テラーノベル
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今回文字数が9000超えてるんですけど…
楽屋の死角、秘密の温度
ライブ終わりの楽屋。
メンバーたちが着替えや片付けでバタバタと出入りする中、部屋の隅にある大きな機材ケースの影は、二人だけのシェルターになっていた。
「……めめ、お疲れ様。今日もかっこよかったよ」
阿部が優しく声をかけながら、目黒のうなじに触れる。
ステージの上ではあんなに堂々としていた目黒が、今は阿部の腕の中で、トロンとした熱を帯びた瞳で彼を見上げていた。
「阿部ちゃん……、もっとこっち来て」
自分から阿部の腰に腕を回し、首筋に顔を埋める。
大型犬が飼い主に甘えるような、無防備な姿。阿部の穏やかな香りに包まれると、張り詰めていた緊張がほどけて、どうしても甘えが止まらなくなる。
「ん、いいよ。……よしよし」
阿部がその大きな背中をゆっくりと撫でると、目黒は「ふふっ」と小さく鼻を鳴らして、さらに体を預けた。
「……阿部ちゃん、好き……」
「俺も大好きだよ、蓮」
静かな場所で交わされる、甘すぎる囁き。
目黒が満足げに目を細め、阿部の唇を求めて少しだけ顔を上げた、その時だった。
楽屋の隅でイチャついているところを、最年長の深澤とムードメーカーの佐久間、向井の3人にバッチリ見られてしまった二人。
「めめ、さっき『阿部ちゃん、もっとこっち来て』って言ってたよねぇ!?」
「言ってた!あの大型犬みたいな顔、録画してファンクラブ限定で流したいわ〜!」
佐久間と向井がニヤニヤしながら、顔を真っ赤にして固まっている目黒を囲む。
深澤も追い打ちをかけるように、肩を組んで耳元で囁いた。
「目黒ぉ、お前あんな声出すんだな? 阿部ちゃんも鼻の下伸びすぎ」
「……っ、もういいから! 準備して!」
目黒は耳まで火が出そうなほど赤くなり、阿部の背中に隠れて小さく丸まった。
その、普段のクールさからは想像もつかない「乙女」な反応が、阿部の独占欲をチリリと刺激する。
「みんな、それくらいにしてあげて。……めめが可愛すぎて、俺が困っちゃうから」
阿部がわざと爽やかな笑顔でそう言うと、「ヒューッ!」とさらに野次が飛ぶ。
目黒はもう限界で、阿部のシャツをぎゅっと握りしめたまま、一言も発せなくなってしまった。
ようやく帰宅し、玄関の鍵を閉めた瞬間のことだ。
さっきまで縮こまっていた目黒が、豹変したように阿部を壁に押し付けた。
「……阿部ちゃん、わざと言ったでしょ」
潤んだ瞳に、隠しきれない熱。
恥ずかしさでパンパンになった感情が、そのまま「欲」に変わっているのがわかる。
「だって、本当に可愛かったんだもん。……あんな顔、俺以外に見せたくなかったな」
阿部が低い声で囁きながら、目黒の細い腰を引き寄せる。
「……っ、阿部ちゃんのせいだよ……」
目黒は自分から阿部の首に腕を回し、強引に唇を重ねた。楽屋での鬱憤を晴らすような、少し乱暴で、でも切実なキス。
「んっ……、はぁ……、ねぇ、阿部ちゃん……足りない」
ベッドになだれ込むと、目黒の白い肌が羞恥と興奮で淡いピンク色に染まっていく。
「楽屋で見られた分、ここで全部塗り替えてあげる」
阿部の手が目黒の服の中に滑り込み、熱を持った肌に触れる。
「あ……っ、ふ、あべ、ちゃん……」
目黒の声が甘く震え、シーツをぎゅっと掴む指先に力が入る。
さっきまでメンバーに冷やかされていたことなんて、もう頭の隅にも残っていない。
視界にあるのは、自分を蕩けさせるような熱い眼差しを向ける、大好きな阿部の顔だけ。
「……めめ、こっち見て?……俺の名前、呼んで」
「……りょう、へいくん……っ、もっと……」
外では絶対に見せられない、甘すぎる「受け」の顔。
