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嫉妬した。アイツの才能に。
どの分野にも必ず、俗に言う天才というのはいるようで、それがたまたま私の道にもいた。そう、ただそれだけのこと、それだけのことなのに、どうしてもそれが許せなかった。
アイツよりもやってきた、なんて言えるわけがない。間違いなくアイツは天才と呼ぶには努力ばかりしていて、努力家というには才能に溢れているから、だからこそ付けようのないその概念にどうしようもない苛立ちを覚えた。
ズルい!ズルい!ズルい!!
アイツの眼中に私が映っていないことは見て取れた。私ばかりが目の前のソイツを追って、比べて、勝手に絶望してしまう。人間というのは厄介なもので、何かと相手と自分を比べては下を見て安心し、上を見て嫉妬する面倒くさい生き物なのだ。もちろんそれは、私も例外じゃなかった。
もし叶うならば、私と同じ、それか私よりも下の方まで堕ちてほしいと願ってしまう。あわよくばその力に満足して、自堕落になってはくれないだろうか。私にお前のつむじを見せてはくれないだろうか。
そんなことを願ってもアイツはドンドン成長していって、私を追い越すだけでは飽き足らず、もっと遠く、遠くへと走り去ってしまう。
悔しい!悔しい!悔しい!
アイツのようになりたい。
アイツのような才能が欲しい。
アイツのような天才になりたい。
アイツの、アイツの、アイツのように。
アイツを、追い越したい。
天才には、敵わない。
事実は簡単に変わることはなく、ただ悲しくも時間だけが過ぎていく。何に対しても、すぐ変わることは無い。私も、アイツのような天才でさえもそれには抗えない。
いつか、数日、数週間、数ヶ月、数年、数十年、数百年、数千年。季節が幾度となく巡り、何度歳を重ねたいつか、アイツの視界に、私が映ることが出来たなら。
人の嫉妬は、憧れから始まる。私もそうだ。
アイツに憧れ、アイツに見惚れ、アイツに嫉妬した。だからこそ言える。
その嫉妬が、今も尚私を奮い立たせているのだと。
コメント
1件
すごく刺さりました……。嫉妬って言葉にすると醜いものだけど、その根っこにあるのは憧れなんだなって、改めて気づかされました。特に「アイツの視界に私が映ることが出来たなら」という一文が、どうしようもなく切なくて、でもちゃんと前を向いている感じがして、好きです。天才を追いかける辛さと、それでも追い続ける強さ、どちらも丁寧に描かれていて、読後も胸に残りました。素敵な作品をありがとうございます🌷
羽海汐遠
13,720
ruruha
964
みほり
867
#一次創作
ピデピー
974