「バレンタインデーだね」
「え、彼氏にチョコあげたん?」
「えー?まだまだ」
「マジ?あげなよー」
そこら中から似たような会話が聞こえる。
女子が集まって話していたり、カップルが話していたり。
話題はだいたい『バレンタインデー』たまに違う話もあるけれど、中心の話題としてはそうだ。
香る匂いはとても甘いチョコレート。
歩き回ってみても何処も彼処もぜーんぶバレンタインデーのチョコのこと!甘々としすぎてちょっとだけしょっぱいものとか欲しくなっちゃう。
そんな中でも歩かなきゃ行けないのは──────
「乱数ちゃーん!!」
「乱数くん!」
僕自身の誕生日だからだ。バレンタインのことも兼ねてかチョコレートとちょっとしたプレゼントがついてるって感じ。
「あはは!ありがとう、おネーサン!」
そうやって笑顔を向けると「キャー!!!」と声が響いた。
「ごめんねぇ、おネーサン達、遊べなくて」
「いいよ!だってFlingPosseの2人と過ごすんでしょ?」
「そうなのっ!だから明日にしてねっ☆」
一緒にいたいのは当然だろう。だって大切な仲間達なんだから。
にこにこしていると「またね」と声が聞こえて去っていった。気を使ってくれているんだろう。
そんな中、僕は手に持っている沢山のチョコを見た。
その沢山のチョコを見ておネーサン達からは良かったねなどの声を聞くし、だいぶ愛されているだろう。
まぁ、愛を祝う日なんてものが僕の誕生日なんて結構皮肉なんだけど。
一つだけ、全然他のとは違うチョコが僕の腕には入ってる。
抱きしめて持っていると溶けてしまうし、袋にチョコは入れるけれど。そのチョコだけは手に持っていたかった。
早く事務所に帰ろう。多分事務所に届いてるチョコもあるだろうし。何よりあの2人が待っている。いや、3人かな。
考えれば考えるだけ幸せになって、足取りが軽くなる。
鼻歌を歌いながら事務所の帰り道を歩いた。
☆彡.。☆彡.。☆彡.。
「たっだいまー!!」
「おかえりー!」「おかえりなさい!」「おかえりなさい、乱数」
そうやって3人の声が聞こえた。FlingPosseの2人じゃないの?って思う人だってきっと多いと思う。
だからこそ周りのおネーサンにもこれは秘密なことでもある。
次乱入されたらたまったもんじゃない。
でも3人のおかえりなさいはとっても暖かいものだった。幻太郎に鍵を預けていて正解だったかもしれない。
「誕生日会を始めますか…待ってる間にも結構なプレゼントが来ていますし」
そうやってうちに届いた荷物を幻太郎が持ってきた。
「えーと、これはイチローのところから、それから左馬刻に、ササラってつまりオオサカ!?しかもクーコーからってことはナゴヤから!?」
きたものを一から確認すると遠いところからの贈り物やシンジュクとかトウキョウの範囲で済むところもあった。
「ジジイにしてはいいデザインのもの寄こしてくんじゃん」
独り言をブツブツ言っているとモジモジしている3人がいた。それを見て謝る。
顔には俺たち、小生たち、私たちのプレゼントがあるぞと書いてあった。
「俺はこれだ!」
「待って待って去年と同じものじゃないよね!?」
笑いながらそう聞き返した。
去年はまさかの「何でもする券(金以外)」だった。今年も紙が見えた。
「違ぇよ!!」
ほら!とその紙を見ると…
「元気づける言葉あげる券…..?」
謎すぎるそんなプレゼントについに吹き出してしまった。
「おもしろすぎるでしょ〜!も〜!帝統大好き」
そう言いながら抱きついた。帝統は少し後ろによろっとしたがまたニカッと笑って言ってくれた。
「うおっ、まぁ喜んでくれたなら良かったぜ!」
少ししょうもないかもしれないけれど今はそれで満足できるんだ。だってとってもとっても帝統らしいプレゼントだから。
「では、今度は小生ですかね」
「わーい!」
「マフラーです、あとついでにイヤーマフ」
暖かそうなふわふわなマフラー、とイヤーマフだ。デザインは幻太郎らしくシンプルで嬉しかった。
そんなところに黄色が見えた。シンプルなのに派手?と謎に思いそこを見た。
「あ…あはは」
照れくさそうにする幻太郎。
そこには僕達のマークが付いていた。
「お店で付けてもらったんですよ…一応」
「…嬉しい」
その嬉しさを表すように幻太郎にも抱きついた。
いつも僕が抱きつくことを知ってるから受け止めるために体勢を取ってくれる。しかもそれが当たり前になってしまった。
「ほら、最後に1番のプレゼントがありますよ」
「うんっ!」
あからさまに喜んで大好きな彼女に飛びつく。
彼女はわっ、と声を出して慌てた。そのまま僕は上目遣いをする。すると彼女は目線を横にして顔を真っ赤にして手で隠す。
そんなところも可愛くて大好きだ。
「ねぇ流月!」
「…はい」
愛心流月(あいしん てる)は僕のとってもとっても大好きな人。ちなみに去年はペアルックを貰った。
今年は何かな、と期待をふくらませる。
正直何を貰っても喜ぶ自信がどこかある。なんたって大好きな人からのプレゼントなんだから。
「プレゼントは…あるんですけど…」
もじもじとしながら流月はそう言った。
「うんうん!」
「もう少しだけ、こうさせてください」
そのままギュッと流月は僕を抱き返した。流月の体温は高くて暖かくてとても心地よかった。
「愛してます」
不意にそう言われ、僕は顔を真っ赤にさせた。その後は勢いで離れてしまって。なんかこう、むず痒くて、手で顔を覆ってしまった。
その言葉でさえもプレゼントだ。
「僕も…」
そうやって小さく言った。
「本当のプレゼントは」
そうやって持っていたカバンを漁る。
「イヤリングです、ハンドメイドでもできると聞いたので…あ、嫌、でした?」
出されたイヤリングはピンクっぽくて、僕みたいだった。
可愛いし、嫌なわけないじゃん。
「ありがとう」
「はい」
「「「生まれてきてくれてありがとう」」」
3人に僕の誕生日を祝われた。
最高の日だな。
涙が滲んだ。
「ケーキあります?」
「ええ、予約しておきましたから」
「待て待て!俺も景品だけど─────!」
目の前で繰り広げられる会話はとても微笑ましたかった。
お誕生日おめでとう、僕
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お久な流月