夜が更けるまで、二人の熱い吐息と、愛を確かめ合う音だけが静かな部屋に響き続けていた。翌朝、Snow Manの楽屋。
集合時間ギリギリに現れた目黒蓮の歩き方は、誰が見ても明らかに不自然だった。
「……おはよう」
消え入りそうな声で挨拶し、ソロリソロリとソファに深く沈み込む目黒。
その隣には、妙にスッキリした顔でコーヒーを飲む阿部亮平の姿がある。
「おー、めめ。おは……って、え、何その歩き方? ロボット?」
さっそく食いついたのは、案の定、深澤だった。
ニヤニヤしながら目黒の腰のあたりをじっと見つめる。
「……別に。ちょっと昨日、トレーニング頑張りすぎただけだから」
「トレーニングねぇ……」
向井が横からスマホを片手に割り込む。
「めめ、昨日の帰り、阿部ちゃんに『責任取って運んで』って言ってたもんなぁ? どんな激しいトレーニングしたん?」
「っ……! 康二、うるさい!」
目黒が顔を真っ赤にして反論しようと勢いよく立ち上がろうとした瞬間。
「……っつあ!!!」
あまりの激痛に腰を押さえ、そのままソファに逆戻りした。
「あーあ、無理しちゃダメだよ、めめ」
阿部が甲斐甲斐しく(でもどこか勝ち誇ったような笑顔で)、目黒の腰にクッションを差し込む。
「阿部ちゃん、お前やりすぎだろ!」
渡辺が呆れ顔で突っ込むが、阿部は涼しい顔だ。
「だって、めめが『もっと』って言うから……あ、ごめん、これ内緒だった?」
「阿部ちゃん!!! 言わないでよ!!」
目黒はクッションに顔を埋め、羞恥心で爆発寸前。
「はいはい、記録更新ね。めめ、今日のダンスリハ、俺がフォローしてやるから安心しろよ」
岩本が苦笑いしながらプロテインを差し出すが、目黒は顔を上げられない。
結局、その日のリハ中も、腰を庇う目黒が少し動くたびに、佐久間や宮舘から
「あ、今腰にキた?」
「無理すんなよ、腰痛持ちくん」
と愛のある(?)イジリの洗礼を浴び続けることになった。
当の本人である目黒は、自分を支える阿部の腕の中で、
「……今夜は絶対、阿部ちゃんを寝かせないからな」
と小さな声でリベンジを誓うのだった。
仕事終わり。
腰を庇いながらゆっくり歩く目黒と、その腰に手を添えて支える阿部。
その後ろ、数十メートル離れた電柱の影には、怪しすぎる3人組がいた。
「おい、見てみろよ。めめ、完全に阿部ちゃんに体重預けてるじゃん」
ふっかが声を潜めて指差す。
「ひゃー! めめがあんなにトロけた顔して阿部ちゃんの肩に頭乗せてるの、貴重すぎる!」
「静かにせえさっくん! バレるやろ! ……あ、見て、めめが阿部ちゃんの耳元でなんか囁いたで!」
康二が必死にスマホのズームを合わせる。
二人の距離は、もはやゼロ。
「……阿部ちゃん、腰、まだ響く。……もっと、ぎゅっとして歩いてよ」
目黒が甘ったるい声で強請ると、阿部は困ったように笑いながら、さらに深く目黒の体を抱き寄せた。
「しょうがないなあ。……リベンジするんじゃなかったの?」
「……それは、家帰ってから。……今は、優しくして」
目黒が阿部の首筋に鼻先を擦り寄せる。
その無防備な姿に、尾行チームは悶絶寸前だ。
家に入り、ドアが閉まった瞬間。
「……よし、リベンジ開始」
目黒は阿部をソファに押し倒そうとするが、腰に「ピキッ」と電流が走る。
「……っつあ!!」
「ほら、無理だって。今日は俺が『お詫び』に、たっぷり甘やかしてあげるから」
阿部は目黒を優しくベッドへ誘うと、昨夜とは打って変わって、指先ひとつひとつにキスを落とすような、丁寧で甘い愛撫を始めた。
「……あ、べちゃん……。……んんっ……」
「リベンジ、したかった? ……でも、こんなに感じちゃってるよ、蓮」
耳元で名前を呼ばれ、阿部の舌が熱く這い回るたびに、目黒のプライドは溶けていく。
