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(……こうなったら仕方がない。僕が行動を起こすべきなんだろう。よし!)


ヨークスフィルンにやってきて4日目の昼前。

今日は海に行く為に、すっかり慣れた様子で部屋で水着姿になったアリエッタには、心に決めた事があった。


「ぴあーにゃ」

「ひっ!?」


今日は一緒に海に行くようにとネフテリアに説得されている最中のピアーニャに、後ろから声をかけた。ピアーニャ用の水着を持って。

2日前に可愛く改造していたピアーニャの水着だったが、ピアーニャは宿に怒られて海へ出られなかった。そして昨日は街に出て買い物である。

なんとか運良く可愛いお子様水着を回避していたが、ついにアリエッタがしびれを切らして動き出したのだ。


「よしアリエッタちゃん。思いっきりやっちゃって」

「おそろしいメイレイするな! つうじてないけどコワイわ!」


こうなると大人達も全員ノリノリになる。


「ささ、ピアーニャちゃん脱ぎ脱ぎしましょうねー」

「早くするのよピアーニャちゃん」

「アリエッタ、やっちゃうし」

「だ、大丈む゛ふっ…ですよ、ピアーニャちゃ……ふっふふひひ」

「パルミラおまえ! あとでおぼえとけよ!」


既にピアーニャを包囲して、アリエッタを応援中。非力な幼女(?)に逃げ道はもはや無い。出口も、笑いを堪える護衛達によって防がれている。

追い詰められたピアーニャに、じりじりとにじり寄るアリエッタだが、ピアーニャが嫌がっている事には気づいている。


(小さな子を怖がらせないようにするには……やさしく、やさしくだ)


小さな水玉ドット柄水着を片手に持ち、もう片方の手でピアーニャの頭を撫で、その緊張を解そうとし始めた。


「よしよし」

「うぅ……かんべんしてくれぇ」

「よしよし」(うん、今の僕はお姉ちゃん! よーしちゃんと成長してるぞ!)


……間違いなく退行している。

普通の子供なら多少なりとも落ち着き、言う事を聞くようになったりするのだが、ピアーニャはれっきとした大人なのだ。ニヤニヤしながら見下ろす全員の前で撫でられて、感じるのは羞恥と屈辱である。


「ぴあーにゃ、みずぎ」(さぁ着せてあげるからね)

「ぐっ……」


ついにその時がやってきてしまった。

小さな妹分を着替えさせようとする『お姉ちゃん』の目に、邪な気持ちはみじんも無い。その姿は、ただ着替えの世話を頑張ろうとする1人の女の子である。

そんな純粋な目に圧され、ピアーニャはなすがままにされるのだった。ちょっと泣きそうになりながら。


「あぁ……なんて尊い…可愛い……はぁはぁ」


みんながニヤニヤと見守る中、リリの感想だけが違っていた。水着姿でクネクネしているせいで、かなり妖しい。

そしてついに強制的な着替えが終わり、そこには可愛くなった水着を着たリージョンシーカー総長の姿があった。


『かわいい~~~!!』

「うるさーい!」

(おぉ。照れちゃって可愛いなぁ)


意地悪な大人達とは違い、純粋に可愛いと思っているアリエッタは、満面の笑顔で頭を撫でる。しかも、


「かわ…いい。ぴあーにゃ、かわいい」

「うぐ……」(そんなコトバおぼえんでくれ!)


アリエッタは「かわいい」を覚えた。


それはピアーニャの言われたくない言葉なのだ。子供の純粋な笑顔で言われてしまっては、流石に反撃する事も出来ない。ピアーニャは愛想笑いの後、全てを諦めたような目になり、アリエッタに手を繋がれて海に出るしかないのだった。




波打ち際ではしゃぐアリエッタとミューゼ、そして無理矢理はしゃがされるピアーニャ。

そんな楽しそうな光景を見ながら、ラスィーテ出身の3人は王子ディランを一生懸命に埋めていた。


「なぜだ!?」

「あまりアリエッタを見られると、可哀想だし」

「変態の目で見られて、汚れたらどうするのよ」

「すみません。同意見ですので……」

「そう言いながらっ、ツーファンが! 一番必死に! 埋めようとしてくるっではないか!」


前科と自覚があるので、変態という所は否定していない。しかし自分の側仕えに埋められるのは納得していないのか、人1人が縦に収まる深い穴で、必死に砂を押しのけ抵抗を続けている。


