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ずっと思い出せなかったことがある。
私はこの屋敷でいつから暮らしていたのか。
小さい頃の記憶はない。思い出せるのは13歳からの記憶。
もう13歳の頃にはこの屋敷で親がいない状態で過ごしていた。その事に違和感をもっていなかったし当たり前だと思っていた。
屋敷にはずっと私とメイドだけ。
私たちはずっとこの屋敷に囚われて いるのだ。
【設定】
主人公:桜(18)
メイド:ダリア(24)
ここは現実の世界ではありません。
決して全て当たり前の事だとして見ないように。
「それじゃあダリア、行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
私はアネモネアルバム店で働いている。
と言っても屋敷で長年引き継がれているお店なのだが、私も気付かぬうちに働き始めており、働き方もすべていつの間にか覚えていたのだ。
それはダリアも同じで、違和感を持たずにとりあえず働いている。どこで知るのか知らないが、お客さんは来るし、お金に困るわけでもないのでとりあえず働いているのだ。
今日は海へお客さんのメモリーを探しに行く。
「……随分歩いたけれど、集まったメモリーは2つだけなの?」
普段は少し歩けば4、5個はすぐ見つかる。
どの瞬間も大切な思い出になるらしい。過去に依頼されたお客さんは「小学校の頃の思い出を思い出させてくれてありがとう。」「私ってこんな小さかったんだ。」「ばあさんの優しさを思い出したよ。ありがとうなぁ。」と皆それぞれ過去の余韻に浸っていた。
そう。私たちアネモネアルバム店の役目はお客さんの記憶を取り戻すこと。
そして取り戻した記憶はアネモネアルバム店最奥の部屋に厳重に保管される。
その部屋には過去に働いていた人が取り戻した古い記憶も大量にあり、ある意味歴史の倉庫となっているのだ。
……だが、私とダリアの記憶はなかった。2人で隅々まで探したけれど、私とダリアだけ綺麗になかったのだ。
まぁ、そこまで思い出したいかって言われるとそんなにこだわっていないのでいいのだが。
みんなきっと思い出したい大切だった記憶があるはずだ。
今日も私たちはお客さんの過去の宝物の為に動くのだ。
「1つ目はお客さんと男の人がいるメモリーだね。恋人なのかな?
海でデートなんてロマンチックだね。
2つ目は……あれ?同じ日付のメモリーなのにお客さんしかいないや。男の人は何か海の家に買いに行ったのかな」
メモリーは小さな本の形になっている。
写真付きなので分かりやすくていいよね。
「……うーん、ふたつの時刻から考えてまだ両方とも朝なはず。昼とかのメモリーも欲しいなぁ。これだけじゃあ思い出として思い出すにはかなり困難だよ。
もう少し海の方に近寄って探してみるかぁ」
そう行って立ち上がり、海に近寄ろうとした瞬間声をかけられた。
「桜さま」
「……?えっと、どなたですか」
「初めまして。急に呼び止めてすみません。私の名前は柳雪と申します。雪とでもお呼びくださいませ。」
「雪さん。どうかしたのですか?」
「私は海の家で働いているのですが、桜さまが懸命に何かを探しているように見えたので……。なにかお困り事では無いのかと」
「あぁ、それは心配をおかけしてすみません。私、少し遠くにあるアネモネアルバム店で働いてまして……。メモリーを探しに今日は来てたんです。」
「あっ!あそこで働いてる方だったんですね。凄く噂を聞きますよ。貴方達に相談して良かった〜って」
「あはは、ありがたい限りです」
「そうだ、少し待っててください!」ダッ
「え?」
……
「はぁ、はぁ、すみません。これ良ければどうぞ 」
「え、ペットボトルのお茶……いいんですか?」
「いいんです!少しまだ肌寒いからって油断してはいけませんよ!水分はちゃんと取ってくださいね」
「ありがとうございます!!大切に飲みます。 」
「大袈裟ですよ。私はあそこの焼きそば屋にいるのでいつでも困ったことがあれば来てください。」
「何から何までありがとうございます…!それでは、私は続きの仕事をしに行きますね」
「はい、お気を付けて!」
いい人だったなぁ、とさっき貰ったお茶を飲みながら思う。
そして海に近ずき歩き始めるのだ。
(……やっぱまだ4月だし寒いなぁ。少し厚着してきてよかった。)
海に入っていなくてもこんなに寒いなんて、来る時期間違えたなぁなんて思いながらも仕事なのでしっかりとメモリーを探す。
すると、海の中に淡く光る物が見えたのだ。
「……なんで海の中に?海で遊んだのかな」
かといってこんな寒いのに入れるわけが無い。といっても周りには何も無いし……
少し周りに何か長いものはないか探してみよう。