でも本当に、僕は穂乃果ちゃんを忘れることができるのか?
1歩前に踏み出すことができるのだろうか?
中途半端な気持ちのままでは、香織さんはもちろん、自分自身のためにもならないと思った。
香織さんは家庭的な雰囲気を持つ人だし、決して嫌いじゃない。きっと穂乃果ちゃんを忘れることができたら……この人を好きになれる気がする。
だからこそ、香織さんに良い返事ができるよう、最後にもう一度だけ穂乃果ちゃんに会いたいと思った。
それで……自分の気持ちを確かめたい――
大好きな穂乃果ちゃんに会わないで、この気持ちを無理やり消そうともがくより、会って、もう一度ぶつかって……綺麗にフラれてケジメをつけたい。
こんな浅はかで、自分勝手な行動、間違いなく穂乃果ちゃんに迷惑をかけてしまうだろう。ものすごく嫌な思いをさせてしまうかも知れない……
それでも、前に踏み出すためにはもうこうするしかないと思った。
僕は、次の日、仕事が休みで、いてもたっても居られずにシャルムに向かった。
「いらっしゃいませ」
「恭吾さん! 来てくれたんですか?」
入口で、元気に出迎えてくれた女性――穂乃果ちゃんだ。
目の前に立っている穂乃果ちゃんは、何も変わらず、笑顔の素敵な可愛らしい女性のままだった。
いつまでも若々しくて、キラキラ輝いている。
本当に、ドキドキする……
「久しぶりだね。元気だった? 父から穂乃果ちゃんのこと、少し聞いてたよ。月城さんと結婚して、子どもさんも生まれたって。本当におめでとう。仕事中に突然でごめん。終わってからで構わないから、僕に少し時間をくれないかな?」
穂乃果ちゃんは、たまたま今から休憩だったようで、僕達は近くのカフェに入った。
1番奥の角の席。周りには誰もいなかった。
とても静かだ。
「本当にお久しぶりですね。びっくりしました。恭吾さん、お元気そうで嬉しいです。私もすごく元気ですよ。子育ても仕事も大変ですけど頑張ってます」
穂乃果ちゃんが元気に頑張っていること自体は本当に嬉しいことだった。
「それなら、良かった……」
少し黙る僕に、穂乃果ちゃんが、
「恭吾さん、何かお話があったんじゃないですか? わざわざシャルムまで来て下さって……」
と、僕の思いを察して言ってくれた。
「穂乃果ちゃん、本当に突然やってきていきなりこんな話をするのも変だけど、僕は……お見合いをしたんだ。相手の女性とはこれからどうなるかわからないけど、まずはお付き合いをしようかと……」
僕は、穂乃果ちゃんの反応を見た。
試すようで……心が傷んだ。
「お付き合いされるんですね。すごくいいと思います。恭吾さんが彼氏なら、その人も絶対に幸せになれます。私もすごく嬉しいです」