ヤンデレ味のあるフェリシアーノ?
フェリシアーノは会議の終わりに廊下を歩いていた。すると誰かに引っ張られた気がして振り返った。
袖の裾を引っ張っているのは頬を赤らめた菊だった。
「ヴェ?」
会議室から漏れ出す騒ぎ声とそれから抜け出してきた国々が廊下を歩く音がする。その中でフェリシアーノと菊は2人だけの世界にいるようだった。
フェリシアーノは黙りこくる菊に目線を合わせる。やはり顔は真っ赤で胸の奥がズキズキと痛む。フェリシアーノは菊の頬を両手で触った。
「菊?」
不安そうな声でわざと喋ってみせると菊はやっと目を合わせた。
「フェリシアーノくん」
見た目に合わない低い声はもう慣れてしまった。どことなく震えていて緊張していてフェリシアーノの瞳の奥底をまっずくに見ている。それを感じてフェリシアーノの胸の痛みは消えた。
「ご飯一緒に食べませんか?」
フェリシアーノは菊の誘いにぱっと顔を明るくしてハグをした。
「もちろんだよ~」
菊はハグをされても押し返すことはもうなかった。菊は顔を逸らして耳まで真っ赤にしている。フェリシアーノは菊に顔を見られていないのをいいことに笑顔を消した。
「菊は何食べたい?」
ばっとハグをやめて少し離れて両手で菊の手を握る。細くて少しだけ小さな手、少しコツコツとしており子供っぽいてではなかった。指の関節を優しく摩る。菊は未だに顔を逸らしていた。
「きーく?」
「はっ!その、私は……」
ーーーーー
「ねー菊、美味しい?」
「ええ、とても」
優しく微笑む笑顔は本当の笑顔には見えなかった。
菊はフェリシアーノに対してフェリシアーノくんが好きな物がいいと言った。フェリシアーノはその言葉にまた自分で決められないのかと呆れさえ覚えた。
そしてフェリシアーノが連れてきたのは気に入っているパスタ屋、本格的なものが多くてそれなりの値段もする。そしてここはちゃんと料理を目的としており会話は少ない場だ。注文に時間がかかる訳でもなくイタリアに慣れてない人からしたら楽かもしれない。
「俺の家のパスタはいいでしょ?ここねオリーブオイルもお店が作っててね」
話をしているのに人形のように笑うだけの菊を見てもやもやした気持ちになる。
「……」
フェリシアーノは思わず黙った。
「菊は俺になんの話しをしたくて誘ったの?」
フェリシアーノは悟ったような笑みで頬杖を付きながら聞いた。優しくそしてどこか裏のある。
「フェリシアーノくんは分かるのですね」
「どれだけ一緒にいると思ってるの~!」
作ったような笑い声が会話を沈ませる。菊はまた頬を赤らめて明後日の方向を向きフェリシアーノに語る。
「フェリシアーノくんは好きな人にどうしたら告白が成功すると思いますか?」
「告白?菊好きな人いるの!?」
フェリシアーノはピクリと反応をしたあと大きな反応に変わった。
フェリシアーノの頭の回転はゆっくりながらも細かく記憶を辿っていた。会議中はアルフレッドの意見に賛成してばっかりでアーサーとも親しげだった。かと言えばフランシスとも仲が良くよく話し込んでいるし、梅とは両思いと言われるくらいに仲がいい。
あとはルートとはよく話し合いをする、性格が少しだけ似ていて仕事の話をするしロマーノとはごくたまに話すわけで可能性がないわけではない。ギルベルトとはどうだろうか?強い憧れの存在、それが恋に変わっていたら?
菊が恋する相手なんて沢山いる。でもなんとも思わない。
「お恥ずかしながら」
照れくさそうに菊は頬を人差し指でぽりぽりとかく。
「えっえっ、じゃあ教えてあげるよ!」
フェリシアーノは心底楽しんでいた。
「まずはね〜、ハグするでしょ?で好きだって言ってキス!」
「ほ、本当にそれでいいんですかね……好きでもなかったら気持ち悪くないですか?」
「俺はされたらイチコロだけどね~」
そう言ってみせると菊は「こんな爺にもですか!」と少し怒った。バカにしているのだと思ったのだろう。菊は拗ねたまま残っていたパスタを片付けた。
ーーーーー
外に出ると菊は照れながらまた裾を引っ張ってきた。ヴェネチアの景色に呑まれながら幼い子を見つめるように目を細め菊を見た。緩やかな風が吹いた時フェリシアーノは無理やりにでも菊の両手をぎゅっと握った。
「フェリシアーノくん?」
「ちょっと遠くまで行こ!案内するよ」
菊は少し困惑しながらもこくりと頷いた。
フェリシアーノはまるで御伽噺の王子のように手をひいて走って行く。
ねえもう少しだけ
「フェリシアーノくん」
まるで本当に2人の世界のような2人っきりの穴場。少しだけ暗くなってきた空と見える綺麗な街並みがイタリアの素晴らしさを物語った。
「うん、菊」
フェリシアーノは知っていた。
フェリシアーノは2人っきりの場所を菊に与えた。菊はそれに甘えるようにフェリシアーノの胸に飛び込んだ。背中の方で菊の手と手がぶつかる。
「フェリシアーノくん、お慕いしております」
ふにゃりと笑った菊にフェリシアーノの恋をしていた心が踊る。
フェリシアーノは知っていた。菊が誰に恋をしているか。当たり前だフェリシアーノは菊がフェリシアーノを好きになるようにと仕込んでいたから。
フェリシアーノは思った。
(ここまでして別のやつが好きとか言い出してたら何するかわかんなかったや)
ご機嫌そうにフェリシアーノは菊の顔を覗く。キスはできないらしく目を泳がせていた。
そんな時にフェリシアーノは菊に触れるだけのキスをした。すると菊は固まってしまったのでそのままもう一度キスをした。今度は触れるだけではなかった。
菊は上手く息ができないのか苦しそうな声を上げるが国は簡単にしなない。本当にやめて欲しいと思うまでキスを続ける。菊に背中を叩かれた時にフェリシアーノはやっと唇を離した。
「可愛い」
菊の頬を両手で触り真っ赤で浅い呼吸を繰り返す菊を見つめる。可愛いしかでてこなくてまた抱きしめた。
「ね?イチコロって言ったでしょ」
「……」
菊は何も言わない。
「俺も好きなの、菊のこと」
この感情が行き過ぎた思いならそれでもいい、菊への思いは俺が1番強ければいい。そんな風に思い続けるフェリシアーノ。
「フェリシアーノくん」
菊に名前を呼ばれ正気を取り戻したフェリシアーノはまた菊の瞳の奥をじっと見つめる。
「夢みたいです」
そんな風にくしゃっと笑う可愛い笑顔にフェリシアーノは煽られた。
「んーー!好き!」
そしてまた触れるだけのキスをするのであった。甘ったるく時間を忘れてしまうほどに幸せで暖かい時間。ヴェネチアは綺麗でしょ?菊が好きだと思い続ける限りずっと綺麗なんだ。
胸焼けがしそうなくらい甘い甘い甘すぎる幸せが仕込んで作り上げられた偽物でも良かった。誰かに取られるよりはずっとずーっとね。
コメント
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好きすぎます⋯!!!!! 動作とか、細かく書かれていて本当に凄いです!尊敬します⋯!!
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁきゃみぃぃぃぃぃぃ