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#現代ファンタジー
裏五条
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「アリスちゃん」
「マナエ」
薄い紫色のふわふわした髪、濃い紫色の瞳、可愛いドレスをきた彼女はマナエル。幼なじみで同じく幼なじみのメリエルの妹だ。
彼女はボクのことをアリスちゃんと呼ぶ。同い年なのに、まるで年下のように扱われる。初めて出会ったとき、女の子と間違われて、アリスちゃんと呼ばれてしまった。そこからずっと……。
「カトル様を見なかった? 渡したい物があるのだけれど」
そして、兄カトル第一王子の婚約者。彼女の左の薬指には兄上から贈られた誓いの指輪が小さく光っている。
「兄上なら、向こうでメリエと仕事の話を――」
「あら、仲間外れされてしまったの? じゃあ私がアリスちゃんの仲間ね」
クスクスと笑いながら、彼女はお菓子を渡してきた。
同い年なのに、大人びていて、けれど年相応の可愛さもある。
気がついた時には、ボクは彼女に恋をしていた。
兄上と相思相愛だとわかっていたけれど――。ボクが入る余地などどこにもないとわかっていたけれど――。
ーーー
「カトル」
「マナ!」
仲睦まじくする二人が遠くに見える。聞きたくないのに、二人の仲のいい会話が聞こえてくる。
ずっと、この黒い気持ちを持ったままいなければいけないのだろうか?
ボクは何度も、この耳を恨んだ。
どうして、ボクじゃなかったんだろう。第一王子が。普通の人間が。婚約者が。マナエルの一番が――。
ーーー
「カトル、ごめんなさい、約束守れなくて……」
「マナ……」
「メリエル姉様、ごめんなさい。カトル様を……。お願いします」
「マナエ!」
「アリスちゃん、ごめんなさ…………」
唇は動いているけれど、音にならないまま、彼女の声は聞こえなくなった。彼女が、ボクに何を言いたかったのか。それはもう、誰にもわからない。
兄上はマナエルの最後に口にした名前がボクだったことを、恨んでいるだろう。
兄上が握っていた白い腕から力が抜けて、彼女は、この世界から居なくなった。
光の聖女の魔法があれば、癒し治すことが出来たのだろうか?
何故、この世界から聖なる力を持つものがいなくなってしまったのだろう。
彼女を救う力が欲しかった。たとえ、ボクの恋が叶うことがなくとも。
彼女を救う力があれば、兄上の、メリエルの、こんな顔を見なくて済んだのに。
ーーー
兄上とメリエルは婚約を結んだ。彼女の最後の願いを叶えるためだったのか……。メリエルの気持ちはどうだったのだろう。
ボクは彼女が、居なくなった穴を埋めるように聖なる力を探して旅を始めた。
悲しい気持ちを、苦しい気持ちを誰かに悟られたくなかったから。
自分の気持ちから逃げたんだ――。
コメント
1件
番外編で一気に過去の重みが来ましたね……。猫耳王子がマナエルに恋してたっていうのも切ないけど、何より「どうしてボクじゃなかったんだろう」って内心で繰り返すところが胸に刺さります。最後の「自分の気持ちから逃げた」って自己分析も、彼の旅の動機が痛いほど伝わってきて。番外編でこういう背景を見せてもらえると、本編の行動に奥行きが出ますね。