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第15話:新たな協定:使者としての旅立ち
登場人物
グルッペン:WrWrd軍総統
トントン:書記長
オスマン:元外交官
ひとらんらん:元スパイ
コネシマ、ゾム、鬱先生など:WrWrd軍主要メンバー
本文
翌朝。ひとらんらんが逃亡し、オスマンがグルッペンを殺害しようとした事実は、既に軍内部に知れ渡っていた。兵士たちは混乱し、二人が厳罰に処されるものと誰もが思っていた。
総統執務室に、WrWrd軍の主要メンバー全員が招集された。空気は張り詰め、誰もがグルッペンの口から発せられる**「処刑」か「永久追放」**の言葉を待っていた。オスマンとひとらんらんは、軍服ではなく、私服姿で立っていた。
グルッペンは、静かに、しかし威厳を持って口を開いた。
グルッペン「ひとらんらん、オスマン。お前たちは、家族という最も純粋な大義のために、私を裏切ろうとした。その隠し事によって、我々だに多大な損害を与えた。この罪は、決して軽くない」
グルッペンは一瞬、言葉を切った。コネシマが怒りに満ちた目で二人を睨みつけている。
コネシマ「グルッペン! そいつら、裏切り者やぞ! 家族のためやからって、許される話やないやろ!」
ゾム「……俺は、お前らの気持ちも分からんわけやないけどな」
グルッペンはコネシマを一瞥し、言葉を続けた。
グルッペン「しかし、彼らの裏切り行為は、私の計画通りに進んだ。彼らが最後に流した機密情報は、W国に大混乱をもたらし、W国は今、和平交渉に応じざるを得ない状況にある」
グルッペン「そして、彼らの家族は、W国の弱点ではない。彼らの家族こそが、W国を平和に導く鍵だ」
グルッペンは、静かに結論を告げた。
グルッペン「よって、私はお前たちを処罰しない。代わりに、新たな使命を与える」
グルッペン「ひとらんらん。オスマン」
グルッペン「お前たちは、今日この時をもって、WrWrd軍の全ての階級を剥奪される。そして、W国との間に和平協定を結ぶための、**『和解の使者』**として、W国へ旅立て」
全員が息を呑んだ。処罰ではなく、使者。
トントン「……彼らは、WrWrd軍の**『裏切り者』としてW国へ送り込まれます。彼らがW国総統に会うこと、そしてその過去が、人質となっていた彼らの家族を解放し、W国に和平を強いる最後の切り札**となります」
グルッペン「W国総統は、『裏切り者』として我々の機密を流したひとらんらんと、外交官一族のオスマンを、WrWrd軍の使者として受け入れざるを得ない。これが、血の協定と第五の罪の、最終的な贖罪だ」
オスマンとひとらんらんは、顔を見合わせた。彼らが家族を守るために犯した罪が、図らずも平和への道を切り開いたのだ。
オスマン「グルッペン……僕たちを、そこまで信じてくれたのかメウ」
ひとらんらん「僕たちの隠し事が、平和に繋がるなら……この身を捧げるよ」
彼らは、WrWrd軍の仲間たちに深く頭を下げた。コネシマは、最後まで不満そうだったが、ゾムに肩を叩かれ、何も言わなかった。
数日後。オスマンとひとらんらんは、W国との国境へと向かう馬車の中にいた。彼らは、WrWrd軍の仲間たちに託された、W国との和平協定の最終草案を抱えていた。
彼らが最後に見た、WrWrd軍基地の景色。それは、彼らがスパイとして潜入し、仲間として愛し、裏切り者として去ることになった、過去の場所だった。
オスマン「これからが、僕たちの本当の戦いメウ」
ひとらんらん「そうだね。今度は、家族と、この世界を平和にするための戦いだ」
二人の姿は、やがて国境線の霧の中に消えていった。