マフィア森、若と、それに拾われお嬢となる藤の話
大森side
m.「…おーんまいがぁ…」
いきなりネイティブな始まりで申し訳ないのだが、俺は今すごく混乱している
「…お兄さん達、だぁれ?」
きゅるっとした表情、ビー玉のような透明なきらきらとした瞳、そんな子がアジトの前に捨てられてた
h.「…元貴、どう思うよ」
m.「さすがに罠でしょ、無視無視」
そう若井と共にその子を無視して中に入ろうとした
すると、服が突っ張ったような感じがし、体を前に進ませるのを拒んだ
「…まって」
「いっしょに、いさせて」
俺のコートの裾をぎゅっと掴みながら、下唇を噛んで俯いている
m.「…はぁ、俺、こーゆーの嫌いなんだよね」
h.「さっ、連れてきちゃったもんはしょーがない、ねぇ君、名前は?」
「…ん!」
m.「…ん?クマ?」
頭を傾げ頬杖をつく俺達の目に、お嬢ちゃんがずっと持っていたテディベアの首元のネームプレートが入った
m.「お嬢ちゃん、そのクマ見せてみな」
クマをすんなり渡してくれたので、ネームプレートを裏返すと、思っていた通り、名前であろうアルファベットが書いていた
R、Y、O、K、A…
m.「…りょーか、って言うのか」
h.「いい名前だね、お嬢ちゃんにぴったり」
r.「…ん〜、んへ」
少し困ったような顔でにこっと微笑んだため、どうかしたのかと聞くと、その子から驚きの事実を伝えられた
r.「…僕、おんなのこじゃないよっ!」
m.「…お坊ちゃんでしたか…ははっ…」
h.「こりゃ騙されるわ…」
m.「若井、涼ちゃん寝た?」
h.「うん、もうぐっすり」
m.「…でも、さっきは驚いたね」
先程、寝たと思った涼ちゃんがいきなり大声で泣き叫んで起きてきたのだ
お母さん、お父さんと発しながら
家族の夢でも見ていたのだろう
でも、あの子のプロフィールを見ると確信した
親と生き別れたのだ
h.「…藤澤財閥のお坊ちゃんで、結構なぼんぼん、幸せだったはずだが、敵のマフィアに家丸ごと燃やされて残ったのが涼ちゃん…
で、いろんなところを転々とするも、命目当て体目当て…まだ九歳なのにね」
そう書類をぱらぱらと捲りながら分析する、さすがうちの情報屋
m.「…死んだ人の顔って、寝てる時によく映るんだよ 」
m.「お前もそうでしょ」
そう若井に問いかけると、うん、と深く頷いた
h.「…てか、なんで元貴は涼ちゃん引き取ったの?」
m.「…んー、まぁ、そうだね、
自分と重ねたんだよ」
まだ分からないことだらけで、全てが新しくてきらきらしたものに見えるようなガキに、俺みたいな惨めな思いをさせるのは終わりにしたいからね
コメント
3件
好きすぎますっ
めっちゃ好きです…!!
こういう作品大好き😍