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うっす
(夜・万事屋。窓の外では秋桜が風に揺れている。)
新八「彩音さん、今日はもう休んだ方がいいですよ。」
彩音「わかってる。……ちょっと、目が冴えちゃって。」
神楽「明日、団子作る約束あるアル!ちゃんと寝るヨ!」
銀時「……おう。寝とけ。」
(銀時、いつもの調子で飴玉をくわえながらも、どこか目が真剣だった。)
彩音「……おやすみ。」
(灯りが消える。部屋が月の光に包まれる。)
(夢の中・赤く染まる戦場)
彩音の足元には、紅葉ではなく血に染まった土。
手には、あの頃の刀。
彩音(夢)「……なんで、またここに。」
???(声)「逃げたつもりか?」
(背後に“過去の自分”が立っている。冷たい眼差しで彩音を見下ろしている。)
過去の彩音「刀を捨てた?笑わせるな。あの血を、この手を、何で清められる?」
彩音(夢)「もういい……私は──」
過去の彩音「弱くなったな。銀時と出会って、情に流された。」
彩音(夢)「それの何が悪い……!」
(その瞬間、夢の空気が歪み──)
銀時「──お前、どんな夢見てんだよ。」
(目の前に、銀時が立っていた。銀の髪が血の色に染まる風に揺れる。)
彩音(夢)「……なんでここに。」
銀時「知らねぇよ。気づいたらお前の夢に巻き込まれてた。」
過去の彩音「……邪魔をするな。こいつはここで終わる。」
(過去の彩音が刀を抜く。空気が張り詰める。)
銀時「はぁ……ったく夢の中でも面倒事かよ。」
彩音(夢)「逃げろ!巻き込みたくない!」
銀時「バカ言え。お前置いて逃げられるかよ。」
(銀時、木刀を構える。過去の彩音とぶつかる。)
木と刃のぶつかる音が夢の中に響く。
過去の彩音「こいつは足枷だ。情を持てば、また誰かを失うだけ。」
銀時「……それでも、俺は彩音の隣にいるって決めた。」
過去の彩音「そんな覚悟、何になる!」
銀時「“今”のお前が笑ってるなら、それで十分だろ。」
(銀時の木刀が、過去の彩音の刀を弾き飛ばす。)
彩音(夢)「……もういい。アタシがアタシを、終わらせる。」
(彩音が自らの夢の分身に近づき、刀をそっと握る。)
彩音(夢)「ありがとう、今まで。」
(静かに刀を地面に突き立て、光が溶けるように消えていく。)
(夢が終わり、朝。窓から陽の光が差し込む。)
彩音「……ッ!」(目を覚ます)
手首のブレスレットが、かすかに温かい。
銀時(枕元で居眠り)「……よかったな。戻ってきたか。」
彩音「……夢、見てた。」
銀時「知ってる。顔が泣いてるからな」
彩音「……見んなよ、バカ。」
銀時「心配したんだよ。」
(少し間)
彩音「……ありがと。」
銀時「礼はいい。その代わり──」
彩音「……代わり?」
銀時「団子三本な。あと俺の分も作っとけ。」
彩音「……ほんっとお前って、ロマンチックの“ろ”の字もねぇな。」
銀時「だって俺、団子で恋する男だから。」
彩音「……知らねぇよ。」(笑う)
(風が吹き、窓から紅葉が一枚舞い込む。)
銀時「……なぁ彩音。」
彩音「ん?」
銀時「夢の中でも、ちゃんと守ったからな。だからもう、現実では俺の隣にいろ。」
彩音「……わかった。」
(静かに笑って、朝の光の中で二人の影が重なる。)