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_中也視点_
(どこにあんだよ、)
スマホと睨み合いっ子中の中也。地図通りに道を歩き、黙々と屋敷を目指していた。勿論前などまともに見ているはずもなく、道行く人に度々ぶつかっていた。その時、顔面から誰かの背中にぶつかった。
『ぶふッ!!??』
顔面を手で覆い、しゃがみ込んで痛みに悶えた。そして、がばっと顔を上げ、涙目でぶつかった人物を見上げた。
『手前ェどこ見てんだよッ!!』
(いってェ゙、、、んだ此奴コンクリート壁かよッ、)
自分が言える台詞なのだろうか。そんなこと中也は気にしていなかった。そして、背の高い人物はゆっくりと中也の方に振り返った。
『これは失礼。怪我はないかい?』
ふわっとした茶髪に、どこか落ち着いたような雰囲気を纏った高身長イケメン。その美貌はとても良く、通行人の女性たちはちらちらとこちらを見ていた。そんな視線は気にせず、そっと背を屈めて中也に手を差し伸べた。
『立てるかい?』
『チッ、いらねェよそんな手』
中也は差し伸べられた手を乱暴に振り払い、自力で立ち上がった。鼻の先と額が赤いのは本人だけが気づいていないようで。ふんっと鼻を鳴らし、見下すように顎を少し上に上げた。身長差的に見下せていないが。
『俺ァは忙しいんだよ。手前ェに構ってる暇はこれっぽっちもねェ』
(早く行かねェと第一印象最悪になっちまう)
そう言い、すたすたと歩き始めた。自分のブーメラン発言なんぞ気にしていない様子で。
『あ、待ち給え。これ、君のスマホじゃないかい?』
ぶつかった拍子に中也のスマホが地面に落ちていた。太宰はそれを拾い上げ、中也へと近づく。けれどもちらりと画面が目に入り、ぴたりと足が止まった。
『、、、君、この屋敷に向かっているのかい?』
『あァ?だったらなんだよ。ていうか人のスマホ返せ』
ひったくるように自分のスマホを回収した。よほど自分のスマホの画面を見られるのが嫌なのだろう。
『そこ、私知っているよ。案内してあげようか?』
『!、マジか!?案内してくれ!!』
その言葉にぴくりと反応し、ぱっと顔を明るくさせた。
(ラッキー、!!これで遅れずに済むぜ。まァこれでぶつかった件は帳消しにしてやるか)
『では、私に着いてき給え』
悠々と、長細い足で歩き出した。その後を、中也は少し早足で追った。傍から見れば兄弟に見えなくもない光景である。果たして中也は、無事に屋敷に着くことができるのか。