(ケーキバース)
side.Kt
僕はフォーク性だ。そう気づいたのは2ヶ月ほど前。
「あれ?スポドリなのに味しない……」
「けちゃ?どうしたの?」
「ううん!!なんでもないよ!!」
病気かもしれないと思って症状を調べてみた結果、マッチしたのが”ケーキバース”。普通の人間…”ノーマル”のほか、”ケーキ”や”フォーク”の性を持つ人間がいるらしい。僕はフォーク特有の”味覚を感じなくなる”という自覚症状が遅く、自分がフォークだということに気づかなかった。味覚を取り戻すためにはケーキ性の人と番になる必要がある。けれどそんな話は無理に近い。そもそも僕の周りにケーキ性の人がいないし番となるとこの先も一生を共に過ごすことになる。そうなると配信やグループに大きな支障を来してしまう。
「これから先、一生味のない生活か……」
自嘲気味に笑う。味のない生活もフォーク性であることも隠さねばならないと。そう思っていた。
数日後、会議があってみんな集まっていた。いつもと同じように滞りなく終わった会議。
「ねぇけちゃ、一旦外出ない?」
「いいけど……」
2人で話すならみんながいる場所でもいいのになぜわざわざ外に連れ出したのだろう。
「なんで外に連れ出したの?」
「単刀直入に言うわ。けちゃ、お前フォークだろ」
「え、な、なんでそう思ったの…?」
後ろで握った手が震える。なんでバレたの……?
「前飯食った時何食っても反応が一緒だったから怪しいとは思ったんだよ。それにさっき否定しなかったろ?」
「…そう、だよ。まぜちの言う通り僕はフォーク」
「ほらな」
まぜちにバレてしまった。幻滅されたかもしれない。もうみんなと一緒にいられないかもしれない…。僕がフォークなばっかりに…。
「お願いだから、みんなには言わないで…」
「いいけど、1個条件がある」
条件?なにか分からないけど今の僕はなんでも飲んでしまうだろう。僕はまぜちの言葉を待った。
「俺と付き合うこと。そしたら黙っといてやる」
「…え?」
「俺さ、ずっと前からけちゃのこと好きだったんだ。俺はけちゃと付き合える、けちゃはフォークなことをばらされずに済む。win-winだろ?」
「そ、そうなの?え、てかまぜち僕のこと好きなの?!」
衝撃の告白に目が点になる。嬉しいけどいつからなのだろうか?というか付き合うのと番になるのは別なのかどうかが気になる。
「そうだぞ?俺ずっとアピールしてたんだけどなぁ…」
「えぇ、まじかぁ…」
「あと、ちなみに俺ケーキな。その気になれば番えるけど、どう?」
「っ……」
嬉しい気持ちと拒否したい気持ちがせめぎ合う。申し出は本当に嬉しいし条件は悪くない。でも、もしまぜちの気が変わってしまったら?だけど、味覚を取り戻せるなら……。僕はそっと口を開く。
「僕は…まぜちがその気なら番うよ。それがお遊びなら受け入れない」
「遊びな訳ねぇだろ。なんなら俺の心臓の音聞くか?バックバクだぞ?」
まぜちに腕を掴まれて心臓のあたりに押し当てられる。確かに速く鼓動を打っている。それに釣られるように僕の鼓動も速くなる。吊り橋効果ではないが心臓がドクドクと波打つ。まるで本能が”まぜちと番え”と告げているようだ。
「なら…よろしくお願いします」
「受け入れてくれて、ありがとう」
そういうや否や、まぜちにキスされる。初めてのキスにしては長く、息が苦しくなる。呼吸のために口を開くとまぜちの舌が入り込んでくる。頭がグラグラする程甘いチョコの味。依存性の高い砂糖のような甘い味。昔は媚薬として使われていたのが納得出来てしまう程に僕の体内を熱くする。
長いキスの後、口を離したまぜちの顔は獣のように美しかった。
「俺の味、美味いか?」
「…甘い、甘すぎるよぉ………」
「これがケーキの味。番の契約も済んだからちゃんと味するぞ」
そう言ったまぜちは小さな鏡を手渡してきた。首筋にくっきり浮かんだ紫のMの痣。これがきっと番の印なのだろう。まぜちの首筋にもピンクのKの痣があった。
「これから先もよろしくな」
「…うん、もちろん」
この後、色んな体液(ご想像にお任せします)を与えられて頭がおかしくなりかけたのは僕だけの内緒。
脳まで溶かす甘い甘い味。まぜちの味に僕は日々堕ちていく。
ハッピーバレンタインということでケーキバースなまぜけちゃです。自己解釈を多分に盛り込んでいるので本当のケーキバースと違うところが絶対にありますがご了承ください。
フォーク受けはいいぞ。
コメント
3件
ケーキバース大好きなのでめっちゃ嬉しいです!
最高ー!!!