間には恋話なんてものは今までなかった。なのに、いきなり…
いつもヘラヘラしてて能天気なあいつが私を好きだなんて、
「だ、だけどやっぱり昨日のやつは冗談っていうか…」
「…本気だって言ってんだろ」
ドンと机に鞄を置く音と、同時に不機嫌そうな雪斗の声。
「本気って、なんで私に…」
今までそんな素振り見せなかったじゃん、彼女がほしいって、好きな人いるって恋愛話もお互いなかったじゃん。動揺する私を置いて雪斗はぶっきらぼうに言う。
「何回言えば気が済むんだよ、俺はなゆが好きだって」
なゆがいいんだよ、
ため息混じりの声と、色素の薄い大きな瞳に吸い込まれそうになる。
「雪斗くん、ずっと好きだったもんね。なゆのこと」
ね?と雪斗を見て言うありさ。私、なにもわからなかったよ。
「あぁ、なゆ。そういうことだから。帰り待ってる」
「え、あ、うん…」
いやどういうこと?
と、突っ込む思考さえ回らなかった。
雪斗が席に戻った瞬間、チャイムが校内に響き渡る。チャイムが煩い、いいや。違う、私が。私の鼓動が煩いのかもしれない。
「なゆ、あんた顔真っ赤だよ」
今まで雪斗を意識したことがない、なんてことはなかった。1度だけ、雪斗には好きな人がいるのか、とか。告白の返事どうしたの?と聞きたいことがあった。
いつも囲まれている女の子の中に好きな人がいるんじゃないか、って
雪斗に彼女ができたら、好きな人ができたら
毎晩一緒にゲームできなくなってしまうのかな?なんて考えたり
雪斗はどんな子を好きになるんだろうと考えた瞬間もあった。
* * *
そんなことばかり考えていたからか
あっという間に終わった、今日。
夕焼けが教室を赤く染め、校舎は放課後の世界へと変わり始めた。
「なゆ」
雪斗はいつもと変わらない声
いつもと変わらない、私の名前を呼ぶ声。
…聞き慣れいるはずの声なのに、いつもはすぐに雪斗の目を見て話せるのに。
「な、なに?」
「なんだよ、ぼーっとして」
苦笑気味に雪斗は私の顔を覗く。
雪斗の隣って、雪斗と2人きりってこんなにもドキドキしてたっけ?自分が自分じゃないみたいに。
「だって……」
あんなこと言われたら、
「なんだよ」
「今まで、ずっと友達だって思ってたから急にあんなこと言われても私は…」
私は、どんな顔して雪斗といればいいのかわからない。友達なのは確か。雪斗に対して抱いているこの気持ちが恋なのかわからない。
ただ1つわかるのは、雪斗の周りがたったの一晩で輝いていること。
「…俺はなゆと出会った時から友達だなんて思ったことない」
「え…?」
色素の薄い大きな瞳と目が合い、雪斗はくすっと笑う。
その笑顔に不意にも胸が鳴る。
そんな優しく微笑む雪斗を知らない。
「俺は、ずっと必死だった今も」
雪斗と出会ったのは、高校1年生の頃。
席が隣同士で最初は少しツンとしてて苦手だった。
だけど、月日が経つにつれて
同じゲームが好きだったり、案外優しいところがあったりと自然と仲良くなった。
あの日からずっと私のことを…?
そう思うと急に体が熱くなる。
「なゆが好きなゲーム難しいから…」
「難しいって、ずっとやってたって言ってたじゃん」
「なゆがやってるっていうから…、話せる口実が欲しかっただけ」
まぁでも今はハマっちゃったけど、と言う雪斗の表情があまりにも真っ直ぐで。
…どうしてそんな、真っ直ぐなの。今まで目を逸らしてた私が嫌になるよ。
「少しは俺のこと考えてくれますか」
夕日の光なんかじゃない。
赤く染る雪斗の顔。
そんな顔、今まで見たことがなかった。…どうして今まで、気づけなかったの?
不自然な敬語を使う雪斗が面白くて
「あ、昨日セーブするの忘れた…」
「おい!無視かよ」
「セーブさせてよ〜」
考えてる、この気持ちはきっとあと少しで恋になる。
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あの…もう凄く…ドキドキしましたよ!!エェ!!