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おかめside
早朝、俺と般若、そして狐は、緋乃江先生を先頭に、とある森を歩いていた。
教師「…この辺りでよろしいですか?」
狐「はい、もう少し進めば、母と私の住処があります」
珍しく長ズボンを履いた緋乃江先生は、足場の悪いはずの獣道をさっさと歩いていった。
女性には失礼だけど、本当に年を感じないことが不思議なお方だ。
狐「…ここです、ここが私たちの家です」
狐に案内された家は、山壁に自然にできた洞窟を住みやすくしたようなものだった。
入り口は綺麗に整備されていて、神聖な妖の気配が滲み出ているのを肌で感じる。
?「…おや、人間の匂いがすると思うたら」
ほんの一瞬だけ目を離した洞窟から聞こえた声に振り返ると、いつの間にか女性が佇んでいた。
かなり若々しい外見だけど、顔立ちや耳の形と色合いがどことなく狐の面影がある。
狐「母さん、もう歩いて大丈夫なのですか?」
狐母「ああ、まだ杖を手放せんがな。一晩も家を空けてどうしたんだ、我が子」
狐は、ふわふわの耳をぺたんと下げて、申し訳なさそうに母親を見ている。
狐「…その、魔物に襲われたところを助けられて」
狐母「…魔物、か」
狐「はい、火を扱う熊に…彼らがいなかったら今頃、死んでました」
狐母「そうか」
今度は俺たちを見て、滑るように近づいてきた。
足を怪我していると聞いたけど、この速さで近づかれると、そんなこと忘れてしまいそうだ。
般若「うわっ?!いつの間に」
狐母「我が子を救ってくれて感謝するぞ」
おかめ「いえ、彼を放っておけなかっただけですよ」
狐母「ふむ、そうか…」
狐のお母さんは少し考える素振りをした後、緋乃江先生に顔を向けた。
狐母「うぬが先生とやらで間違いないな」
教師「え…えぇ、そうですが」
先生が驚いて言葉を詰まらせたのは初めて見た。
すると狐のお母さんは微笑んだ。
狐母「我が子を生徒という者として迎えてはくれぬか?」
狐「えっ?!」
狐は驚愕して母親と先生に目を向けた。
狐「母さん!良いんですか?!」
狐母「我が子よ、我々にとってうぬの年は赤子同然だが、そろそろ人間と同じように時を過ごすのも良い経験だと思わぬか?」
狐「し、しかし…」
狐母「案ずるな、うぬの好きなように過ごせば良い」
狐「…そこまで母さんに言われるなら、私、学校へ行きたいです」
カゴメside
狐「…ということですので、皆様、宜しくお願いします」
彼は、深々と頭を下げて挨拶をした。
当然、学組の生徒たちはざわつき、仲の良い隣同士で耳打ちをし合う者もいれば、半妖を初めて見たと呟く者、中には顔が整ってると歓喜した人もいる。
私が生まれ育った村ではそこまで珍しいことではなかったが、世間的には稀なことなのだと改めて知った。
教師「…では、貴方は今日からこの学校の生徒です。そこの空いている席に座りなさい」
狐「はい」
狐は先生に指し示された空席、阿形くんの隣に座った。
阿形「おはよーきっつん!隣同士仲良くしよーね!」
狐「はい阿形くん、よろしくお願いします」