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第五十五話 冬空に願いを
「願いは、叶うと信じる人の心を少しだけ強くしてくれる。」
十二月二十八日。
クリスマスが終わり、
街は少しずつお正月の準備へと変わり始めていた。
駅前のイルミネーションはまだ輝いている。
でも、どこか名残惜しそうに見えた。
*
冬休みに入った写真部では、
有志だけで今年最後の撮影会を開くことになった。
場所は、学校近くの小高い丘。
夕方から夜にかけて、冬の景色を撮る予定だった。
「寒っ!」
蓮が肩をすくめる。
「ちゃんと手袋してきなよ。」
美桜が笑いながらカイロを渡した。
湊はカメラを構え、
夕焼けから夜へ変わっていく空を見つめる。
冬の空気は澄んでいて、
街の明かりがいつもよりきれいに見えた。
*
「神崎先輩。」
陽菜が隣へやってくる。
「先輩って、どうしてそんなに人を撮るんですか?」
湊は少し考えてから答えた。
「景色も好きなんだけどね。」
「人がいると、その景色に物語が生まれる気がするんだ。」
「物語…。」
陽菜はその言葉を小さく繰り返した。
「写真って、一瞬を残すものだけど。」
「その一瞬の前にも後にも、ちゃんと時間が流れてる。」
「それを想像できる写真が好きなんだ。」
陽菜は目を輝かせながらうなずいた。
「私も、そんな写真を撮ってみたいです。」
*
撮影会が終わるころ。
空には、たくさんの星が輝いていた。
「今日、流れ星が見られるかもってニュースで言ってたよ。」
蓮がスマートフォンを見ながら言う。
「本当?」
四人は丘の上で空を見上げる。
静かな時間が流れる。
その時――
スッ。
一筋の光が夜空を横切った。
「あっ!」
美桜が声を上げる。
「流れ星!」
ほんの一瞬だった。
でも、確かにそこにあった。
湊は目を閉じる。
“また、みんなで笑い合えますように。”
心の中で、静かに願った。
*
その夜。
紬からメッセージが届く。
《今日ね、流れ星見たよ!》
湊は思わず笑った。
《こっちも見た。》
《お願い事した?》
少しして返信が届く。
《したよ😊》
《秘密だけどね。》
湊も、自分の願いは伝えなかった。
でも、不思議と分かる気がした。
きっと――
二人の願いは、どこかでつながっている。
*
窓の外には、冬の星空が広がっていた。
湊はカメラを持って外へ出る。
夜空を見上げ、静かにシャッターを切る。
カシャッ。
流れ星は写らなかった。
それでも、この夜を忘れたくなかった。
願いを込めた時間は、
写真には写らなくても、
心の中にちゃんと残っている。
📷 Photo.055『願いを込めた夜空』
撮影日:12月28日
流れ星は一瞬で消えてしまう。
でも、その瞬間に願った想いは、
心の中でずっと輝き続ける。
未来へ届くと信じながら。
コメント
1件
うわあああ第55話、すっごくエモかった…!😭💕 冬の澄んだ空気とイルミネーションの名残惜しさが伝わってきて、写真部の4人の温かい空気感にこっちまでほっこりしたよ〜。特に湊の「人がいると景色に物語が生まれる」って言葉、めっちゃ刺さった…!写真って一瞬の切り取りだけど、その前後にも時間があるって考え方、私もすごく共感する。流れ星のシーンも、願いを込めた時間は心に残るって締めくくりがもう…尊すぎる😭💫 紬とのやり取りも自然で可愛くて、二人の願いがどこかでつながってる気がするっていう表現、最高だよ…!!
都築七美
106
花月夜れん
1,957