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司会者は割れたガラスの中で笑っていた。
だがその笑顔は、ほんの少しだけ引きつっている。
朧の鬼気が強すぎる。
廊下の壁が軋み、天井から黒い埃が落ちてくる。
それでも司会者は拍手を止めない。
『素晴らしいですねぇ〜……!』
狂ったような声。
『やっぱり鬼の愛って重い!!』
湊は朧の腕を掴む。
今にも司会者を殺しそうだった。
だが司会者は、わざとらしく肩をすくめる。
『娘さんなら無事ですよ♪』
その瞬間。
天井からモニターが降りてきた。
ザーッ……。
画面が映る。
そこには、小さな部屋が映っていた。
娘だ。
椅子へ座らされ、眠ったまま動かない。
湊の顔色が変わる。
「……っ!」
しかし次の瞬間。
画面の奥で、“何か”が動いた。
巨大な影。
赤い目。
異様に長い腕。
娘のすぐ後ろで、天井へ張り付いている。
湊の背筋が凍る。
司会者は楽しそうに笑った。
『あれ、“子守鬼”って言うんですよ♪』
『お腹空くと、子供食べちゃうんです』
朧の殺気が爆発する。
床が割れる。
司会者は嬉しそうに笑いながら指を鳴らした。
パチン。
瞬間。
校内放送が鳴り響く。
『――試験開始まで、残り三十分』
赤いランプが点灯する。
廊下全体が真っ赤に染まった。
『ルール説明を始めます♪』
壁から無数のモニターが飛び出す。
全部に司会者の顔。
笑っている。
どこを見ても。
『今回は特別編!!』
『題して、“家族か、生存者か”ゲーム!!』
湊の嫌な予感が膨れ上がる。
司会者はニタニタ笑いながら続けた。
『今回の参加者は五十名!』
『その中には、普通の人間もいます♪』
映像が切り替わる。
泣いている親子。
震えている学生。
拘束された大人達。
全員、生きている人間だった。
『制限時間以内にゴールへ辿り着けた者だけ生還!』
『ですがぁ〜』
司会者の笑顔がさらに歪む。
『鬼の血を持つ子供を差し出せば、“自分だけ”は助かります♪』
静寂。
湊の呼吸が止まる。
つまり。
娘を渡せば、生き残れる。
司会者は笑った。
『人間って面白いんですよねぇ』
『家族より自分を選ぶ人、結構いるんですよ♪』
その瞬間。
ドォンッ!!!
朧の拳が壁を貫いた。
鬼気が暴れる。
校舎全体が悲鳴みたいに軋む。
朧の目は完全に殺意だけだった。
「……湊」
低い声。
怒りで震えている。
「全員殺していいか」
湊は一瞬だけ黙る。
そして静かに首を横へ振った。
「娘を先に助ける」
その答えに、朧はゆっくり息を吐く。
理性を押さえ込んでいる。
だが限界は近い。
司会者はそんな二人を見ながら、満足そうに笑った。
『あぁ〜……やっぱり最高ですねぇ』
『愛って、壊れる瞬間が一番綺麗だ』