結局、リベンジするはずが、昨夜よりも深く、阿部の与える快楽に溺らされていく目黒。
「……はぁ、あ、……りょうへい、くん……っ。……好き、だいすき……」
腰の痛みも、メンバーに見られていた恥ずかしさも、すべて阿部の熱に塗りつぶされていく。
目黒は涙目で阿部を見上げ、自分からもっと深く繋がることを強請るのだった。
翌日の楽屋。
昨日リベンジに失敗し、さらに腰を痛めた目黒がヨロヨロと椅子に座ると、背後から忍び寄る3つの影。
「おっはよー、めめ! 昨日さぁ、帰り道大変そうだったね?」
佐久間がニヤニヤしながらスマホを突き出す。画面には、街灯の下で阿部の肩に顔を埋め、とろんとした表情で甘える目黒のドアップが。
「……っ!! な、なにこれ!?」
「『康二ズ・レンズ』やで! めめのあの甘えた声、『阿部ちゃん、もっとぎゅっとして……』ってやつ、バッチリ録音もしてあるで〜」
康二が再生ボタンを押そうとすると、目黒は顔を真っ赤にしてスマホを奪い取ろうと暴れる。
「やめろ! 消せ! 絶対にメンバー以外に見せるなよ!!」
「メンバーには見せていいんだ(笑)」
ふっかが茶化すと、目黒は涙目になって阿部の背中に隠れた。
「阿部ちゃん……、みんなが……っ」
「……へぇ。みんな、そんなの撮ってたんだ」
いつもなら優しくなだめる阿部の声が、妙に低い。
笑顔なのに目が笑っていない。その空気の変化に、尾行チームの3人も「……あ、やべ」と冷や汗を流す。
「……ちょっと、そのスマホ借りていいかな?」
阿部が静かに手を差し出すと、康二はビビってスマホを差し出した。
阿部は無言で自分のスマホにデータを転送し、元のデータを消去。
「あ、阿部ちゃん……? 怒ってる?」
目黒がおずおずと服の裾を引くと、阿部は目黒の顎をクイと持ち上げ、メンバーの前で堂々と耳元に唇を寄せた。
「……怒ってないよ。ただ、俺以外にこんな顔見せた『お仕置き』が必要かなって」
そのまま阿部は目黒の腕を掴み、楽屋の奥にある誰もいない更衣室へ連れ込む。
「え、ちょ、阿部ちゃん!? みんな見てる……っ」
「いいよ。見たい奴には見せとけば?」
ドアを閉め、鍵をかける音がカチャリと響く。
壁に押し付けられた目黒は、阿部の冷たくも熱い視線に射抜かれ、背筋がゾクりと震えた。
「……りょう、へいくん……」
「蓮、昨日あんなに可愛がってあげたのに、まだ足りなかった? ……他の男に隙見せる余裕があるなんて」
阿部の大きな手が、目黒のシャツの裾から這入り込み、熱を持った腰を強く掴む。
「あ、っ……! 痛い、けど……」
「痛いのがいいんでしょ? ……今日は、泣いても離してあげないから」
普段の優しさを完全に脱ぎ捨てた、独占欲の塊のような阿部。
更衣室の外では、ふっかたちが「……ガチのやつだわ」「これ、入っちゃダメなやつ」と震えながら退散していった。
その日、仕事が終わるまで目黒が更衣室から出てくることはなく、ようやく出てきた時には、首元に隠しきれないほどの赤い痕が点々と刻まれていた。
翌日の現場。
季節は春だというのに、目黒は頑なに首元の詰まった黒のタートルネックを着込んでいた。
「……めめ、今日暑くない? スタジオ、照明ガンガンだよ?」
メイクさんが不思議そうに筆を止める。
「あ、いや……ちょっと喉の調子が……風邪気味かなって」
目黒は鏡越しに、自分の首筋にクッキリと残った、阿部による「独占欲の証」を思い出して顔を赤くした。
そこへ、ふっかと佐久間がニヤニヤしながら通りかかる。
「おーい、喉大事にしろよ〜。……っていうか、そのタートル、昨日阿部ちゃんが更衣室で『深く刻んだ』やつ隠してるだけだろ?」
「ちょ、しーっ!! 声大きいって!!」
目黒が慌てて立ち上がった拍子に、タートルの襟元が少しだけズレた。
