彼の入院は大事には至らずに、やがて退院が知らされた。そうして、ずっと待ち望んでいた連絡が私の元に入る──。
「しばらく会えずに、悪かったな」
「いいえ、そんなことは、ちっとも。元気になられて、本当によかったです」
「ありがとう……。……早く体を治して、君に会いたかった」
通話越しに告げられた一言に、手放しにドキッとさせられてしまう。
「それで今日は、久しぶりに会う約束をしようかと思っていたんだ。今週の土曜は空いているだろうか?」
「はい、もちろん!」
即答した私に、彼が電話の向こうでフッと笑う。
「よかった。では、その日は私の家に招きたいんだが、どうだろうか?」
「えっ、貴仁さんの御宅に?」
急な自宅へのお誘いに、どぎまぎとしてしまう。
「ああこないだは君の家に行かせてもらったので、今度はお礼に私の家に招待をと思ってな」
「それで、ですか」
彼のそんな細やかな心づかいにうろたえていた気持ちが一瞬で引っ込むと、代わりに嬉しみが込み上げておのずと心が浮き立った。
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