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この物語は6人の話である。少年少女は沢山の悩みを抱えている。その悩みが大きければ大きいほど自分を失っていく。その悩みが世間からみて普通じゃなければ世間から追い出される。そうなると誰も味方なんてしてくれない。人間扱いされなくなっていく。だから大半の少年少女は悩みを打ち明けられない。打ち明けても笑われて蔑まされる。そんなことがあってはならない。自分が普通であるために、生きていくために居場所を失ってはいけない。だから、藻掻いて足掻いて苦しむ。そんな6人の話である。
親に捨てられ、友達のいないあたし、鈴原琴菜。何であたしが生きているかなんてあたしが聞きたい。世間から必要とされていないあたしは、人間以下の扱いを受けている。あたしはきっと生まれる時代を間違えたんだと思う。あたしはもっと違う性格に生まれたらよかったんだと思う。今更そんなこと思っても遅い。ああ、何でこんなことになったんだろう。そんなことを思いながら壁に背中を打ち付けられる。…痛い。
「あーあ。慣れちゃった?」
「全然痛そうじゃないねー。」
何を言っているの?痛いに決まっているじゃない。慣れるわけがない。毎日の拷問のような痛さに耐えられるのはあたしだけかもしれない。ってか耐えれてるっていうのかな?
「あ、久しぶりに玲奈来るってー。」
その名前に過剰に反応してしまう。だってあれは中学のとき…。
『え…何で?』
『何でってあたしが好きだから。』
中学の時あたしと玲奈の好きな人がかぶった。玲奈はクラスの女王様的存在だった。あたしは話かけるのが苦手だった。友達作りに苦戦していた時に話しかけてきたのが玲奈だった。あたしは友達だと思ってたから玲奈に諦めてって言われた時もちろん諦めるつもりだった。
『分かった。』
そう言うと玲奈は嬉しそうに笑って言った。
『ありがとぉー!大好き、琴菜。じゃあ、もう一ノ瀬君に話しかけないでね。』
『うん。』
あたしは確かに話しかけないと言った。けどあたしと一ノ瀬君は同じ班なのだ。
『あ、鈴原さーん!』
あたしと玲奈の話を知らない一ノ瀬君は以前と変わらず接してくる。やめて。話しかけないで。あたしは正直玲奈が怖かった。友達が少なかったあたしは普通を知らない。だからこれが普通だと思っていた。だけど最近あたしの扱いが酷くなってる気がする。パシリにされたり面倒事はあたしにおしつけたり。友達でしょ?と圧をかけてきて尚更断れない。だから何されるか分からないから約束を破りたくなかったからなるべく無視するようにした。
『痛っ!?玲奈?』
『何で?喋らないでって言ったじゃん!!』
玲奈に呼び出されて行ってみたら突き飛ばされて床に転んだ。顔をあげると玲奈は泣きそうな表情をしていた。
『ご、ごめん。でもあたしと一ノ瀬君は同じ班だし、一ノ瀬君が喋りかけてくるから…。』
『関係ないよっ!!何で?琴菜はあたしが大事じゃないんだ?』
『っっそんなわけないよっ!!だからあたしからは喋りかけないようにしてたっ!い、一ノ瀬君が話しかけてくるから…。』
そう言うと玲奈はあたしの頬をぶった。パァンと乾いた音が廊下に響く。
『…最低。友達裏切るなんて…。』
そこからあたしのいじめが始まった。今思うとあれは友達なんかじゃなかったと思う。最初からそうなるようにしていたようにしかみえない。同じ時期に親も居なくなった。その時からあたしは一人だ。
「さー、今日は終わりにするかー。」
「玲奈たち今度来るって言ってたし楽しみー。」
いじめっ子たちは笑いながらどこかへ行ってしまった。あー、身体痛い。とりあえず保健室行って消毒するか。あたしはふらふらすら身体を無理矢理起こして歩き出す。保健室のドアを開けると男子たちがたむろっていた
があたしが入ってきたのを確認すると、
「おい。鈴原さんだ。行くぞ。」
「おう。」
と言ってぞろぞろと出ていく。あたしはそれに逆らってつかつかと歩いて、消毒液を取り出す。
「おーい。一ノ瀬ー?」
っ一ノ瀬?はっと顔をあげると一人の男子が目を見開いて固まっていた。
「…先行っててー。」
一ノ瀬って?いや、違うか。男子は顔が変わるっていうし。
「鈴原さん…?」
ビクッとした。あの頃と変わらない声であたしの名前を呼んだから。一ノ瀬くんだ。でも今更話したいこともないし会いたいとも思わなかったから速やかに処置して保健室を出ていこうとした。
「待って!」
その声に逆らえず止まってしまう。
「何?そのけが…。」
緊張した声で話しかけてくる。
「……別に。」
「別にじゃなくてなんかあるでしょ?」
パーカーの裾をぎゅっとつかむ。何であんたなんかに話さなきゃいけないの?あたしが誰のせいでこんなんになったと思っているの?同情なんていらない。可哀想ってなにが?そんなこと言うならあたしを助けるために行動してよ。なんで見てないふりするの?あたしがどれだけ苦しい思いしたと思ってるの?
「鈴原さん?」
「うるっさい!!!!なんなの?興味本位なら聞かないで。可哀想だから話聞いてあげよう?話したら楽になる?そんなんであたしは救われるの?あたしを人間にしてくれるの!?何にも出来ないくせに…。…そもそも誰のせいだと思ってるの?あんたがいなきゃあたしはこんなんになんなかった!あんたなんか……!」
最後の方は涙も出てきて何を言っているのか分からなくなっていた。
「あんたなんか死ねばいいのに…。」
あたしはそう言うと保健室を後にした。