「あ、見えた! 濃いな〜、阿部ちゃん気合い入りすぎ!」
「……っ、もう知らない!!」
目黒は顔を真っ赤にして楽屋へ逃げ込んだ。
しかし、逃げた先にはもっと恐ろしい存在がいた。
Snow Manの敏腕マネージャーが、腕を組んで仁王立ちしていたのだ。
「目黒。ちょっと、こっち来なさい」
「……はい」
「そのタートル、脱ぎなさい。衣装に着替えるでしょ。……あと、喉の調子悪いって本当? スケジュール調整に関わるんだけど」
「あ、いや……えっと……」
目黒がモゴモゴしていると、マネージャーが溜息をつきながら目黒の襟元をグイッと下げた。
「……目黒。これ、何?」
そこには、隠しようのない鮮やかな赤い痕が点々と。
「……っ! これは、その、虫刺されで……っ!」
「どんな虫ならこんな左右対称に噛み跡がつくのよ。……阿部、あんたもそこにいなさい」
ちょうど楽屋に入ってきた阿部が、ピタリと足を止める。
「……はい。僕がやりました」
阿部は逃げるどころか、堂々と目黒の肩を抱いて宣言した。
「……目黒の体調管理も僕の役目だと思ってます。……ちょっと、やりすぎちゃいましたけど」
「開き直るな! 露出のある衣装の時はファンデーションで隠すの大変なんだからね!」
マネージャーの説教が響き渡る中、目黒は阿部の胸に顔を埋めて「……もう、引退したい……」と消え入りそうな声で呟くのだった。
マネージャーさんに絞られ、コンシーラー代を請求されそうな勢いで怒られた二人。
「ほとぼりが冷めるまで、楽屋でも家でも接触禁止!」 という厳しい「禁欲令」が出されることになりました。
「……お疲れ様、阿部ちゃん」
「うん、お疲れ様、蓮」
仕事終わり、楽屋。
いつもなら当然のように肩を並べて帰るのに、今は一メートル以上の距離を保っている。
メンバーたちも、心なしかソワソワして二人を見守っていた。
「……なぁ、あの二人、磁石の反発みたいになってへん?」
康二が小声でふっかに囁く。
「禁欲3日目だろ? 目黒の顔、チベットスナギツネみたいになってんぞ」
目黒は、阿部の声を聞くだけで耳たぶが熱くなるのを必死に堪えていた。
阿部も阿部で、資料を読むふりをしながら、目黒のすらりと伸びた指先を盗み見ては、喉を鳴らしている。
(……触りたい。抱きつきたい。阿部ちゃんの匂い、嗅ぎたい……っ)
目黒の限界は、もうとっくに超えていた。
その夜。
結局、同じマンションの隣同士(あるいは半同棲)の二人が、玄関先で鉢合わせた。
「……あ、阿部ちゃん」
「……蓮。……おやすみ」
素っ気なくドアを開けようとした阿部の背中に、目黒が我慢できずに飛びついた。
「……っ、無理! 阿部ちゃん、もう無理!!」
「……蓮、ダメだって。マネージャーさんに……」
「いいよもう! クビになってもいい! 阿部ちゃんが足りなくて死ぬ!!」
目黒が阿部の首筋に顔を埋めて、ハァハァと熱い吐息を漏らす。
その必死すぎる甘えっぷりに、阿部の理性の糸も、プツンと音を立てて切れた。
「……。……蓮がそう言うなら、俺ももう知らないからね」
翌朝。楽屋に現れた二人は、昨日までの距離感が嘘のように、「完全密着モード」に進化していた。
「おはよ。……ねぇ蓮、寝癖ついてるよ」
阿部がメンバーの目の前で、目黒の髪を愛おしそうに撫で、そのまま頬に指を滑らせる。
「……ん、阿部ちゃん、直して」
目黒は隠す気ゼロで、阿部の腰に腕を回して引き寄せる。
「……おいおいおい! お前ら、禁欲はどうしたんだよ!」
ふっかが椅子から転げ落ちる。
「マネージャーに怒られるぞ!」
「いいんです。怒られた分だけ、家で愛し合えばいいって結論になったので」
阿部がキラキラのアイドルスマイルで言い放つ。
「……阿部ちゃんが、そう言ってくれたから。俺、もう隠さない」