「申し訳ございません申し訳ございません! 手が滑り続けているんです!」

「滑り続けるってなんだあああ!! 謝りながらペースアップするなあっ!」


あるじに対し無礼極まりないツーファンになんとか手を伸ばそうとしているが、パフィとクリムが砂をかけて阻止している。しかもそれだけでは無い。


「パルミラ! いい加減にしてくれ!」

「駄目です! アリエッタちゃんの身の安全は守らせていただきます!」


なんと地中したからパルミラが引きずり込み、ディランを登らせないようにしているのだ。休憩中は徹底的に、アリエッタへの危険人物を近づけないようにするつもりのようだ。


「うおおお!! 負けてたまるかあああ!!」

「させません!」

「とっととくたばるしぃぃぃ!!」

「不敬っ! ふけーだあああおぎゃああああ!!」


王子の存在が王妃の目の前で砂の中に完全隠蔽されかけている頃、ピアーニャもまた心労と戦い続けていた。


「でやー!」

「うわーこのーやったなー」(いつになったらカイホウされるのだ……)

(うんうん、ピアーニャも楽しそうだ)


波打ち際で波と戯れる少女達。水をかけ合い、浅瀬にいる魚や貝と戯れ、そしてミューゼに見てもらいながら少し泳いでみる。

ピアーニャが泳げるとは思っていないアリエッタは、しっかりと手を引いて、やさしく導いている。人生経験豊富なピアーニャはもちろん泳げるが、純粋な笑顔に当てられて素直に従っているのだ。


(おのれミューゼオラ……なぜとめてくれぬのだ……)

「ぴあーにゃ、だいじょうぶ?」

「だ、だいじょうぶだいじょうぶ」

(そろそろ休憩したほうがいいかな? 疲れてるっぽいし)


ある意味疲れているが、だいたいアリエッタのせいである。


「な、なぁミューゼオラ……」

「なぁに? ピアーニャちゃん」

「ピアーニャちゃんいうな。そろそろ昼だろう?」

「そうですね。アリエッタ、ごはんの時間よー」

「ごはん!」(よし、ピアーニャ疲れただろうし、食べさせてあげよう!)

「ふぅ……ようやく休めるな……」


結局、休憩でもアリエッタに構い倒され、全然休憩にならないピアーニャ。容赦ない食事を終え、さらに心労を蓄えた所で、食後のお昼寝タイムとなった。というより、疲れ果てて寝てしまった。

そんなピアーニャの夢の中では……


『ピアーニャ、よしよし』

『……アリエッタ、おまえ……』

『もう、お姉ちゃんに「おまえ」なんて、イケナイ子! ほら、「おねえちゃん」って呼んでー』


アリエッタの世話が継続していた。しかもピアーニャの夢の中であるせいで、ピアーニャのイメージ通りの言葉を喋りながら、お姉ちゃんとして君臨している。


『いや、まってくれ! どういうコトだ!?』

『なーに誤魔化そうとしてるのー? そんな悪い子にはねー、こちょこちょこちょ~♪』

『うはははは! やめろぉっ!』

『やーだ。反省するまで離さないー』

『だれかたすけてくれえええ!!』

『うふふ。アリエッタはちゃ~んと知ってるよ。ピアーニャが本当は甘えん坊さんだってこと。これからも寂しくないように、一緒におねんねしてあげるからね♡』

『いやだ、いやだああああ! はなせええええ!』

『そういえば、さっきパフィと一緒にお菓子つくったんだよ。こっちおいで~』


ピアーニャにとってはまさに悪夢。言葉は分かるが話の通じないアリエッタに翻弄され、現実と同じように世話をされてしまうのだった。


「う~ん……ううううう……ひぅっ」

「なんか総長うなされてるし」

「きっと一緒に寝てるアリエッタちゃんの夢でも見てるんでしょ」


それでも心配されるという事は無く、アリエッタと手を繋いだ状態にされたまま、のんびりと見守られている。

夢見がとことん悪そうなピアーニャの様子を眺めていたフレアが、思い出したように口を開いた。


「そういえば、貴女達はドルネフィラーに行ったのでしたね。内部の話は聞きましたが、その外見はどんな感じでした?」

「え? ああ、紫色の物体というか、球の半分みたいな形でしたね」

「初めて見た時はいきなり大きくなって、辺りを飲みこんでいきました」


ネフテリアとミューゼが、ドルネフィラーを見た事が無いフレアの為に、思い出しながらその外見を語っていく。

話を聞いていたフレアは、話を聞いて、なるほどといった感じで頷いた。


「ふむふむ。つまり、そんな感じかしら?」


フレアが指差した先には、ネフテリアの隣で空中に浮かぶ、人の頭程の大きさの、紫色のマーブル模様の球体があった。


「あ、はい。丁度こんな感じですね。これに入るとドルネフィラーに行けるようです」

「そうそうこんな感…………えっ!?」


ネフテリアが二度見した瞬間、球体が動いた。猛スピードでネフテリアの顔へ一直線に向かって。

あまりにも急だった為、ネフテリアは動く事が出来ず……頭に球体を受け、倒れた。

からふるシーカーズ

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