テラーノベル
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研修期間を終えた目黒には、正式に死神としての道具が支給された。
黒いスーツ。
そして、大きな鎌。
着替えて阿部の前に出ると、阿部は目黒を上から下まで眺めた。
「……似合ってる。」
「本当?」
「うん。めめ、黒似合うから。」
「あべちゃんも黒いドレス似合ってるよ。」
「それはもう何回も聞いた。」
阿部は笑ってから、目黒へ手を差し出した。
「めめに、来てほしいところがあるの。」
「どこ?」
「いいから来て。」
その手を取ると。
阿部は嬉しそうに目黒の手を引いて歩き始めた。
___________
歩きながら阿部が話す。
「俺がやってた死神業界の管理、今は別の人に引き継いだの。」
「そうなの?」
「会社経営がすっごく得意な死神が見つかって。俺より向いてる。」
業務改善も。
人員配置も。
新人の教育制度も。
阿部が作った仕組みを引き継ぎながら、さらに良くしてくれているらしい。
「じゃあ、あべちゃんは?」
「それが問題で。」
阿部は困ったように笑った。
「新人研修担当なんだけど……新人、滅多に来ないじゃん?」
「ああ……。」
「実はめめが初めての新人研修だった。」
「だから、暇なの。」
「死神業界をホワイトにしすぎた?」
「それもあるかも。」
二人で笑う。
「それでね。」
阿部が目黒の手を握り直した。
「俺、新しいことしたいなって。」
「新しいこと?」
「うん。」
そして。
一つの扉の前で止まった。
「ここ。」
阿部が扉を開ける。
目黒は。
中を見た瞬間、動けなくなった。
「……あべちゃん。」
木のカウンター。
コーヒーの香り。
並んだカップ。
小さなメニュー。
そこは。
二人が初めて出会った、あのコーヒー店によく似ていた。
「……作ったの?」
「うん。」
阿部が少し照れたように笑う。
「ここで新人を待とうと思って。」
いつ来るか分からない新人を待ちながら。
仕事を終えた死神が立ち寄れる場所にする。
そして。
「彷徨ってる人にも、来てもらいたい。」
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#⛄️
kaede🍁
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「幽霊?」
「うん。」
天国へ行く決心はまだできない。
でも。
一人で彷徨い続けるのは寂しい。
そんな魂が。
ほんの少し休める場所。
「無理に説得するんじゃなくて、コーヒー飲んで、話して。」
阿部がカウンターを撫でる。
「死神も、彷徨ってる人も、新人も。」
「ここに来た時くらい、ちょっとだけ休んでほしい。」
目黒は。
阿部らしいと思った。
死んだ時に。
優しくしてもらえなかったから。
誰かには優しくしたいと思った人。
「いいね。」
「ほんと?」
「うん。」
阿部が嬉しそうに笑った。
「じゃあ。」
そう言って。
阿部はカウンターの中へ入った。
「そこ立って。」
「俺?」
「うん。」
目黒は言われた通り、カウンターの前に立つ。
すると。
阿部が笑顔になった。
その表情を見た瞬間。
目黒の胸が苦しくなった。
「いらっしゃいませ。」
「……。」
「ご注文、お決まりですか?」
あの日と。
同じだった。
偶然入ったコーヒー店。
カウンターの向こう。
笑っていた阿部。
『おすすめって、ありますか?』
目黒は。
あの日と同じ言葉を口にした。
「……おすすめ、ありますか?」
阿部の目が潤む。
それでも笑って。
「今日ちょっと寒いので……カフェラテとか、どうですか?」
そこで。
阿部の声が震えた。
「……。」
「……あべちゃん。」
「ごめん……。」
阿部が涙を拭う。
「俺がやったのに……。」
目黒の目からも。
涙が溢れていた。
「あの日と同じだね。」
「うん……。」
あの日。
二人はまだ。
お互いの名前すら知らなかった。
目黒は一目惚れして。
何度も店へ通って。
阿部も少しずつ目黒を覚えて。
恋をして。
一緒に暮らして。
ずっと続くと思っていた。
一度は。
全部終わってしまった。
それなのに。
今また。
二人は同じ場所にいる。
___________
阿部はカウンターから出ると。
目黒の隣へ来た。
「めめ。」
「ん?」
「ここ、手伝ってくれない?」
「俺が?」
「うん。」
「死神の仕事もあるよ?」
「空いてる時でいいの。」
阿部は笑う。
「俺一人じゃ大変かもしれないし。」
「……。」
「めめにも一緒にいてほしい。」
目黒は少しだけ考えるふりをして。
阿部の手を握った。
「いいよ。」
「ほんと?」
「うん。」
そして笑う。
「俺、あべちゃんの助手だからね。」
阿部も笑った。
「じゃあ決まり。」
二人が出会った場所は。
小さなコーヒー店だった。
一杯のカフェラテから始まって。
恋をした。
一緒に暮らした。
一度は死によって引き離された。
それでも。
二人はまた巡り会った。
今度は。
死を迎えた人が。
少しだけ心を休めるためのコーヒー店で。
カウンターには阿部。
その隣には目黒。
「めめ。」
「何?」
「明日から開店ね。」
「うん。」
「ちゃんと働いてよ?」
「もちろん。」
「いらっしゃいませって言える?」
「それくらい言えるよ。」
「じゃあ練習。」
阿部が客のふりをしてカウンターの前に立つ。
目黒は少し笑って。
「いらっしゃいませ。」
「カフェラテください。」
「おすすめ聞かないの?」
「それ、めめの台詞でしょ。」
二人の笑い声が。
まだ誰もいない店に響いた。
いつかここにも。
悲しい顔をした誰かがやって来る。
その時は。
温かいコーヒーを淹れて。
ゆっくり話を聞こう。
二人の恋が始まった時と同じように。
今度は一杯のコーヒーから、誰かの心を救うために。
コメント
5件
この後メンバーとの鑑賞会あるのかな?何時もは🖤にキツイ言い方する💙もボロ泣きして❤️に慰められるのかな? このストーリーを見て泣かない理由がない😤

今晩は⭐️ 一気に読みました。 部屋といいカフェといい再現すごい👍 肩書き死神だけど 普通に暮らしてる感じだな。来店する人が特殊なだけで そりゃ皆んな素直に受け入れられないよな。 寄り添い優しく聞いてくれる人素敵💓😄
みら様の💚らしいですね。思いやりの心を死神になっても忘れない…死神適職なのかも☺️✨️