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私は自分の前世のことがあるから、色んな保身を考えてしまう。じゃないと安心が出来ないのだ。
「あのですね、正直にお話しして下さり、ありがとうございます。私も正直に気持ちをお伝えします。そもそも、杜若様が私を結婚相手に選んで下さったのは、大変僥倖なことだと思っています。でも。私が頑張った結果、力が使えなかったら──杜若家に迷惑を掛けてしまいます。私はそれを望んでおりません」
「──それで?」
あれ。杜若様ってば、なんかすごく冷たい声。
気のせいかな。
「その場合は私は潔く、ここを出ていきますっ」
「……」
あれあれ。
また手がいつの間にか杜若様の方へと引き寄せられ、指まで絡んでいて。ぎちっと密着している。
その力強さに気恥ずかしくなる。
でも今はとにかく、昨日言えなかった気持ちを正直に伝える。
「実は私には……夢があります。帝都より北にある、出島のカフェーで給仕をして。ちゃんと自分の力で働いて、お金を稼いで、生きて行きたいと思っています。でも、こうして杜若様や皆様のお力になれるなら、ひとまずはここで頑張ってみます」
そうだ。
だって。
「私と杜若様は──これはいわゆる、政略結婚というやつです。本当に愛し合って私達は夫婦になったわけでありません。杜若様なら引く手あまた。それにとても女性慣れしていると、お見受けしました。であれば、私と離縁しても何も問題ありませんよね!」
にっこりと杜若様に微笑む。
自分で言い出したことだが、これが私の一番良い人生の歩み方だと思った。
力が使えなかったら、私がここに居る意味などないだろう。気に入ったという言葉は決して好きとか、愛しているではないはず。
妖や術の専門家の杜若様。そのそばに、いればいるほど。むしろ、何かの拍子で前世がバレてしまう可能性もあるのだ。
命を守ると約束をしてもらったけれども、万が一、杜若様も前世のことを思い出す可能性だってある。
杜若様に前世を知られてしまい、それで気が変わる可能性だって考慮しておくべきだろう。
私が今後、力を使えると安直に希望に縋るよりも、使えない場合どうするかを考えずにはいられなかった。
考えを口にして、今後の私の人生計画に見通しがついたような気がしたとき。
トントントンと。
杜若様が空いた手で、長い指先で机を叩いているのに気が付いた。
なんだか不機嫌そうに見える。どうしたのだろう。
あと、指もぎゅーっと絡んでいるような……。
「……はぁ。環」
「……はい?」
「鷹はな。一度狙った獲物は逃がさない。仕留めるまで狩りをする」
「そうなんですね?」
いきなり鷹の生態を説明された。
よく分からないけど、きっと大事なことなんだろうとしっかりと聞く。
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