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しずく@病み×鬱
コメント
3件

特訓の成果が出て良かった 前回のことがあってしっかり乗り越えていることが伝わたと思います。 楽しみに待ってます!
第11話、一気に読んじゃいました!特訓の成果をしっかり発揮して、敵の対策を逆手に取る展開が本当に気持ちよかったです。特に、すちくんの「壊すだけじゃない」っていう新しい力、めちゃくちゃ痺れました。それぞれの成長が感じられて、笑顔になっちゃいました。第二章、始まったね…!
特訓期間が明け、シクフォニが挑む復帰初任務。
ターゲットは、先のニュース報道を受けてセキュリティを世界最高峰のものへと完全刷新した、巨大複合企業「ミライ・コーポレーション」の本社ビル最上階。
狙うは、全エネルギー問題に革命を起こすとされる、未知の光り輝く結晶『ステラ・コア』。
「……いるま、状況は?」
ビルから数キロ離れた潜伏先。インカムから、いつもの気怠げさは消え失せ、冷徹な殺気を孕んだなつの声が響く。
「最悪だ。正面、裏口、地下、すべてに以前の俺たちの能力を解析した『対能力者用』の防衛システムが導入されてる。
らんの声の周波数を相殺する音波相殺機、こさめの遮断を検知する位相ズレセンサー、すちの破壊を無効化する流動合金壁、みことの魅了を防ぐ精神防壁AI……」
モニターの警告灯を見つめながら、いるまがキーボードを叩く。その脳内では、特訓で限界突破させた
**『処理速度(バースト・モード)』**が、膨大な敵の対策データを瞬時に解析していた。
「……だが、それこそが狙いだ」
いるまの口元が、不敵に歪む。
「やつらは俺たちの『過去』に対策した。だが、今から見せるのは俺たちの『未来』だ。──全員、作戦開始!」
ミライ・コーポレーション本社ビル、最上階。
『ステラ・コア』が鎮座する保管室の前は、重武装した警備ロボットの軍勢と、精神防壁AIが守りを固めていた。
「侵入者感知。──全能力者、排除を開始」
AIの無機質な声と共に、警備ロボットが一斉に銃口を向ける。
「 exclusion(排除)? それ、こさめたちのセリフだよ!」
突如、天井のダクトから飛び出したこさめが、空中で両手を広げた。
その瞬間、彼の特殊能力──
**『音響操作・位相世界(サイレンス・ディメンション)』**が発動する。
これまでの音を消すだけの領域ではない。こさめは、空間そのものの音響特性を書き換え、AIが放つ音波相殺機やセンサーの「位相」を完璧にずらしてみせた。
敵の対策が、こさめの作り出した「存在しない位相空間」へと吸い込まれ、完全に無力化される。
「よし、こさめちゃんナイス! ──じゃあ、僕たちの『挨拶』、聴かせてあげるね!」
こさめの背後から飛び出したらんが、空中で大きく息を吸い込んだ。
彼が解き放ったのは、直進する声ではない。空間を無限に反射し、増幅し、複雑な網目のように絡み合う超高音波の迷宮──
『残響乱反射(エコー・マトリクス)』。
「な、ん……!? 音波が、あらゆる方向から……!」
AIの処理速度を遥かに超える、全方位からの残響の嵐。警備ロボットたちは音声入力がオーバーロードし、次々と回路が焼き切れてその場に膝をついた。
「ふん、機械相手ならこれくらいだな。……おい、次は俺の番だ」
らんとこさめが切り開いたルートを、なつが悠然と駆け抜ける。
保管室の扉の前に立ち塞がったのは、すちの破壊を無効化する『流動合金壁』。液体のように形を変え、どんな衝撃も吸収する最強の盾だ。
なつは壁を見つめ、低く、重圧の混じった声を響かせた。
これまでの「一言」の命令ではない。複数の異なる命令を脳内で同時に構築し、一瞬の狂いもなく対象へ叩き込む
**『多重絶対命令(マルチ・オーダー)』**。
「──『 凝 固(フリーズ) 』。そして『 砕 け ろ(クラッシュ) 』」
絶対命令の声が空間に刻まれた瞬間、流動合金壁は液体としての性質を失い、一瞬にして極低温の氷のようにカチカチに「凝固」した。そして、その次の瞬間、自らの重さに耐えきれず、合金の壁が音を立てて木っ端微塵に砕け散ったのだ。
「ん、サンキュー暇ちゃん。……じゃあ、最後は俺が貰っていくね」
砕け散った壁の向こう側。『ステラ・コア』が保管されているガラスケースへ向かって、すちが歩を進める。
ガラスケースには、みことの魅了を防ぐ『精神防壁AI』が搭載されており、生体反応を感知すると即座に結晶を地下深くへと転送する仕組みになっていた。
だが、すちは微笑んだまま、ガラスケースに静かに手を触れた。
彼の新しい技は、ただ粉々に「破壊」するのではない。対象の分子の振動数を極限まで緻密にコントロールし、対象の形を『再構築』する
**『共鳴変貌(メタモルフォーゼ)』**。
「壊すだけじゃ、芸がないもんね。……ん、これならみこちゃんにぴったり」
すちが一瞬だけ低くハミングのような声を響かせた瞬間、強固なガラスケースはサラサラとした「黄色の砂」へと姿を変え、床に崩れ落ちた。結晶を転送する暇さえ与えず、ケースそのものを無害な砂へと変えてみせたのだ。
床に落ちた、眩い光を放つ『ステラ・コア』。
それを、後ろから静かに歩み寄ったみことが、そっと手のひらですくい上げた。
「……うん、みんなお疲れ様。最高の連携だったね」
みことは、抱きかかえた『ステラ・コア』を大事そうに胸に当てると、保管室の中央に設置された、世界中に中継されているミライ・コーポレーションの緊急放送用カメラを見つめた。
アジトから特訓で限界突破させたいるまの『超感覚・並列思考』が、すべての敵の増援ルートを潰し、撤退経路を完璧に確保している。
みことは、いつもの王子様のような穏やかな微笑みを、監視カメラの向こう側にいる対策したと思い込んでいる全ての人々へ向けた。
だが、その瞳には、特訓で命を削って手に入れた、新しい力への絶対的な自信と、敵への冷徹なまでの挑戦の炎が宿っていた。
みことは、カメラに向かってそっと人差し指を口元に当て、蜂蜜のように甘く、しかし、世界のシステムを屈服させるほどに力強い歌声を、世界中に響かせた。
「──ねえ、ボクたちの『新しい力』、楽しんでくれた?」
彼の持つ『魅了(チャーム)』の力が、声を出さなくても全身から放たれる「オーラ」へと変換され、カメラを通して世界中の視聴者の心を一瞬にして奪っていく。
みことは、そのまま『ステラ・コア』を抱えて窓枠へと飛び移り、夜の帳が下りる街を見下ろしながら、不敵に微笑んだ。
「世界中のみんなへ、最後の警告だよ。……怪盗シクフォニは、そんなに対策できるほど甘くないから。──またね」
窓から飛び降りたみことを、下で待機していたなつのマシンが鮮やかに回収する。
ミライ・コーポレーションの緊急放送は、みことの圧倒的な魅了によってショートし、真っ暗な画面を映し出した。
特訓の成果を存分に発揮し、世界最高峰のセキュリティを鼻で笑って見せた6人。
怪盗たちの第二章は誰にもとめられない輝きと共に今まさに始まったのだーー。