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2件
ふたりの今後の展開が読めないですね〜気になります。 続きを楽しみに待ちます。
「…っ……」
自分の痛みを差し置いて、俺に好きだという若井の懐の深さに、胸がぎゅぅっとなる
俺の心に白いインクがポタポタっと落ちて、さっきよりもっとごめんねの気持ちが、確かに広がっていった
……なのに、
同時に、自分とは対象的に、相手を思いやる行動を取れる若井の眩しさが、俺の心に黒いインクをポタっと落として広がった
“俺の事が好き”
嬉しいし、若井の言葉を信用出来る。今が、一番大切。
…だけど、 やっぱり、理由は言えないんだね
……俺にするのと同じように、
他の人を愛して、 こんな幸せな気持ちにした…?
……若井もそんな気持ちになった…?
要は、情けなくて醜い、俺のただの嫉妬だった
どうしようもない事なのはわかっているのに、可愛いく嫉妬することも、ただ黙って受け入れることも出来なかった自分の未熟さに嫌になる
でも、若井との恋人の時間が幸せであればある程、今は悲しかった
素直な若井への嫉妬と、愛された誰かへの嫉妬と、自分への嫌悪感。
黒いインクが滴って、俺の心に注ぎ込まれた
“そんな言葉で誤魔化されない”
強く自分を制していないと、また口が動きそうだった
ごめんね、若井。
…でも、今は……無性にやるせなくて、無性にイライラする__。
若井は、それ以上何も言わなかった
ごめんねって素直には言えなくて、
「戻る。」とだけ告げた
全く信用出来ない自分自身がもっと若井を傷つける前に、もっと情けなさを露呈する前に、静かに服を手に取って、部屋を後にした
_____……
切り替えるためにシャワーを浴びながら、せっかくの若井との時間を自らぶち壊して、若井を傷つけた自分にも腹が立って、なんでこんな事になった?と考える
多分、若井との甘い時間に当てられて、無意識にだけど、”若井なら自分を満足させるような説明を言ってくれる”などと、 どこかで期待していたから、こんな質問したんだと思った
“誰か他に…”なんて、”ほら、否定してよ”って言ってるようなもので、若井の愛情にあぐらをかいたような、若井の気持ちを無視した自分の言動に情けなくなった
部屋に戻り、まだ黒い感情に苛まれながらも、パソコンの前に座り、作業をはじめる
どんなに自分の感情が荒ぶれていようとも、例え気分が乗らなかったとしても、関係なく、時間は限られていて期限はやってくるし、手は抜きたくないし、どうしても向き合わなければいけなかった
こんな状態なのにもかかわらず、若井と拗れてしまった状況と先程の煮詰まった自分とは対象的に、作業は捗っていく皮肉
結局、こう言う”美しくない感情”も、尊い感情と共に自分の確かな原動力となっている皮肉に、今は失笑した
こういう感情があるから、人は幸せを幸せと感じられるのだからと理屈ではわかっていて、”だからこそ愛そう”と暗示をかけるように思うようにしていても、いざ喰らうと心底嫌になる
今まで何度も何度も繰り返し感じてきたことだけど、嫉妬や情けなさに限らなかったとしても、いざ自分の中に”美しくない感情”が広がると、いつまでも慣れる事は決してなくて、苦しかった
“出来るだけ素直で優しくありたい”と普段から意識的に努力していても、自分が思うようにはなかなか出来ない自分は、こうして詞を書くことで、自分の感情を昇華しているんだと、また実感した
こうやって、自分自身を励ましているんだと思った