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汚染区域整備課
世界の崩壊によって汚染された区域を住めるように整備するため結成された団体。
【主な業務】
・汚染区域の確認
・汚染区域周辺の空気の正常化
・住宅地の建設・管理
現在、実務班・指示班・資材班の三部隊が主力となって活動している。
ビニール袋の擦れる音だけが耳障りだった。
ベッドとクーラーボックス、机も椅子も無い。質素で最低限な住居。
業務の関係で家に帰る日なんて数少ない。長居する訳でも無いのだから、これくらいが丁度いい。
人気の少ないボロアパート。人の声はしない、足音もわたしのモノだけ。
ここだけが心の在り処だった。目当てを見つけた手は迷いなくそれを掴んで引き上げる。
無駄な味付けの無い砂糖菓子だ。軽く口に放り込む。
今の目標が生存することだとしたらこれは本当に不要なものだろう。
だがわたしの目標は敵を殺して報酬を得ることだ。積み重なるストレスを消すにはこれが手っ取り早い。
……それにしても。
「仕事を増やされると言うのは良い気がしませんね……」
最近は、自ら安全圏の外に出て自滅するような人間が増えた。
外に希望を見出したとか、生存者を探しにとか、馬鹿馬鹿しいと言う感想しか抱けない。
今生きていることのありがたみを、尊さを忘れたか。生きて帰ってくることを祈る家族がいることを忘れたか。
感情で動く人間の考えることはよくわからない。
加えて汚染区域の正常化を行う団体とやらが話題になっているらしい。残りの原因としてはそこだろうか。
安全圏の外でも生きていける術は作れる。そう言った酷く幼稚で側面を考えない誤解が無駄な死を引き起こしているのだ。
本当に理解ができない。
あぁ、そういえば。あの団体にはかつての友人が──
コンコン
菓子を漁る手が止まった。窓の方だ。
予定にない訪問者らしい。誰か……と言うのは…まぁ、大方見当がついている。
T-016 Nerve。仮名をネルと言っていた。
かつての友人の一人。
カーテンすら無い窓を開ける。外の風や騒音と共に小型の浮遊ロボットが転がり込んできた。
操縦者が必要な、例えるならばドローンだろうか。ネルが作り出した特性の連絡・監視用ロボットだ。
辺りを見渡すように機体を動かし、やがてこちらと目があった。
「あぁ……よかった、生きてるな。」
「失礼ですね。そんなすぐに死ぬほど軟弱ではありません。
それよりも許可を出していません。事前にアポを取ってから来てくださいと言っていますよね。」
「取る方法が無いんだ。仕方ないだろ……」
「なら外にいる時に話してください。」
「あんなアリの巣みたいな人混みの中からどうやって見つけろと?」
わざとらしい大きなため息が聞こえる。
迷惑をかけていると言う自覚は一応あるが、改善する気は無い。
本気で嫌ならすぐさま見限ればいいことだ。関係の継続を望んでいるのは他でも無い彼なのだから。
「それで?
何か用があるんでしょう。早く聞かせてください。」
「ジェスが呼んでるんだ。
『共同の仕事があるから直接話したい』ってな。」
「……………」
「おい、忘れてやるな。
Unit-3X7、お前同じ施設出身だよな!?」
「……あー…」
微かにとても騒がしい人型アンドロイドのことを思い出した。
ネルとタッグを組んでいた……ジェス、だったか。長らく会っていないから忘れていた。
「まぁ、そういうコトだから。
俺たちのいる場所は流石に覚えてるよな? じゃあこれで……」
「待ってください。もう行くんですか?
わたしの返答も待たずに?」
「お前どうせ三日後に行くとか言って今すぐには来ないだろ?」
「いえ、今から出発します。あなたと一緒に行きます。」
「はぁ? 珍しいな。
わかったわかった、案内と荷物持ちだな? だったらさっさと持って行くモノ決めろ。」
「菓子だけで充分です……」
「体壊すぞお前。」
呆れながらもふよふよと浮かぶ小型ロボットは一応、待ってくれるらしい。
彼らの本拠地は……いや、彼について行けばわかることか。
遠出用のリュックサックには目についた砂糖菓子を適当に放り込んでおいた。
これだけあれば生きていけるのは、私からしたら間違いでは無い。まずまず人間ではない彼らが心配する義理はないだろう。
「おい、鍵かけろよ。」
「どうせ漁れらたとしてめぼしい物は何もありません。
心配しなくても大丈夫です。」
「危機感の無いヤツだな本当に……」
わたしよりも高い位置、そして前方に浮かび上がる。
身軽で少し羨ましい……と思ったことは内緒だ。
それはそうと、行ってからしばらくは痛みで歩けなくなることを覚悟しておかないといけない。
仮であろうと人の体と言うのは酷く不便だ。