目黒もトロンとした瞳で阿部を見つめ返し、衆人環視の中で堂々と阿部の肩に顎を乗せた。
「……あーあ。もうこれ、誰も止めらんねぇわ」
しょっぴーが呆れ果てる中、マネージャーが楽屋に入ってきた瞬間、二人は離れるどころか、さらにぎゅっと抱きしめ合うのだった。
「……ねぇ、阿部ちゃん。このチョコ、あーんして」
「いいよ。はい、蓮、あーん」
楽屋の真ん中。
周囲に他のメンバーが7人もいるというのに、目黒は阿部の膝の間にすっぽりと収まり、当然のように口を開けている。
阿部もまた、慈しむような聖母の微笑みでチョコを運んでいた。
「……おい。誰か、あのバカップルに塩まいてこいよ」
渡辺がコーヒーを片手に、遠い目で呟く。
「無理だって。さっきさっくんが突っ込んだら、阿部ちゃんに『邪魔しないで?』ってガチのトーンで返されて半泣きで戻ってきたもん」
ふっかが、隅っこで震えている佐久間を指差した。
そこへ、ドカドカと足音を立ててマネージャーが入ってくる。
「ちょっと! 目黒、阿部! またSNSにツーショット上げようとして……って、何してんのよあんたたち!」
密着する二人を見て、マネージャーの血管が浮き出る。
「離れなさい! 禁欲令はどうしたの!」
「マネージャーさん。……無理でした」
阿部がチョコを置くと、目黒の腰を引き寄せ、あろうことかマネージャーの目の前で目黒の頬にチュッと音を立ててキスをした。
「……っ!?!?!?」
楽屋中に戦慄が走る。
「蓮が僕を必要としてるんです。僕も、蓮がいないと仕事に集中できなくて。……これ、効率悪いですよね?」
「……効率の問題じゃないわよ!」
「マネージャーさん。……俺、阿部ちゃんが隣にいないと、次のドラマのセリフ入んない」
目黒が潤んだ瞳で追い打ちをかける。
その「確信犯な可愛さ」に、百戦錬磨のマネージャーもついに膝をついた。
「…………わかったわよ。もういいわよ!」
マネージャーは天を仰ぎ、手に持っていたスケジュール帳を閉じた。
「その代わり! 現場では絶対、衣装の隙間から『痕』が見えないようにすること! あと、二人の仕事が重なる日は……もう、二人の専用個室(着替え室)を用意するから、そこから出ないで!!」
「「ありがとうございます!!」」
二人の元気すぎる返声が楽屋に響き渡る。
「……おーい、マネージャー。俺らの人権は?」
「専用個室って……それ、余計に中がヤバいことになるんじゃねぇの?」
メンバーたちが頭を抱える中、目黒と阿部は 「やったね、阿部ちゃん」
「うん、蓮。これでずっと一緒だね」と、さらなるイチャつきの深淵へと足を踏み入れていくのだった。
「……ねぇ、これ。逆に地獄じゃない?」
楽屋のソファで、深澤(ふっか)が死んだ魚のような目で、隣の個室のドアを指差した。
そこには『目黒・阿部 専用』と書かれた紙が貼られているが、その隙間から、断続的に
「あ……っ」
「……だめ、阿部ちゃん……」という、聞いている方が恥ずかしくなるような声が漏れ聞こえてくる。
「……あいつら、防音設備のこと忘れてるんかな」
向井が耳を塞ぎながら、切なそうに呟く。
「向井さん、ズームで撮る元気もないわ……。これ、生々しすぎて放送事故やで……」
「……ひゃー!! 今の聞いた!? めめが『もっと強く……』って言った! 完全に言ったよね!?」
佐久間だけは、羞恥心を通り越して謎のテンションで悶絶している。
そこへ、トレーニング帰りの岩本(ひーくん)がやってきた。
「……おい。何なんだ、この空気。……個室の中で格闘技でもやってんのか?」
「……岩本さん、それならまだマシだよ」
渡辺が、耳まで真っ赤にして俯いたまま答える。
