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玲威✝🌙【浮上✕】ふぉろせ
第23話 努力のカタチ
――文化祭まで、あと一週間。
10月も半ばを過ぎ、朝の空気はすっかり秋らしくなっていた。
家を出ると、少し冷たい風が頬を撫でる。
道路の端には、黄色く色づいた葉が何枚か落ちている。
ついこの前まで、まだ夏の暑さが残っていた気がするのに。
季節が進むのは、思っていたより早い。
そして――。
文化祭も、もうすぐそこまで迫っていた。
💚「たっつーん!おはよー!」
💛「おはよー」
💚「今日寒くない!?」
💛「めっちゃ寒い!」
💚「俺の上着貸してあげよっか?」
💛「うん」
俺は着ていた上着を脱ぎ、たっつんにかけた。
寒いのかたっつんの耳先がほんのり赤く染まっていた。
それから、 いつものように二人で学校へ向かう。
💚「文化祭まであと一週間だって!」
💛「ほんま早いなぁ」
💚「なんかワクワクする!」
💛「俺は女装が近づいてきたことに震えてるわ」
💚「俺も結構いやかも笑」
二人で笑いながら歩いていると、学校が見えてきた。
校門には、『文化祭まで残り7日』と書かれた大きな掲示物。
廊下には色とりどりの飾り。
教室の窓には、それぞれのクラスの看板。
学校全体が、いつもの学校とは少し違って見えた。
文化祭まで、あと一週間。
みんなが、それぞれの場所で準備を進めていた。
*
放課後。
3年A組では、今日も文化祭準備が行われていた。
「この飾り、こっちに付けよう!」
「メニュー表できたよ!」
「衣装、これで大丈夫そう!」
「写真スポットもほぼ完成!」
教室の中は、たくさんの声でいっぱいだった。
黒板には大きく、
『女装男装メイド喫茶』
と書かれている。
教室の壁にはピンクや白の飾りが増え、机も少しずつ配置が決まってきていた。
💚「おお〜!めっちゃそれっぽくなってる!」
💛「最初とは全然違うな」
💚「ね!」
俺たちもそれぞれ作業を手伝う。
俺は飾りを壁に貼り、たっつんは机を運んでいた。
💚「たっつん、そこもうちょっと右!」
💛「こっち?」
💚「そうそう!」
💛「これでええ?」
💚「完璧!」
💛「よし」
そのとき。
「じゃぱぱくん!たつやくん!ちょっとこっち来てー!」
💚「はーい!」
呼ばれてそちらへ向かう。
どうやら衣装の最終確認らしい。
目の前に衣装が出される
💛「……」
たっつんが青ざめた顔で俺を見てくる。
💚「え、俺たちこれ着るの?」
「もちろん!」
💚「……」
目の前には、女装用の衣装。
💚「……やっぱり俺も女装するんだ」
💛「だから最初から言ってたやろ、てかお前が言い出したんやろ」
💚「たっつんも着るんだよね?」
💛「……」
💚「楽しみだな〜!」
💛「…最悪」
教室に笑い声が響く。
文化祭準備は大変だけど。
みんなで一緒に作っている感じがして、やっぱり楽しかった。
でも――。
俺たちには、もう一つ。
大事な準備が残っている。
💚「……そろそろ行こっか」
💛「おう」
俺たちは作業を一旦止めて、教室を出た。
向かう先は――音楽室。
*
廊下を歩いていると、あちこちから文化祭準備の音が聞こえてくる。
段ボールを切る音。
誰かが笑う声。
遠くから聞こえる、吹奏楽部の練習。
いつもの放課後とは違う。
学校全体が、文化祭に向かって動いている。
💚「なんかいいね、こういうの」
💛「何が?」
💚「みんなで頑張ってる感じ!」
💛「……まあ、分からんでもない」
音楽室の前に着く。
扉を開けると――。
🖤「おっ!来た!」
うりがギターを持って待っていた。
💚「うりりーん!」
💛「今日も早いな」
🖤「もちろん!」
うりはギターを置くと、俺たちのほうを見る。
🖤「二人とも〜ちゃんと練習してきた?」
💚「したよ!」
💛「一応な」
🖤「よし!」
文化祭準備初日から、
俺たちは毎日練習していた。
最初はドラムを叩くことすら難しかった俺も、今では簡単なリズムなら叩けるようになった。
たっつんも、ベースの弾き方を少しずつ覚えている。
そしてうりは――。
ギターも歌も、ずっと練習していた。
💚「今日は何する?」
🖤「今日は……」
うりが少し考える。
🖤「初めて、最初から最後まで通してみよう!」
💛「え?」
💚「おお!」
💛「もうそんなことできるん?」
🖤「できるようにするんだよ!」
💛「相変わらずスパルタやな」
🖤「文化祭まであと一週間だぞ?」
💛「それ言われると何も言えへん……笑」
俺たちはそれぞれの楽器の前につく。
俺はドラム。
たっつんはベース。
うりはギター。
🖤「じゃあ、一回だけ音出して確認しよ」
うりがギターを鳴らす。
ジャーン。
続いて、たっつんがベースを弾く。
ボーン。
俺もスティックを握る。
ドンッ。
💚「……よし」
🖤「じゃあ、本番。いくよ!」
うりがカウントを取る。
🖤「せーの!」
