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縁側で、無造作に吊り下げられている風鈴がチリンと鳴る。


まだ慣れないひんやりとした風が通り、私は新聞から目線をあげた。


どこか哀しそうな音のように聴こえたが、気の所為ではないかもしれない。

木は紅く染まりきっていて、地面も紅い葉で覆われている。その中に1つだけ夏があるのだ、そりゃあ哀しくもなるだろう。


鉄でできた風鈴なので、色合い的には合ってるかもなとか呟きながら、また鳴った風鈴を見つめた。


もう、秋になってしまったか。


この風鈴を仕舞わなければならないのだが、なかなか暇がない。…今はあるけれども。

仕舞おうと構えると、勿体ないと思ってしまう。その連鎖で仕舞えないままいる。


長く連れ添った妻や子どもたちとの思い出が沢山詰まっているからだ。


妻や子どもは今年の夏に居なくなったばかりで、残したものはこの風鈴くらい。


旅行へ行ったときの風鈴。


毎年欠かさずここに吊るしていた風鈴。


子どもたちが大きくなり、家を出て、夫婦間にマンネリが生まれても夏には吊るしていた風鈴。


涙は出ない代わりに“仕舞いたくない”という気持ちが膨れ上がって、行動に移せない。



何故離婚してしまったのだろう、とは思わない。

自分にとっても相手にとっても最善の判断だと分かっていたから。


心残りなのは、子どもたちだ。

2人とも成人しているとはいえ、まだ社会の下っ端であり親の援助も必要なのだ。


今2人はどうしているのだろうか。


無事に過ごせているだろうか。


…考えたらキリがないな。

考えることを止めて、ぱたりと後ろに倒れたとき、家のチャイムの音がした。


「こんにちはー」


最近よく家に来てくれる女の子の声だ。

こんなおじさんを気にかけて、世話を焼いてくれている。


こんなに年の離れた子に恋、なんて言ってはいけないのだろうが。


自分の生活も、この庭のように色づいてきている気がした。

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