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🩷さん視点
『この不安定な恋の実証実験を貴方に託します』
事の全て終わった時、俺がこの手紙を仁人に見せるかどうかの賭けだったのでは?と考えはじめていた。
じゃあ、これを仮に見せたとして仁人はどう動くのか…。
状況次第で変わるのかもしれない。
と、なると伝えるべきではないだろう。
今の仁人の事だ自分が相手を追い詰めたと自分自身を追い詰めて、最悪後追いの様に自ら死を選ぶかもしれない。
それだけは絶対に阻止しなければ。
(…自らの命をかけてまでやる事じゃねぇだろ)
心の中で悪態をつきながら、今は手紙の事よりも目の前の仁人の事だけを考えよう。
ゆっくり時間をかけて、慰めるふりをして空席となった仁人の恋人の席を奪ってやるつもりだったのだから。
とにかく、優しくして俺がいないと不安になるように依存させるように仕向けて…恋人は端から勇斗だったんだと思い込ませたかった。
「傍にいるから、少し眠りな…」
「…起きたらいなくなってたりしない?」
「しないよ、心配なら手握ってるから」
そう言いながら仁人を寝室へと運んだ。
横たわる仁人の頭を撫でてると安心したのか気持ちよさそうに目を閉じた。
(…俺のものになってよ、仁人)
眠る仁人の手を握りながら祈りにも似た願いを込める。
―――早く、手紙を処分しなければ。
仁人を家に連れてくる前はどんなだったか思い出せないぐらい家の中は几帳面な仁人によって適度にチューニングされている。
使いにくいとか落ち着かないとかも無く、これが当たり前だったみたいだ。
それでも以前と変わらぬ場所というものはあるもので、リビングのソファー横のサイドテーブルに積み上げた領収書やら公共料金の請求書やらは手付かずのまま置かれていた。
そのおかげか未だに仁人にあの手紙の存在はバレていない。
タイミングを見誤らない様に、時期を見て。
顔も知らない××が勝手に始めた実験なんて終わらせてやる。
💛視点
夢を見た。
××と付き合い出した頃の。
『好きだよ、仁人』
『俺じゃやっぱり駄目かな?』
『ねぇ、いい加減俺を見てよ』
『佐野の事好きなままでいい、でも俺苦しいよ……』
はじめから代わりにしようなんて思ってなかったよ。
一生実る事のない恋心を忘れようと頑張ってみたけどだめで、でもそばにだけは居たくて。
そんな時に××と出会った。
はじめはよく通っていた珈琲ショップの顔馴染み程度で、いつしか相談事とかもできるぐらい心許せる間柄ぐらいにはなっていた。
『どうした?泣きそうな顔して』
勇斗の相手が知らない人と幸せそうに笑ってるのをそれが演技で仕事だとしても見てるのが辛かった…どうせならこんな感情捨ててしまいたい。
嫌いになれたらよかったのに。
醜い自分の気持ちを吐き出すのを止めることが出来ず苦しくて泣き出してしまった。
(…あぁ、情けない)
両手で顔を覆い、泣きながら嫌だとまるで駄々を捏ねている間も××は何も言わずただ背中を優しく撫でてくれていた。
『…ごめん、情けないとこ見せた』
『いいよ、辛かったね』
『あのさ……』
“俺にしない?”
『え?』
突然の事に驚き固まる。
何を言ってるの?
『これ以上、吉田くんが苦しむのも泣いてるのも見たくない』
『すぐに好きになってとは言わない、けど俺なら泣かせないよ』
その日、俺と××との関係が気を許せる友人から恋人という肩書きに変わった。
仕事の忙しさの中に生まれた恋人の存在は片想いに苦しんでいた頃に想像もできなかったぐらい安らぎをくれていたと思う。
幸せだった。
だから、××の心を追い詰めていた事すら気付かなかったのかもしれない。
『仁人はさ、俺より佐野が好きなんでしょ?』
『違う…今は××が好きだから』
『嘘つくなよ…』
ここ最近繰り返される会話。
一方通行のように伝わらない想いにまた苦しくなる。
口付けを交わしても、身体を重ねても俺が見ているのは××ではないと思われていたんだと悲しくなった。
(“泣かさない”って言ったのに、嘘つき)
限界だった。
『…別れよ?』
一晩中考えて出した答えを××に伝える。
『そうだな、別れよう』
珈琲に口を付け笑ったその顔は今の別れ話と合わないぐらい楽しげで…
(××も別れたかったんだな…)
ショックかと言われればそうだろう、自分は好きだったから。
目の前で湯気をたてる珈琲に俺も口をつける。
苦味の中に違和感を感じた。
『…なんで?』
『ごめん、俺仁人の事離してあげないよ』
意識を失う瞬間、××が愛おしそうに俺の頭を撫でた気がした。
次こそ終わります💦
すみません🙇♀️
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