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藍は、まだ20代の新社会人だ。
ごく普通の高校を出た後、デザインに関する専門学校に入学し、今年の春にこの会社へ入社した。
小さい頃から絵を描くのが好きで、物のデザインを考えることも楽しいと思っていた。
なので大手のデザイン会社に入れたことは藍の中では夢のようなことだったのだが。
正直、会社では上手く行っていなかった。
複数人のグループでアイデアを出し合い、オファーに答えていく。
もちろん藍もグループに所属していたのだが、自分からアイデアを発したことが無かった。
周りは「まだ若いから無理しなくて大丈夫」と声をかけてくれるのだが、自分としては全く満足がいかない。
そして会社には、親しくしている人がいなかった。
元々控えめな性格なので積極的に話すことができない。
だからアイデアを発せないというところもあるかもしれない。
ある日、藍は思いきって発言をした。
生活必需品のデザインということで、今回こそやってやろうと前日からデザインを考えていて、紙にまとめていたのだ。
だが結果は、採用ならず。
「いいんだけどね、少し眩しすぎるかもね」とリーダーは優しくアドバイスをする。
しかし恥ずかしさと自分への失望で、何も考えられていなかった。
「はぁ…」
藍は自販機の前でため息をついた。
変な時間を奪ってしまったなぁと、後悔するばかりだ。
この仕事は合ってないのかなぁと思い、もう一度ため息をつく。
「あの、大丈夫ですか?」
ホットココアを開けずに突っ立っていると、誰かに声をかけられた。
とても綺麗で、清楚な女性だ。
「あ…いや」
「何か悩んでらっしゃるんですよね?」
「そんな、」
彼女の曇りなき瞳に見つめられ、藍は折れてしまった。
「…そうなんですか」
「ごめんなさい、話聞いてもらって」
いいんですよ、と優しく微笑む彼女は禿 澄架(かむろ すみか)と言うらしい。
澄架は藍の話を真面目に聞いて、真面目にアドバイスをしてくれた。
自分と年が変わらないという彼女だが、とても格好よく見えた。
「うん、いいんじゃない」
数週間後。藍は澄架のアドバイスを基に、デザインを考えた。
するとそれは一部、採用されることとなった。
「青海(おうみ)さん、やるじゃない。前よりも表情が明るくなったし、何かあったの?」
澄架はデザインのアドバイスもしたが、それ意外のこともたくさん言ってくれた。
そのお陰で自信を持つことができたのだ。
いつかは成功すると信じて。
藍は最高の友人も得ることができた。