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(今回の誕生日プレゼントは、カールの好物にしてやろう! しかもそれを俺が作ったら、驚き&喜びが倍増されるだろうな)

そんなナイスアイディアが閃いたものの、料理なんて生まれて一度も作ったことのない俺には、無謀ともいえる挑戦だった。

だが、アンドレア・デ・プレザンスの名を使っての最後のプレゼントになることと、その名を捨てた後でも、カールにプレゼントすることのできるものになるからこそ、挑戦しなければならない。

「坊ちゃん、そこにいらっしゃるのはバレてますよ。またつまみ食いですか?」

たまに調理場に現れては、つまみ食いをしている俺を即座に見つける料理長には、まったく頭が上がらない。

「つまみ食いはまた今度で、料理長に頼みがあるんだ」

「また今度つまみ食いをされても、こっちは困るんですけどねぇ」

「じゃあつまみ食いをしないのを条件で、料理を教えて欲しい」

意を決して頼んだ俺を、料理長は小さな目を大きく見開いてガン見した。

「坊ちゃんが料理……。いったいなにを作りたいんですか?」

「紅茶のシフォンケーキだ」

「ホットケーキじゃなく?」

「ホットケーキよりも難しくて、カールが喜ぶものを作りたいんだ」

「なるほど。日頃お世話になりっぱなしの執事様に、主からの労いってことですかぁ?」

イヤなしたり笑いをして俺を見つめる料理長に、真顔を貫き黙って頷いた。好きだから誕生日プレゼントにするなんて言った日にゃ、それをネタにからかわれるのが想像つく。

「偉いっ! 巷では坊ちゃんの悪評が囁かれてますけど、そういう気遣いができるところは、伯爵家次期当主にふさわしいですぞ!」

「褒めてくれるのは嬉しいが、問題はここからだ。まずは俺が料理を一度も作ったことのない、超のつくド素人だってこと」

照れを隠すために、まくし立てる感じで言い放つ。

「それくらいは、ワシだってわかってることですけど?」

「もうひとつは、できる執事様の目を欺き、なんとか時間を作って、料理の特訓をしなきゃならないことなんだ」

問題点を言い切ると、料理長はしぶい表情を決め込む。

「確かにそれは、大問題ですな」

「だろ? アイツの目をごまかし、俺が料理長に料理を教わることも、苦労するのが目に見えるんだ」

「でしたら、睡眠時間を削ることは大丈夫でしょうか?」

そう言って、料理長はメモ帳を胸ポケットから取り出し、なにかを書きはじめた。

「坊ちゃん、これがワシの今週のスケジュールです。ちなみにお休みの日は不定休。ワシ個人が使ってる、私室のキッチンで料理をしましょう」

「睡眠時間を削るくらい、カールのためにやってやるさ!」

こうして料理長から、紅茶のシフォンケーキの作り方を教えてもらい、なんとかマスターして、クソ忙しい誕生日パーティーの前日に、それを作りあげたのだった。

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