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#魔法
しろのね
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U
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ちょん
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第7話、めっちゃ良かった……! リリーがピアノを弾いてるのを大勢に聞かれて照れちゃうシーン、すごく共感できるし、あの後「楽しかった」って余韻を噛みしめるところで感情の動きが丁寧に描かれててグッときたわ。黒髪の天音ちゃんと梨子ちゃんの登場も、雰囲気的に不穏だけど悪意はなくて、リリーと同じく私も「何なんだろう?」って引き込まれた。放課後、南棟の四階に絶対行ってほしい。続きが気になる!🔥
ふと正気に戻ると、いつの間にか旧舎の廊下に小さな人だかりができていた。自分の演奏が大勢の生徒たちに聞かれていたのだと悟った瞬間、途端に激しい恥ずかしさと戸惑いがこみ上げてきて、リリーは鍵盤から弾くようにそっと指を離した。
「そ、そういえば……私、先生に呼ばれていたのを失念しておりましたわ。アン、お先に失礼しますね!」
「え?リリー様!? まだお茶の時間が――!」
呼び止めるアンの困惑した声と、廊下に集まった生徒たちの視線から逃れるようにして、リリーはその場を足早に後にした。
自分から誘っておいて置き去りにしてしまったアンには、申し訳ない気持ちで胸が痛む。けれど、あの予期せぬ注目の真ん中で、これ以上ピアノの前に座り続けるのは、とてもじゃないが耐えられそうになかった。
人通りの途絶えた静かな廊下へ出ると、リリーは胸に手を当てて深く息を整えた。
(楽しかった……)
パニックになった心の裏側で、胸の奥に残る温かな余韻を噛み締めると、自然と自分の口元がゆるんでいることに気づく。
だめよ、とリリーはすぐさま首を振った。こんな風に浮かれて感情を表に出してはいけない。
溢れ出てくる温かい気持ちと高揚感を、必死に胸の奥へと押しとどめる。
(また……あんなことになってしまったら……)
幼い頃、兄の放った巨大な炎を目にしたときの恐ろしい記憶と、魔法が扱えない自分の無力さが脳裏をよぎり、胸がキュッと絞めつけられる。自分は感情に流されることなく、完璧な公爵令嬢として振る舞わなければならないのだから。
そんな風に己の心と戦っていた、その時だった。
「あの……っ! 待ってください!」
背後から、意を決したような切羽詰まった声が投げかけられた。
振り返ると、そこには同い年くらいの二人の少女が息を切らせて立っていた。
一人はキリッとした凛々しい表情を浮かべ、もう一人は少し気押されたように戸惑った顔つきをしている。
自分と同じ学園の制服を着ているため、ここの生徒であることは容易に推測できたが、貴族社会の社交場でも、この学園の廊下でも一度も見かけたことがない面持ちだった。何より異彩を放っていたのは、二人の髪が夜の闇のように深い「黒色」をしていることだった。
「初めまして。私は天音(あまね)といいます。天使の“天”に、音楽の“音”で“アマネ”」
「わ、私は梨子(りこ)……果物の“梨”に、子どもの“子”で……“リコ”って読みます」
これまで聞いたこともない独特で個性的な自己紹介に、一瞬リリーの頭は混乱した。けれど、不思議とそれを不快だとか変だとは思えなかった。どこか懐かしく、惹きつけられる雰囲気を彼女たちがまとっていたからかもしれない。
「……リリー・アルベールと申します。私に何かご用でしょうか?」
三つ編みに眼鏡をかけたリコが「ほ、本当にそうなの……?」と小さく呟き、不安そうにそっともう1人の少女、アマネを見た。
一方、ポニーテールを揺らしたアマネは、真剣そのものの強いまなざしをリリーに向けて一歩歩み寄ってくる。
「今、さっきの旧舎のピアノであなたが弾いていたあの曲。……あれ、どこで知ったんですか?」
「……え?」
思いもよらぬ鋭い質問に、リリーは思わず言葉を失った。
「それに、あの曲のタイトルも教えてください。お願いです、知っているなら教えて!」
──けれど、リリーに答える術などあるはずもなかった。
「……ごめんなさい。私にも、分かりませんの。ただ……鍵盤に触れたら自然と指が勝手に動いてしまって。どこで覚えた曲なのかも、自分では思い出せなくて……」
リリーの切実な答えを聞いた瞬間、アマネは小さく息を呑み、リコは痛みを堪えるようにそっと視線を落とした。
「……やっぱり。彼女も……」
「え? 何か……あの曲についてご存じなのですか?」
思わず問いかけるリリーに対し、アマネは意を決したように真っ直ぐ瞳を見つめ返してきた。
「今日の放課後、南棟の四階にある一番奥の教室に来てくれませんか?」
「南棟の……四階?」
その場所を聞き、リリーはわずかに身構えた。
南棟は、現在はほとんど使われていない旧式の校舎だ。怪異の噂すら囁かれるほど静まり返っており、普段から生徒が出入りしているところなど見たこともない場所のはずだった。
少しばかりの不安と不審感が胸を掠める。けれど、目の前に立つ二人の黒髪の少女の瞳はどこまでも真っ直ぐで――決して悪意や罠を持っているようには見えなかった。
「……お願いします! 私たちの話を聞いてほしいんです。必ず来てください!」
アマネはそれだけ強く言い残すと、リコの腕を引いて、早足で廊下の暗がりへと去っていってしまった。
「一体……何だったのかしら……」
ぽつんと廊下に一人取り残されたリリーは、去っていった二人の後姿を見送りながら、胸のざわめきを抑えきれずにいた。
――放課後。南棟。四階。
謎めいた二人の少女と三つの言葉を、リリーは記憶の奥底に深く刻み込んだのだった。