「さっきから、ベッドの軋む音みたいなの(※実際はリクライニングチェア)と、阿部ちゃんの『蓮、いい子だね……』っていう低音が交互に聞こえてくるんだよ……。俺、もう無理。帰りたい」
「……阿部も、あんなキャラだったっけ」
岩本が凍りついたようにドアを見つめる。
その時。
カチャリ、とドアが開いた。
中から出てきたのは、髪を少し乱し、頬を上気させた目黒。
その首元には、コンシーラーで隠しきれなかった「新しい痕」が、鎖骨のあたりにチラリと覗いている。
「……あ、みんな。お疲れ様」
目黒は、トロンとした甘い瞳で、悪びれもせず微笑んだ。
その後ろから、阿部が満足げな顔で目黒の腰を抱き寄せ、耳元で何かを囁く。
「……お疲れ様。……みんな、そんなにこっち見て、どうしたの?」
「「……お前らのせいだよ!!!!」」
メンバー全員の絶叫が楽屋に響き渡ったが、二人は顔を見合わせて「ふふっ」と笑い合い、また個室の中へと消えていった。
「……マネージャー。……個室、逆効果だったみたいだよ」
ふっかが遠い目で、廊下を歩くマネージャーに報告するのだった。
「……もう限界だ。俺、これ以上この『甘い吐息』をBGMに弁当食えねぇよ!」
箸を置いたしょっぴーが、プルプルと震えながら立ち上がった。
「そうや! めめと阿部ちゃん、やりすぎや! 楽屋の秩序を守らなあかん!」
康二がスマホのカメラ(証拠用)を構え、ふっかが先頭に立つ。
後ろには、興味津々のさっくんと、腕組みして呆れ顔のひーくんも続く。
「いくぞ……せーのっ!!」
バターン!! と勢いよくドアが開け放たれた。
「お前ら! いい加減にしろよ……っ!!」
叫んだふっかの言葉が、喉の奥で凍りついた。
そこには、想像を絶する光景が広がっていた。
リクライニングチェアの上に、ぐったりと体を預けた目黒。
そのシャツのボタンは半分ほど外れ、はだけた胸元には、点々と赤い花が咲いたような痕が。
その上に覆い被さるようにして、目黒の首筋に顔を埋めていた阿部が、ゆっくりと顔を上げた。
阿部の瞳は、いつもの知的な輝きではなく、獲物を追い詰めた肉食獣のような、どろりと熱い欲に染まっている。
「……あ、みんな。ノックくらいしてよ」
阿部の声は、聞いたこともないほど低くて、掠れていた。
「……っ、ふ、あ……阿部ちゃん……、みんな……見て……」
目黒は真っ赤な顔をして、震える手で顔を覆い、阿部の胸に潜り込もうとする。
その、あまりにも「受け」全開な、艶っぽい姿に、突撃したメンバーたちは一瞬で戦意を喪失した。
「……あ、すまん。お邪魔しました」
ひーくんが、無言でドアを閉めようとする。
「待て待て待て!! 阿部ちゃん、めめの腰、浮いてたぞ!? 何してたんだよ!!」
さっくんが叫ぶが、阿部は目黒の腰をグイと引き寄せ、挑発的に微笑んだ。
「蓮が『足りない』って泣くから、ちょっと可愛がってただけ。……ねぇ、続き、していい?」
「……無理。勝てない」
ふっかが、崩れ落ちるように膝をついた。
「あいつら、もう別の次元に行ってるわ……」
「めめのあんな声、聞いてもうた……。俺、一生独身でええわ……」
康二が魂の抜けたような顔でカメラを落とす。
結局、メンバーたちはすごすごとメインの楽屋へ撤退。
扉の向こうからは、
再び「あ……っ、だめ、阿部ちゃん……っ」「いいよ、もっと声出して」という、さらに熱を帯びたやり取りが再開された。
マネージャーが戻ってきた頃には、楽屋には白目を剥いて倒れているメンバーたちの姿と、幸せそうなオーラを撒き散らしながら個室から出てくる二人の姿があったという。
コメント
2件
めめあべ可愛すぎますよね…
可愛すぎる😍 めめあべってなんでそんなに可愛いんですか?!気になります
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