テラーノベル
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続きです
…
…だが、幸せというものはそう簡単に続くものではないのだ。いずれ壊れる時が来る。でも…その時が来るには、早すぎたかもしれない。c00lkiddが入学してから数年が経った頃、007n7は気づいてしまう。c00lkiddが、だんだん自分と同じハッカーの道を歩んでいることに。
「…どうして…どうして、どうして…!!?僕は…俺は…c00lkiddに間違ったことを教えたつもりなんて…!!それにどこからハッキング能力だなんて手に入れたんだ…!?」
パソコンで何か手がかりがないか調べてみる。その過程で、007n7は気づく。昔使っていたハッキングのツールである「C00lgui」が、今調べてみたら2つ存在していることを。本来007n7が使う用で1つしかない。パソコンの中にファイルが存在しており、それを開くことで手にすることができる。
「c00lkidd…まさか…」
007n7は飛び出した。家の中を探し回ったが、c00lkiddの姿はなかった。C00lguiを駆使し、c00lkiddの居場所を探った。そして気づく。Roblox内のとあるサーバーに入っていた。007n7はすぐさまそのサーバーにアクセスし、c00lkiddの姿を探す。
「絶対に、そんなこと、あってはならない…!!」
c00lkiddがこのまま昔の自分のようなハッカーと成り果てるだなんて、考えるだけでめまいがする。
…遅かった。
007n7はc00lkiddの居場所を突き止め、そこに向かってguiを使いテレポートする。長年これを使ったことなどなかったのに、記憶というものは凄いものだ。007n7の手はguiを操作することを完全に覚えている。テレポートした先。そこには、燃え盛る建物があった。空に無数に浮かぶc00lkiddの姿。
「…c00lkidd!!!」
007n7は必死に叫び、建物の前に立っているc00lkiddに走り寄る。
「…c00lkidd!!一体何をして…」
「パパの部屋から見つけたの!」
「ダメだ、今すぐやめなさい!!早くこの炎を…」
「…やだ!!だって…」
「だってじゃない!もう…」
007n7の言葉が聞こえてないかのように、007n7の言葉を遮ってc00lkiddはこう言う。
「僕もみんなと遊びたいんだもん。」
笑顔なのに、いつもの可愛い笑顔は、どこにもなかった。
「ハッカーの子」
そんなレッテルを貼り付けられたc00lkidd。次第に学校ではいじめを受けるようになった。父である007n7にそれを言うことはできなかった。脅されていたからだ。
「…どうして僕ばっかりが…?ハッカーの子どもってどういうこと…?パパは悪者じゃないよ…」
訳がわからぬまま浴びせられた数多の罵詈雑言に苦しんでいた。部屋で1人、泣きながら宿題をやる日々。涙で紙が濡れた。いつしかそれに耐えられなくなって、怒りや悲しみなどの様々な感情が混ざりあってできた”狂気”。c00lkiddの脳はだんだんと狂気に侵された。
全て自分と仲良くなりたいからしてること。
そう思うことでギリギリのラインで正気を保っていた。
教科書が捨てられた時も。
机に落書きをされた時も。
先生の気づかないところで数々の暴言を言われたことも。
暴力をされた時も。
「全部、みんな、僕と遊びたいだけなの。きっとそうだよ…そうなんだ。」
c00lkiddはそうやって自分に言い聞かせた。でも、痛いものは痛くて。悲しいものは悲しくて。辛いものは辛い。
007n7に心配をかけたくはない。そう思って、007n7の前ではいつも通りの「c00lkidd」で居続けたつもりだった。
「c00lkidd、お昼ご飯は冷蔵庫に置いてあるからチンして食べてね。それじゃあ、いってきます。」
「いってらっしゃい、パパ。」
007n7は最近のc00lkiddの様子に違和感を感じていた。それを同僚に話してみた。
「ねえ…どうでもいいことかもしれないけどさ…最近、僕の子どもの様子がおかしい気がして…」
「様子がおかしい?それは…どういう風に?」
「うーん…元気がないというか…あんまり笑わなくなってきた気がして…でも小学生だし、色々変わってくる時期だからなぁ…」
「うーん…確かにそれは難しいな…でも、念の為何かあったのか聞いておくべきじゃないか?」
「そうかい…なら、今日帰ったら少し聞いてみようかな。ありがとう、助かったよ。」
「いやいや、助けになれたならそれでいい!」
同僚の話通り、何かあったのか、あったなら何があったのか聞いておくべきだろうと思った。
一通り仕事を終わらせ、玄関のドアを開ける。
「ただいま。」
「おかえり、パパ!」
元気な様子で出迎えてくれる。でも、もしかしたらそう見えるよう振る舞ってるだけかもしれない。自分のように。
疲労の溜まった体を無理やり動かし、夕食の支度をする。簡単に味噌汁と肉野菜炒めを作った。ご飯ができた旨を伝え、c00lkiddのことを呼ぶ。
「いただきまーす!」
「いただきます!」
怖かった。本当にこの子が、何かされていたのか。それを聞くのが怖かった。でも、聞かなければ。自分がこの子の親なのだ。親が子に寄り添えなくてどうする?
