テラーノベル
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『返事はしない、したいけど』
tg視点
「…おかえり、ちぐさ」
母の声に、俺はただ「うん」とだけ返して、
自分の部屋にまっすぐ向かった。
ドアを閉める音が、いつもより大きく響いた気がする。
制服のまま、ベッドに倒れ込む。
目を閉じても、さっきの言葉が耳から離れない。
「俺、お前のこと、好きやった」
tg ……やった、ってなに
呟いた声が、小さく震えていた。
わかってた。過去形だったことも、もう終わってることも。
でも、それでも。
ほんの少しでも「今、好き」って言ってほしかった。
スマホを握りしめる。
あのあと、ぷりちゃんからLINEは来てない。
未読のままの画面が、やけに冷たい。
俺は、スマホのメモアプリを開いた。
誰にも見せたことのない、ひとつの下書き。
ずっと送れずにいたメッセージ。
「俺も、ずっと好きだったよ」
「3年間、ちゃんとずっと」
「今日だって、本当は言いたかった」
「でも遅いよね、ううん、遅くしちゃったのは俺だもんね」
「……ごめん」
──これが、俺の答えだった。
メモアプリの右上に「送信」ボタンなんて、もちろんない。
LINEに貼りつければいいだけなのに、
それすらできない。
tg ねえ、ぷりちゃん
tg 俺、もう今日でほんとに終わらせたいのに
俺はスマホを胸に抱いたまま、
声を出さずに泣いた。
カーテンの隙間から差す、夕方の光がにじんで見える。
泣きたくなかったのに。
笑って終わらせたかったのに。
──でも、心はちゃんと知ってた。
あのとき、ちゃんと返事してれば、
もしかしたら、何か変わったかもしれないって。
でも言えなかった。
怖かった。
終わってしまうのが、怖かった。
そして今、終わってしまった。
次の日。
俺は荷造りの途中で、
1枚の紙を見つける。
それは──1年前に書いた、
“卒業式の日に渡す”って決めた、手紙だった。
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コメント
4件
マジで心臓バクバクしてます、、! 主様天才!!
最高すぎます… 続き楽しみにしてます!