あれから約1ヶ月が経過した。
俺は魔法について書かれている本、つまり「魔法書」を毎日読み続け、今では簡単に難なく使いこなせるようになった。
難しかったかと言われると、簡単だった。めっちゃ簡単すぎてびびった。
なぜならわざわざ詠唱せずとも無詠唱でイメージしただけで簡単に魔法が出てくる。
両親にそうゆうものなのかと聞いたが、今までで無詠唱で魔法を使えた前例はないらしい。
つまり、俺が初めての無詠唱人物という訳だ。
はっ、確かに最強を求めたがここまでとは。笑えない冗談だな、少々祈りすぎたようだ。
だがこれはこれで面白い。俺が大好きな魔法がいとも簡単に出るのだからな。楽しい。楽しすぎる。俺、最強。
「…くふふ、くははは!!」
思わず腰に手を当てて笑った。
「だ、大丈夫かしら…急に笑い出して。」
「魔王の笑い方らしくて良いじゃないか、俺は好きだがな。」
おいそこ、丸聞こえだぞ。
両親が俺を見世物のようにジロジロと見てくる。
確かに少し恥ずかしい気もするが…。
なんせ元の世界ではこうゆうのを「厨二病」というからな。
でもこの世界に来た以上、もう魔法やら魔王やらなんやらですでにもう厨二病の世界じゃないか。
しょうがない、うむ、しょうがないのだ。
……そういえば、俺が異世界転生漫画を読んでた時は幼少期のやつが急に大きくなるという魔法もあったものだ。
俺はまだ生後1ヶ月、赤子中の赤子だ。もしかしたらこの世界にも成長が出来る魔法があるのやもしれぬ。
どれ、調べてみるとするか。なんせこの格好じゃ動きずらいのでな。
俺は数千もの魔法書をあさり出した。
「これも違う、これも…。ふむ、やはりないのか、成長魔法が。あったら楽なのだがな。残念なことよ。………ん?」
色んな魔法書を次々に出していたら、ある一枚の紙が静かにひらひらと地に落ちた。
「なんだこれは。1枚の紙切れか。」
ひょいと落ちた紙切れを拾う。どうやらここに記載された日の年月が書かれているみたいだ。
ふむ、いったいいつ記載された紙切れなのやら。かなり古そうだがな。
「こ、これは…!書かれている年代が約千年前、千年前だと!?」
しかも、あくまで伝説として記載されている。
こんなものが魔王城、通称エルアシャトにあるとは…いや、エルアシャトだからあるのか?
とりあえず読んでみるか…。
数時間後
…ここには俺がこの数千の魔法書を読んでいても書いてなかったものが沢山記載されているな。
しかも俺が求めていた成長魔法、「カロンジ」もあった。
なるほど、この成長魔法(カロンジ)には魔法を発動する時に条件が必要なのか。
まず1つ、その体が5歳以下であること。
これは難なくクリアだな、なんせまだ1ヶ月しか経っておらぬ。
そして2つ、魔族であること。
これも当たり前の事だな、この魔王城エルアシャトに生まれた時点で魔族だ。
そして最後、転生者であること。
…転生者、か。
確かに俺は転生したが、それはここの世界で転生したのではなく、別の世界から転生したのだ。それは果たして条件のうちに入っているのか?
さて、どうなるのだろうな。試してみるとしよう。
年齢は…そうだな、1番育ち盛りが良さそうな16歳くらいでいこう。きっとイケメンで最高な顔立ちになるだろうな。
やばい、楽しみすぎてついにやける。
「…コホン。じゃあやるとするか。」
俺は腕を伸ばし魔法を発動した。
「成長魔法(カロンジ)」
その言葉を発した瞬間、俺の体は電球のように光始め、腕や足、体全体がみるみる伸びていった。
「…成功…か?」
恐る恐る鏡の前に立ってみる。
視界に移るのは、鏡の前で目をまん丸にさせている16歳ほどの顔立ちのよい、つまり死ぬほどイケメンな男性だった。
「…よし!成功だ!」
やばい…イケメンすぎる…この手で抱きしめてあげたい!自分のアクスタが作りたい!!
俺、かっこいい!!!!!
自分で自分に好意を寄せていたら、両親がドアを開けて入ってきた。
「もー、アレドちゃん、何時間籠っているつもりなのー!魔法が好きだからってそんなに籠ってちゃ……。」
俺を見るなり母は言葉を失い、呆然と突っ立っていた。
「アレド…アレドなのか?」
その次に父が俺をすごい目で見ながら名前を言う。
そんなに変な動物でも見たかのような目で見なくても良いだろ。それともかっこ良すぎて見とれているのか?
「なんだ、そんなに驚いた顔をして。」
「いや、急に成長したら誰でも驚くぞ。こんな事がありえるのか…?」
まあそれもそうか。まだ1ヶ月しか経ってない自分の子供が16歳の姿に成長しているのだ。驚くのも無理はない。
「…いや、そもそも赤子が喋る時点でおかしいからな。今頃驚くのもって感じだし。流石、魔王の息子だな。」
父はすぐ納得し始めた。
案外受け入れが早くて助かるな。
「そうよね、アレドちゃんはきっと天才なのよ。こんなにかっこいいもの。」
それに続き母ものほほんとした口調で受け入れた。
しかし、普通に考えたら明らかにおかしいぞ。
それを難なく受け入れるとは…。この両親、もしやバカなのでは…?
すっと冷たい眼差しで両親を見つめていたら、母がはっとした顔で俺の方を見た。
「アレドちゃん、学校行きましょう!魔族学校よ!!アレドちゃんはそこに行きたくてこの姿になったのね!」
何を言い出すかと思ったら学校だと?学校はもううんざりなのだがな。
なんせ陰キャと陽キャがあるではないか。その時点で終わりなのだ。嫌だ、あの生活はもう嫌だ。本当に無理。無理だって。
「そうだ!アレド、学校に行きなさい。その為なら俺は何でもするぞ。」
なんか物凄い誤解をしているな。俺はただイケメンにしたくて…じゃなく、動きやすくしたかっただけなのだが。
…まあ、ここまで応援してきてくれた両親だ。期待に応えてやろうではないか。
「分かった、その魔族学校とやらに行ってやろうではないか。」
という訳で俺は生まれて約1ヶ月で魔族学校に行くことになった。
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