テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

画像


第7話「弱ってる時だけ素直なんだな」


その日の紗愛は、朝から喉が痛かった。


「……最悪……」


大学の帰り道、

身体がずっと熱くてふらふらする。


家にたどり着いた瞬間、

ソファに倒れ込んだ。


スマホを触る気力もなく、

毛布をかけて丸くなる。


「……しんど……」


そのまま眠ってしまった。


……気づいたら夜だった。


薄暗い部屋で、

誰かがそっと頬に触れた。


「紗愛……?」


その声に、

はっと顔を上げる。


「……樹……なんで……来てんだよ……」


「メッセ返さねぇから心配したんだよ」


樹は紗愛の額に手を当てた。


「熱、めっちゃ高いじゃん……紗愛、なんで言わなかった?」


紗愛はフラフラしながらも強がる。


「…………言う……必要……ねぇし……」


「はい、本音じゃない」


樹はため息をついたあと、

紗愛をそっと抱きしめた。


「弱ってるなら弱ってるって言えよ。

……紗愛が倒れたら、俺が困る」


胸に顔を埋められて、

紗愛の耳がぴくっと赤くなる。


「……っ……うるせぇ……」


声は弱々しいけど、

抵抗もできない。


樹は紗愛を抱きかかえるようにソファへ戻し、

冷たいタオルをおでこに置く。


「ほら、寝とけって。

今日は……俺が看病するから」


「……なんで……」


「お前が……大事だからだろ」


紗愛の瞳が揺れる。


「……そんな……優しくすんなよ……泣くだろ……」


樹は紗愛の手を握った。


「泣いていいよ。

弱ってる紗愛、俺しか見たくねぇし」


紗愛は熱でとろんとした目で樹を見つめて、

小さく呟いた。


「……樹……そばに……いて……」


「もちろん」


樹は紗愛の額にそっとキスを落とし、

毛布をかけ直して言った。


「紗愛。

弱った時だけ素直になるの……反則なんだよ」


紗愛は恥ずかしそうに目をそらしながら

樹の服の裾をぎゅっと握った。


「……離れんな……」


「離れねぇよ」


その夜、

樹はずっと紗愛の手を握ってそばにいた。



loading

この作品はいかがでしたか?

19

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