テラーノベル
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遥
観測者l!!@今週投稿❌かも
ーー人は生まれながらにして平等である。
そう言葉を遺していった人々は、一体どれだけ幸福な人生を送ってきたのだろうか。
ーー綺麗だな…。
冷たくも少し気持ちのいい風を味わい、彼はただ立ち尽くす。特別な日でもなければ、何かが起こるわけでもない。ただ立ち尽くす。静寂の中、何かを覚悟しているよう、あるいは何かを待っているかのように。
ーーもう、全部終わりにしよう。
冷汗で濡れていた手の力を緩めると、手のひらに冷たい風が当たり、彼はその感覚を強く記憶する。それは、『冷たい』というよりも『生きている』という感覚に近かった。
時間が経つにつれ、風が強く吹き始める。それと共に彼は歯を食いしばり、再び手を強く握った。すると、彼の足元に一滴の液体が落ちた。彼はそれを見て、ようやく頬の暖かい感覚に気が付く。
ーー彼は泣いていた。
そう自分で気づいた頃には既に、一滴、二滴と次々に涙がこぼれ落ちていた。
涙は理性で抑えにくいと聞くが、全くその通りだ。彼は必死にこぼれ落ちる涙を止めようと、深呼吸をする。しかしその努力も虚しく、彼は再び涙を流すほか無かった。
背後から階段を駆け上がる音がする。誰かが来る。そしておそらく、その誰かは自分を探しているのだろう。
誰かは分からない。なのにその顔を拝んでやろうとは思わなかった。もはやどうでもいい。
揺れる視界をどうにか抑え、彼は虚ろな目で下を見つめる。彼が経つのは高層ビルの屋上。彼は震える足を一歩前に出す。
ーー来世は、幸せにしてください。
そう願い、彼ーー籠咲 龍斗《かごさき りゅうと》は次の瞬間、高層ビルの屋上から身を投げたのであった。
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