ドラムの音が響く。
それに合わせて、ベース。
そしてギター。
最初の頃はバラバラだった三つの音が――。
少しずつ重なっていく。
💚「……!」
楽しい。
前とは全然違う。
もちろん、まだ完璧じゃない。
でも。
ちゃんと曲になっている。
そのまま演奏を続ける。
途中で少しだけリズムがずれた。
でも、うりがすぐに合わせてくれた。
たっつんもそれに合わせる。
俺も必死についていく。
そして――。
最後の音。
ジャーン……。
音楽室が静かになる。
俺たちは、しばらく何も言わなかった。
💚「…………」
💛「…………」
🖤「…………」
そして。
💚「……今」
💛「ん?」
💚「最後までいった?」
🖤「……いった」
💛「ほんまやな」
たっつんが驚いたように笑う。
💚「やったーーー!!」
思わず立ち上がる。
💛「えへへ笑」
🖤「やったな!」
三人で顔を見合わせる。
たった一週間前は、まともに音を合わせることすらできなかった。
それなのに。
今は、一曲を最後まで演奏できた。
💚「めっちゃ嬉しい!」
💛「俺も」
🖤「……」
💚「うりめっちゃうまかった!」
🖤「…そう?」
💛「俺らが来る前からずっと練習してるけど疲れへんの?」
🖤「まぁ好きだからね」
うりは少しだけギターを見つめていた。
💚「うり?」
🖤「……あ、ごめん」
💚「どうしたの?」
🖤「いや……」
うりは少し笑った。
🖤「なんか、やっとここまで来たなって思って」
💛「?」
🖤「俺さ」
うりがギターを抱えたまま話し始める。
🖤「せっかくの文化祭なんだから、絶対思い出に残ることしたくてさ!」
💚「そうだよね」
🖤「それに……俺、小さい頃から歌うことも、ギターを弾くことも大好きなんだ」
💛「そうなんや」
🖤「周りからはよく『天才』とか『多才』とか言われるんだけど……」
うりは少しだけ視線を落とす。
🖤「でも、俺はそれだけじゃないって思ってる」
🖤「『才能』があるからできるんじゃなくて」
🖤「頑張ってるからできるんだってことを、みんなに見せつけてやりたいんだ!!」
💚「……!」
🖤「だから俺、文化祭まで本気で練習するって決めたんだ」
うりは笑った。
いつもの、ちょっといたずらっぽいかわいい笑顔。
でも。
その目だけは、本気だった。
💚「……じゃあ」
俺はドラムスティックを握り直す。
💚「俺たちも本気でやらないとね!」
💛「せやな」
🖤「……!」
うりが嬉しそうに笑う。
🖤「よし!」
💚「もう一回やろう!」
💛「え、今!?」
🖤「もちろん!」
💛「休憩は!?」
💚「あと一回だけ!」
💛「その『あと一回』が何回になると思ってんねん!」
🖤「じゃああと三回!」
💛「増えたやん!」
俺たちは笑いながら、もう一度楽器を構える。
🖤「じゃあ、いくよ!」
💚「おー!」
💛「おー!」
音楽室に、また音が響き始めた。
ドラム。
ベース。
ギター。
三つの音が重なっていく。
まだ完璧じゃない。
でも、一週間前とは違う。
少しずつ。
本当に少しずつ。
俺たちの音になってきていた。
*
練習を終える頃には、外はもう夕方になっていた。
音楽室の窓から見える空は、少しオレンジ色に染まっている。
校庭では、まだ文化祭の準備をしている生徒たちがいた。
「これ運んでー!」
「明日までに終わらせよう!」
「看板できたよー!」
そんな声が、遠くから聞こえてくる。
💚「みんな頑張ってるね」
💛「俺らも頑張らなあかんな」
🖤「うん」
うりがギターをケースにしまう。
🖤「文化祭、絶対成功させような」
💚「もちろん!」
💛「当たり前!」
三人で音楽室を出る。
廊下には、文化祭の飾りがたくさん並んでいた。
あと一週間。
クラスの準備も。
バンドの練習も。
まだまだやることはたくさんある。
だけど――。
少しずつ、文化祭が近づいている。
俺らのバンドの軌跡も続いていく。
――文化祭まで、あと一週間。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ちなみに文化祭編は残り3話あります!
この話はじゃっぴ本人が言っていた話を少しだけ参考にして、作らせていただきました!
うりくんが伝えたかったのは天才や多才でも裏ではちゃんと努力してるってこと。
次回はついに最後の練習です。
次回 第24話 ひとりじゃないよ
コメント
3件
じゃぱぱさんそんなこと言ってたのか、、、いつだろ?てかめっちゃ面白くてハート連打しまくってるw頑張ってください!たっつんの女装、、、ぐ腐腐((じゃぱぱさんたっつんに上着?あげたのメロすぎ!楽しみにしてます!
うりくんの「天才とか多才って言われるけど、頑張ってるからなんだ」って台詞、すごく響きました。裏でどれだけ練習してるかを見せたいっていう気持ちが真っ直ぐ伝わってきて、グッときました。三人の演奏が少しずつ形になっていく過程も丁寧に描かれていて、文化祭本番が楽しみです!