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『お呪い』
静かだった。
とても、静かだったはずだった。
音も、光も、人の気配も、全部、ただ通り過ぎていくだけで。
何も感じないふりが、上手くなっていった。
笑い方も、頷き方も、わざとらしくならないように調整して、
普通の仮面をつけたまま、誰にも気づかれないように呼吸をしていた。
そうしていれば、きっと、大丈夫だと思ってたんだ。
――でも、それが間違いだった。
俺は、最初からもう壊れていた。
ずっと前に、何かが崩れていたのに、それを認めないようにしてただけだった。
感情はあった。
怒りも、嫌悪も、嫉妬も、悔しさも――
全部ちゃんと、ここにあったのに。
でも、それを見せたら終わりだと思ってた。
誰かに気づかれたら、自分が自分じゃなくなる気がして、
何も感じない“フリ”をするしかなかった。
「大丈夫」
それが、俺にとってのお呪いだった。
「俺は平気だ」
「俺は普通だ」
「俺は笑っていられる」
何百回も、そう言い聞かせて。
胸の奥にある濁った感情に、蓋をして。
そうやって過ごす毎日は、まるで永遠の拘束だった。
でも、ある日、その呪いがふっとほどけた。
たった一つの言葉で。
たった一つの沈黙で。
誰かの表情ひとつで。
そしたらもう、止まらなかった。
手が震えて、喉が焼けるほど叫びたくて、
眠れないまま夜が明けて、
自分の中の「何か」が、確実に“こっち”に来てるのがわかった。
俺は、狂ってる。
とっくに、ずっと前から。
それにようやく気づけた今が、いちばん正気じゃないのかもしれない。
でも――
それを知られたくない。
まだ「普通」の顔をしていたい。
誰にも気づかれずに、静かに沈んでいきたい。
声もなく、助けも呼ばず、心の底でゆっくりと腐っていく。
それが俺にとって、いちばん楽な“死に方”なんだと思う。
だ から今日も、何食わぬ顔で生きてる。
仮面を貼り付けたまま。
心の中で、「お呪い」が解けたまま。
壊れてることを、壊れたまま、
誰にも悟らせずに――
――静かに、息をしている。
―END―
いるまくん多すぎますね…🥲︎
自分の好きな雰囲気がいるまくんに合いすぎてるんです…許してください…