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「ずっと?」
そういえば今までも要所要所で「ずっと」と言われ続けていた気がする。
そこまで深く考えてこなかったけれど、ずっと、ってどのくらいの期間なのかな?
私が修太郎さんと初めて出会ったのは、市役所に勤め始めた四月からだから……実質、まだ二ヶ月余り。
ずっとって…出会ってからの期間のことを指すんでいいのかな?
以前修太郎さんに「日織さん以外の女性を自分のそばに置くことなど、貴女と出会った日からずっと、一度も考えたことはありません」と言われたことがある。
あれにしても、たかだか一月余りの時間を指すには不自然な言い回しだったような気が。
どう取るのが正解……?
パンをお皿の上で一口大に千切って食べようとしていた私は、思わずその手を止めて健二さんを見つめた。
「兄さん、もしかして……まだ話してないんですか?」
私の視線を受けた健二さんが、修太郎さんに視線を流されてから、彼の反応をご覧になられて「マジか」とおっしゃった。
「てっきりもう話してるんだと思ってましたよ」
呆れ顔で言いいながら、鴨肉を一切れ口に運ばれる。
それを飲み込んでから、炭酸水で口を潤されると、健二さんは私をじっと見つめていらした。
「日織さん、俺と小さい頃に一度だけ遊んだことがあるの、覚えてますか?」
日織さんが四つぐらいで、俺が八つぐらいの時の話です、と続けていらっしゃる。
私は「先日両親からもその時の話をお聞きしたのですが……何となくそんなことがあったかも?くらいの記憶しかないんです、すみません」と頭を下げた。
「そっか。俺はまぁ日織さんよりは大きかったから多少覚えているんですけどね、『健二のお嫁さんになる子に会いに行くんだよ』って親から言われて、貴女に会いに行ったんです。けど俺、そんなことより外で遊びたいとかそういう気持ちの方が強くて全然気乗りしなかったんですよ。――で、貴女そっちのけでお宅の庭を駆け回ったのを覚えています」
まぁ、幼い子供に許婚だのなんだのいう話は荷が勝ちすぎていたんでしょうね、と健二さんはお笑いになられた。
「実際日織さんも俺には全然興味を持ってませんでしたし」
そこで私の横に座る修太郎さんをじっと見つめられると、健二さんは「こっから先は兄さんが直接話すほうがいいよね?」とおっしゃった。
今まで一人黙々とスープを飲んでいらした修太郎さんが、健二さんの言葉に、ふとその手を止められる。
健二さんに気を取られて気がついていなかったけれど、修太郎さんのお顔は何故か真っ赤で。
「修、太郎さん……?」
呼びかけて彼の腿にほんの少し触れたらビクッとなさった。
「あ、あの?」
(え? どうして修太郎さんはこんなに照れていらっしゃるのでしょう?)
私にはその理由が分からなくて、健二さんと……彼の横に座っていらっしゃる佳穂さんを交互に見つめた。
でもお二方ともクスクス笑うばかりで何も言ってはくださらないの。
「修太郎、観念して告白なさいな。日織ちゃん、困ってるわよ?」
#御曹司
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ややして佳穂さんが後押しなさるようにそう言ってくださると、観念なさったのか、修太郎さんがはぁっと大きく息をつかれた。
それから手にしていらしたスープスプーンをお置きになられると、私の方へ向き直られる。
私も手にしていたパンをお皿に戻して修太郎さんの方へ身体を向けた。
「日織さん、覚えていらっしゃいますか? 小さな貴女に僕が絵本を読んで差し上げた、良く晴れた夏の日のことを」
コメント
2件
ずっと、の意味がわかるかな
第50話読了!ここにきて「ずっと」の謎が深まる感じがいいね〜。日織さんが感じてる「たかだか一月余りに『ずっと』は不自然」ってツッコミ、読者として完全に同意だわ。修太郎さんが真っ赤になってるギャップに萌えたし、健二さんが「てっきりもう話してると思ってました」って呆れてるのも兄弟感あって笑った。そして小さな日織さんに絵本を読んであげた夏の日…って、まさかの幼少期接点フラグ!?続きが気になりすぎる🔥