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文化祭が終わって、学校のざわめきが嘘みたいに消えていった。
ついさっきまで人であふれていた廊下も、今は窓から差し込む夕暮れの光が淡く照らしているだけ。
片付けの音も遠くでぽつぽつと聞こえるくらいで、あとは……静かだった。
(……静か、だな)
こんな時間に校舎に残るのは、いつぶりだろう。
ふと足が向いた先は、あの日と同じ、図書館だった。
扉を開けると、そこは相変わらずひっそりとしていて、外の賑わいとは別世界みたいだった。
夕日の光が窓から斜めに差し込んで、並んだ本棚の間に細い光の筋をつくっている。
葵:「……あ、やっぱりいた」
振り返ると、葵が入り口に立っていた。
制服の袖を少し折って、疲れたような、それでも楽しそうな顔をしている。
葵:「探したよ〜、凛。いなくなったからびっくりした」
凛:「別に、ちょっと……静かなとこに行きたかっただけ」
葵:「ふふ、らしいね」
葵はそう言って、当然みたいに隣に座ってきた。
最初にここで話したときと同じ机。
でも、あのときとは空気がまるで違う。
(……不思議。最初は、こんなふうに一緒に座るの、落ち着かなかったのに)
葵:「今日、すっごく楽しかったね」
葵が机に頬杖をついて、にこっと笑った。
その笑顔を見ていると、さっきまでの騒がしい時間が、全部きらめいて見える。
凛:「……そうね。なんか、あっという間だった」
葵:「うん! 気づいたら終わっちゃってた感じ」
葵はそう言って、少し天井を見上げた。
図書館の中に、ゆっくりとした空気が流れる。
まるで時間が、ここだけ止まったみたいに。
葵:「……最初のとき、覚えてる?」
不意に葵が、こちらを向いて言った。
凛:「え?」
葵:「ここで初めて話したとき。私、凛がめっちゃ冷たくてびっくりしたんだから」
凛:「ちょっ……失礼ね」
葵:「だってほんとだもん!」
思わず笑ってしまった。
自分でもびっくりするくらい、自然に。
(ああ、そうだ……最初は、こうやって笑うことなんてなかった)
窓の外では、空が少しずつ群青に変わっていく。
葵の横顔が、その光に照らされて淡く浮かんで見えた。
頬も、髪も、目も。全部やわらかい光をまとっていて──思わず、見とれてしまう。
(……なんで、こんなふうに見えるんだろう)
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
息を吸うと、夕方の空気が少し冷たくて、その分だけこの場所の温度が際立って感じられた。
葵:「……ねぇ、凛」
葵の声が、少しだけ真剣な色を帯びる。
葵:「今日、ありがと。なんか……ずっと一緒にいられて、うれしかった」
一瞬、うまく言葉が出てこなかった。
それくらい、胸の奥がぎゅっとなって──
(……私も、だよ)
声には出さなかった。
でもきっと、顔に出てたと思う。
葵が、ちょっと嬉しそうに微笑んだから。
クライマックスに近づいてきましたかね、、、!今日もみてくださり、ありがとうございます。
♡が来ててうれしすぎる、、!!コメントも来ると嬉しーな、なんて、、、、
では、また次回~。♡、コメント、フォロー、よろしくお願いします。