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※【背中の文字(藤澤→←←若井)】の若井視点です。
フェーズ2開幕に向けたスタジオ練習。
いつものように涼ちゃんと一緒にスタジオ入りしたが、今日は俺たちが一番乗りだったらしい。
「準備だけしとこうか。」
涼ちゃんの言葉に、俺たちはそれぞれの荷物を展開していると
「あ、飲み物忘れたから買ってくる。」
「分かった。」
自販機で水を買って戻る途中
「女連れ込んでんの?!大切な時期に何してんの!若井は何やってんの?!」
元貴のよく通る声が聞こえてきた。
”若井”って言ったから俺の話?
俺女連れ込んでないけど?!
慌てて戻ろうとしたけど、元貴のさっきの迫力が怖くてすぐに部屋に入れない。
幸い扉が開いてて涼ちゃんと元貴の話し声は聞こえるので、そっと様子を窺った。
「結構前からなんだけど、僕の背中に指で”すき”って書くんだよ。」
「何それ高校生か。って今どき高校生でもそんなことせんわ。」
「いいじゃない。まぁでも本人は僕が起きてるって気付いてないけどね。」
「寝たふりしてんの?事恋愛対象として見れないとか?」
「いや、全然恋愛対象としてみてますけど?」
「恋愛対象として見てんのに可愛い告白を無視するとか、それはそれで相手が可哀そうなんだけど。」
「だって、この時間を楽しみたいじゃん。」
「これが噂に聞く”黒藤澤”か。かわいそ相手の子。」
バレてた?!
っていうか涼ちゃんも俺のこと恋愛対象として見てるって?!
いや、それでもやっぱり恥ずかしすぎる!!
このまま気づかないふりして戻る?
無理!絶対無理だ!!
1人あわあわしていると、持っていたペットボトルを落としてしまった。
「!?」
涼ちゃんと元貴がこっちを見る。
どうしよう。俺多分、顔真っ赤だ・・・。
元貴は近づいてきてペットボトルを拾ってくれた。
そして、振り返り
「涼ちゃん、5分で終わらせて。」
そう言ってスタジオを出て行った。
「あ、あの、若井・・・さん?」
涼ちゃんが恐る恐るといった感じで近づいてきた。
「と、とりあえず中に入って?ね?」
言われた通り中に入ると、涼ちゃんは扉を閉めた。
「ごめん!若井があまりにも可愛かったから!!」
「・・・らい。」
「え?」
「涼ちゃんなんか嫌い!!」
「えぇ?!」
「俺がどんな思いでっ。」
言い終わらないうちに涙が溢れてきた。
叶うことはない
叶うはずがない
想っても仕方ない
想わずにはいられない
無駄なことを
だからこそ
「おれ、がどんだけっ。」
「若井!!」
「!?」
名前を呼ばれた瞬間、抱きしめられた。
「ごめん!若井っ。僕の事殴っていいから!」
少し苦しいくらいに抱きしめられて、力が抜けていくのを感じる。さっきまであんなに怒りが膨れ上がったいたのに、抱きしめられたらそんなものよりトキメキが止まらなくなってしまう。本当に不思議な現象だな。”惚れた弱み”って
「若井、改めて言わせて・・・。好きです。俺と付き合ってください!」
トキメキが爆発するかもしれない。
でも、俺は逆のことを口にした。
「・・・やだ。」
「なんで?!」
「・・・黒藤澤、嫌い。」
情けなく眉尻を下げた涼ちゃん。
自業自得だ。反省しろ。
「・・・分かった。じゃぁ、若井が僕の全て好きになればいいんだね。」
「へ?」
その瞬間、全てを食らいつくすような荒々しいキスをされた。
「!?」
好きな人にキスをされているということと、脳が痺れるような激しいキス、そして何より俺に欲情している涼ちゃんの顔。トキメキなんて生易しいモノじゃない。脳を絞られ、心臓を鷲掴みされたような衝撃だった。
(元貴戻ってくるのにこのままじゃっ。)
パニクッた俺は何を思ったのか
「待って!!」
っと言って思いっきり正拳突きしてしまった。
小学校の時といっても空手黒帯だった俺の正拳突きをもろに受けた涼ちゃんは、俺の前に蹲ってしまった。
「パシャッ。」
音がした方を見ると、元貴が写真を撮っていた。
「涼ちゃんが土下座してるwwww.]
よかった、バレてない。
「殴っていいとは言ったけど・・・。」
蹲る涼ちゃんが何か言っていたけど聞かなかったことにした。
キャパオーバーでこれ以上は無理だから。
「若井、大丈夫そ?」
元貴が心配そうな声で聴いてきたから
「・・・大丈夫。」
これでもプロだ。仕事はちゃんとこなそう。
その後、サポートメンバーもやってきて練習が開始された。
始終涼ちゃんはこちらの様子を窺っていたがあえて全て無視した。
じゃないと俺の心臓持たないから。
【おわり】