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第三章 父と娘の確執
エピソード12
俺はない知恵をしぼり考えた策は、父、俺、そして桜井さんの3人で飲むことにした。場所は、父の行きつけの居酒屋にした。桜井さんは承諾。父は話すだけならといやいやながら承諾した。
席は父が座り、向かいに俺、桜井さんと並ぶ。3人の席に生ビールとお通しの切り干し大根と枝豆が届く。周りは賑やかだが、3人の席は、お通夜のようなムードが立ち込める。第一声は俺からだった。
「まさか、3人で飲む機会があるとはな」
と俺はお通夜のようなムードを消すかのように発した。
父は、黙ったまま。そこに、桜井さんが入る。
「お父さんとお兄さんと一緒に飲めて嬉しいです。」と震えた声でいう。
「俺は、桜井さんのお父さんではない。」
と父は静かにひと言。
「いいじゃないか。父さん。今日くらい。」と俺はその場を和ませる。
「桜井さんは、お酒飲めるの?」と俺は聞く。
「はい。少しですけど。」と桜井は応える。
「よし。乾杯しようか!」と俺はいう。
父は渋々ジョッキを持ち上げ、3人は乾杯する。
「桜井さんは未来のどこが良かったの?」と俺は聞く。
「天真爛漫で太陽のような人柄に惚れました。」と照れくさそうにいう。
「お父さん。順番が逆になりすいませんでしたっ!」と立ち上がりお辞儀をした状態で桜井はいう。
「それは確かにな。未来にも責任があるし」と俺はなだめる。
「君は未来の病気のことは、聞いていると思うが、あの子が永く生きられる保証はないんだ。どんな局面になっても未来を支える事は出来るか。」と父は静かに話す。
「未来さんからその事は聞いています。自分は、どんな時でも未来さんのそばで支えていく覚悟です。」と顔を上げながらいう。
「あの子は、分かって居るようで分かってないところがある。それでも君は未来と赤子を死ぬ気で支えると誓うか?」と父は目を充血させながらいう。
「はいっ!未来さんと赤ちゃんを死ぬ気で支えますっ!死ぬ気で働きますっ!」
と桜井さんは真剣な面持ちで応える。
少し沈黙があり父は聞く。
「一発殴らせろ。」と今にも泣き出しそう顔で父はいう。
「はい?」と桜井は子犬が怯えるような声でいう。
父は立ち上がり、鉄拳が空を舞う。とっ思ったらその拳を止め、ゆっくりと引っ込める。
「俺はどんな人であっても暴力は振るわない。」と涙を零した。
「直人さんと言ったかな?」
「はいっ!」と桜井は応える。
父は席に座り直しいう。
「直人さん。今日は飲むぞ。」と嬉しそうに父は微笑みかけた。
「はいっ!」と笑みを浮かべ席に座り直す。
こうして、俺の作戦は大成功?を収めた。
家族が、一気に2人も増える嬉しさで俺は涙した。
「父さんだけ、直人さん呼びかよ。俺も直人さんで」と俺は泣きながら笑う。