テラーノベル
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隣の家から、アラーム音が響き渡る
それも、今までクレームが来ていないことが不思議なぐらい大きな音で
「千聖ー」
母の声が一回から聞こえてくる
私は別に寝てはいない
むしろ、もう制服に着替えて髪を結び、紐で飾れば登校できる姿だ
母が私に声をかけたのは、私を起こすからではない
「隣の家から聞こえるアラーム音を止めてこい、ついでに昴も起こしてこい。」
と言いたいのだろう
返事をすることも無く重いカバンを肩に背負い、階段を降りる
リビングに入り弟のうるさい挨拶を無視し、玄関に向かう
低い銀色のフェンスを跨ぎ、隣の大きな洋館の扉を開く
中には誇りなど一つもなく、家政婦の女性たちが慌ただしく掃除真っ最中だった
こんなに家政婦が居るのなら、一人ぐらいアラームを止めてくれ
というぐちも喉に押し込み、私は階段を上る
二階には名前のプレートが付いた扉が十数個あり、その内の7つはこの大量に居る家政婦の物
その中に紛れ込む【Hibiki】と書かれた部屋がアラームの持ち主であり、幼馴染の響の部屋
中の物は全てが無駄に大きい
それでも何一つ圧迫感を感じないのは、その分部屋もデカいからだろう
私は見事に響の足でベットの下に追いやられたスマホを救い出し、指で左にスクロールする
鼓膜が破れそうなうるささでも、呑気な顔でよだれを流し寝ている響を見て余計に腹を立たせる
いっそこのまま起こさずに遅刻させてやろうかとも思ったが、そんな事をすればきっと今夜の晩御飯は無いだろう
「響、いい加減もう高3でしょ。自分で起きてよ」
体を揺さぶりながら起こしていると、急に頬に向かってニョキッと手が伸びてきた
「痛った」
鏡を見なくても赤く腫れているのがわかるぐらい気持ちの良い音がして、家政婦の依田さんが駆けつける
「どうされました!?」
依田さんは厳しい顔つきで私の肩を上下に動かす
「依田さん、痛いです。」
元柔道部の依田さんは、細身なのにも関わらず、ずっと変わらない力の持ち主だ
下手したら方が外れるかも知れない。
「すみません、早く冷やしたほうが良さそうですね。」
そう言い、新入りさんであろう女性に保冷剤と手ぬぐいを用意するよう促した
部屋の中にある大きな姿見で確認すると、想像していたような赤色ではなく、もう紫色になりかけている
女性が持ってきた高そうな手ぬぐいに巻かれた私も持っている庶民的な保冷剤を頬に当てる
それでも、響に起きる気配はない
殴ってやりたい、蹴り倒してやりたい
「ここは、私が響様を起こしておきますので、千聖様はご朝食を。」
依田さんはニッコリと笑い、優しい口調で私に言ったが、、
目が笑っていない
私は保冷剤を持ってきてくれた女性にリビングへと誘導された。
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コメント
3件
いいのばっか書くな。奏丸は。