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桃花
かき氷のシロップになり損ねた人
たっつんが他のメンバーと盛り上がっていた。
「たっつんさん、そのツッコミおもしろすぎるって!」
「いやいや、普通やって〜!」
楽しそうな笑い声が響く中、少し離れた場所でそれを見ていたじゃぱぱは、なぜか胸の奥がもやもやしていた。
いつもなら隣に来るのに。
今日は全然こっちを見ない。
「……ふーん」
ぽつりと漏れた声は、自分でも驚くくらい不機嫌だった。
その後も、たっつんは他のメンバーと話してばかり。
じゃぱぱはとうとう耐えきれず、無言で部屋を出ていってしまった。
「……あれ、じゃぱぱ?」
違和感に気づいたたっつんは、慌てて後を追いかける。
廊下の角。
壁にいたじゃぱぱは、近づいてきた足音に気づくと視線をそらした。
「……何?」
「いや、“何”ちゃうやろ!? 急にどしたん!」
たっつんが顔を覗き込む。
けれどじゃぱぱは、少し拗ねたように口を尖らせた。
「今日ずっと、他の人とばっか話してたじゃん」
「え?」
「俺、待ってたのに」
その言葉に、たっつんは一瞬目を丸くする。
まさか。
嫉妬?
「……ふはっ」
「笑うなって!」
「いやだって、じゃぱぱがそんな顔すると思わんやん!」
たっつんが笑いながら肩を揺らすと、じゃぱぱはさらにむっとした顔になる。
「ほんとに嫌だったんだけど」
その低い声に、たっつんの笑いがぴたりと止まった。
普段はみんなの中心で明るいじゃぱぱ。
でも今は、少しだけ寂しそうだった。
「……ごめん」
たっつんが小さく呟く。
「ちゃんと見てたで? ただ、今日はみんなテンション高かったから…」
「……俺のことは?」
「見てたって言っとるやん」
そう言いながら、たっつんはそっとじゃぱぱの袖を掴んだ。
「拗ねるくらい俺のこと気にしてくれとるん、ちょっと嬉しいし」
「……っ」
「でも、ちゃんと言ってくれんと分からんて」
優しく笑うたっつんに、じゃぱぱは観念したようにため息をつく。
「……だって、たっつん取られそうだった」
「誰にやねん」
「みんなに」
その返事があまりにも真っ直ぐで、たっつんは思わず吹き出した。
「大丈夫やって」
そう言って、たっつんは軽くじゃぱぱの肩にもたれかかる。
「俺、ちゃんとじゃぱぱの隣おるから」
その瞬間、じゃぱぱの表情が少しだけ柔らかくなった。
「……ほんと?」
「ほんとほんと」
「……じゃあ、もうちょいこっち来て」
「甘えたやなぁ」
そう言いながらも、たっつんは素直に隣へ寄る。
するとじゃぱぱは安心したみたいに笑って、小さく呟いた。
「これでいい」
廊下には、ふたりの穏やかな笑い声だけが残っていた。
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