玲央はゼノの研究所の廊下を静かに歩いていた。
(……次の通信のチャンスはいつになるかねぇ。)
ゼノの研究施設にはある程度の自由があったが、それでも監視の目は完全には消えない。特にジョエルが玲央を警戒しているのは明らかだった。
玲央は足を止め、静かに息をつく。
(ゼノにはバレずに、千空たちと再び連絡を取る。……そのためには、ここの通信設備をもっと詳しく知らないとねぇ。)
ちょうどそのとき、遠くからゼノの声が聞こえてきた。
「玲央、こちらへ来たまえ。」
玲央は一瞬、顔をしかめたが、すぐに表情を戻し、歩いていった。
研究室の扉を開けると、ゼノは実験台の前に立っていた。
「君の感覚が必要だ。手伝ってもらえるか?」
玲央は軽く肩をすくめた。
「ノってきたねぇ。」
ゼノは小さく笑った。
「実験は繊細だ。慎重にな。」
玲央はゼノの手元の機材を見る。
(……この装置、通信に使えたりしないかねぇ?)
チラッ
ふと、隣の機材を見ると通信機材が置いてあった。
カチッ、カチッ、カチッ
玲央が不敵な笑みを浮かべる
(もしかするとこいつは使えそうだ。)
玲央の計画は、少しずつ動き始めていた——。
⸻
千空たちは、玲央との次の通信に備えて準備を進めていた。
「問題は、玲央がどこにいるのか正確に把握できねぇことだな。」
クロムが地図を広げながらつぶやく。
ゲンは顎に手を当てる。
「でも、通信できるってことは、それなりの設備がある場所にいるはずだよねぇ?」
千空は頷いた。
「だな。つまり、ある程度発展した施設——おそらく何らかの研究所の近くか、あるいは内部にいる可能性が高い。」
スイカが不安そうに聞く。
「じゃあ、玲央お姉ちゃんは敵に捕まってるの?」
千空は短く答えた。
「……まだ分からねぇ。」
だが、玲央が自由に動けない状況であることは明らかだった。
「とにかく、次に通信が来たら、玲央のいる場所を特定する方法を探るぞ。」
クロムは気合を入れるように拳を握る。
「よし、玲央が帰れるように準備するぞ!」
千空は静かに、しかし確信を持って頷いた。
(玲央、次の通信のチャンスを逃すなよ。)
夜風が研究所の周りを吹き抜けた——。
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