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「……郁斗さん、どうかしましたか?」
いつまでも黙ったまま夜景を見つめる郁斗が気になった詩歌は少し遠慮がちに問い掛ける。
「――詩歌ちゃん」
「は、はい?」
「俺、もう少し経ってから言おうかと思ってたけど、今日あの二人の幸せそうな顔みてたらさ……凄く羨ましくなっちゃったんだよね」
「…………羨ましい?」
「そ。やっぱり、結婚ていいものなのかなって、思ったんだ」
「!」
詩歌も同じ事を思っていただけに、郁斗も同じ考えだった事が嬉しくもあり、驚きでもあった。
そんな彼女を前に、郁斗は胸ポケットから何かを取り出した。
そして、
「――詩歌、俺とこの先もずっと人生を共にして欲しい。俺、今よりももっと強くなって、詩歌の事も、いずれ出来る予定の子供の事も絶対守るから。だから、俺に付いてきて欲しい」
真っ直ぐ見つめ、取り出した小箱を差し出しながら、郁斗は詩歌にプロポーズをした。
「郁斗……さん……これ……」
驚き過ぎて、震える手で小箱を受け取った詩歌はゆっくりとリボンを解き、箱を開ける。
中に入っていたのは、真ん中に光り輝くダイヤモンドがあり、そのサイドには小さなピンクダイヤモンドがセッティングされた、シルバーの指輪だった。
「詩歌ちゃんの誕生日まで待とうかなって思ったんだけど、もう待てない。一日でも早く、言いたかったんだ」
「……っ、」
「詩歌ちゃん?」
「嬉しい……です……私、嬉しい……っ」
「良かった、断られたらどうしよかと思った」
瞳から大粒の涙を零している詩歌を抱き締めながら、少しおどけて見せる郁斗。
「断るなんて、有り得ません……っ郁斗さんこそ、本当に、私で良いんですか?」
詩歌の問いに郁斗は彼女の瞳から溢れる涙を掬って、
「愚問だね、詩歌ちゃん以外なんて、考えられないよ」
笑顔を向けると、郁斗につられ、詩歌も笑顔になった。
星が光り輝く夜空の下、郁斗が詩歌の左薬指に指輪を嵌め、
「もう一度言うね。俺に、付いてきてくれますか?」
「はい! ずっと、ずっと付いていきます! どこまでも」
お互いの気持ちを確かめ合った二人はどちらからともなく唇を重ねて愛を感じながら、これからの幸せを思い描いていった。
二人は思う。
あの日、あの場所で出逢えて、本当に良かったと。
そしてその後、樹奈に続くように詩歌もとある理由からPURE PLACEを辞める事になるのだけど、
それはまた、別のお話――。
― END ―