「c00lkidd…ちょっと、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「聞きたいことってなーにー?」
「最近さ…c00lkidd、元気がないように見えるんだ。何かあったの?あるならパパに気兼ねなく相談して。パパはc00lkiddの味方だよ。」
慎重に言葉を選んで話す。
「え…?いや、特に、何もないよ。」
「…そう?本当に?」
「…ほんとだよ!」
一瞬c00lkiddが言葉を躊躇った気がした。でも、本当だったにしろ嘘だったにしろ、今は話す気がないのであればこれ以上はやめておくべきだろう。
でも、確実に何かある。親としての直感だ。
c00lkiddは、ただただ部屋のベッドの上で寝転がっていることしかできなかった。007n7が買ってくれたゲーム機だってあるのに、それさえ手につかなかった。宿題も終わっていなかった。電子レンジ程度は使えるからと、007n7は仕事でいなくなることが多かった。c00lkiddはそれが寂しくてたまらなかった。
「パパがハッカーって…どういうことなの?」
どうしてもそれを知りたくて、007n7の部屋に入ってみることにした。部屋の中は普通で、c00lkiddの部屋とさほど変わりはなかった。大きめのパソコンが机の上に乗っかっていた。整理整頓が行き届いており、これが大人か、とc00lkiddは思った。c00lkiddはパソコンを開いた。ハッキングとなるとパソコンが一番手がかりが見つかりそうだったからだ。パスワードは壁に付箋が貼られていたから、すぐに突破できた。誰かが勝手に部屋に入ることなど、考えていないのだろう。
ファイルを開き、何か目に留まるものがないか探す。そして、c00lkiddは気になるものを見つけた。「C00lgui」と書かれたファイルだ。それを開いてみると、何かが頭の中に流れ込んでくる。
c00lkiddは理解してしまう。それがハッキングの手段であることを。「C00lgui」はハッキングのためのツールであることを。これを使えば、サーバーをハックしクラッシュさせることも、所謂チートのようなこともできてしまう。
「…本当に…?パパは…」
信じたくなかった。
でも…
…でも…
…いい遊び道具が手に入った。
c00lkiddは007n7に隠れ、様々なサーバーを荒らした。そして辿り着いた先。c00lkiddも何度か会ったことがある、Elliotの職場であるピザ屋だ。Elliotがいる場所であることには気づきやしなかった。考える余裕すら失っていた。そもそもそんなことどうでもよかった。この頃には、上手く笑えなくなっていた。
でも、007n7が自分を見つけてくれて。007n7に話しかけられて。あんなに必死に叫ぶ姿を見て。c00lkiddは思った。
「パパが僕のことを本気で好きだと思ってくれてるなら、それでいいや。」
別にみんなに好かれる必要などないじゃないか。みんなに嫌われていたって、いいじゃないか。
…ああ、そうか。簡単なことだったんだ。
「ああ、もう…!!どうしよう…」
「パパ…?」
少し遠くの方にElliotの姿が見えた。その目が007n7とc00lkiddを捉えた。Elliotは007n7の方に近づいてきて、こう言った。
「007n7さん……あなた…」
「違う…違う、ちが…!!僕はこんなもの、教えてない…!!」
「じゃあ、誰が…?あなたは、元ハッカーだと。そう、言いましたよね…」
今にも泣きそうな声でElliotは責め立てる。
「…その経験をこの子に教えたんじゃないですか…!?ねえ…!!!!」
自身の職場を今、こうして荒らされているわけだ。パニックに陥っていてもさほどおかしくはないだろう。とにかく、落ち着かせなければ。
「Elliot、本当に違うんだ…!!僕はc00lkiddにこんなこと、教えたつもりなんてない!!」
「口だけならどうとでも言えますよね…!」
「本当なんだ…確かに信じてもらうのは難しいかもしれないけど、本当に…」
007n7はふと後ろを振り返る。
…さっきまで後ろにいたはずのc00lkiddが、いない。
「…c00lkidd?こんな時に、どこに行ったの!?c00lkidd!!!」
007n7は駆け出す。もちろん、c00lkiddを探すために。
「………007n7、さん……」
Elliotは虚空に向かって呟く。
「信じてたのに…いい人だと、思っていたのに…」
c00lkiddを探しに行った007n7だが、どの方向に行ったのかもわからないのに探し当てるなど無理なことだ。guiを使って探そうとする…が、うまくいかない。c00lkiddの位置がわからない。
「…クソッ!!よりによって今かよ…!不具合でも起きたのか…!?」
近くを探し回ってみたが、どこにもいない。まだ子どもだから、そんなに遠くには行っていないと信じたい。
…結局、夜まで探しても見つからなかった。いろんなところに行ってみたのに、ことごとく空振った。
「どこに行ったの、c00lkidd…」
独り、誰もいない暗いリビングで呟く。でも…きっとc00lkiddは家に帰ってきてくれる。だって、c00lkiddはこの家に帰ってくるんだと、そう教えたから。
でもいくら待てどc00lkiddは帰ってこない。独りの時間を過ごす日々だ。3日ほどが経った頃、行方不明届を出した。警察がポスターを作ってくれた。
5日…
1週間…
残酷にも刻は過ぎていく。1日1日がとてつもない長さに感じられた。c00lkiddがいなくなって、もう1週間だ。だんだんと生きる気力さえ失いつつあった。でも、あの子が見つかる可能性が少しでもあるのならと今日もまた孤独の日を過ごす。仕事も休むことが多くなった。心配した同僚が家に来ることがあった。
「c00lkidd……」
毎日のようにc00lkiddの写真を眺めては、「早く戻ってきて」と願うばかりだ。もう、疲れてきてしまった。c00lkiddこそが生きる希望であったのに、それを失ってしまえば…
そうしてを2週間ほどを過ごした頃。仕事にもだんだんと復帰しつつあった。ある日、007n7の家を訪れる者がいた。警察だった。
「こんにちは。少しお時間よろしいでしょうか?」
「は、はい…えっと、c00lkiddのことは…どうなりましたか?」
「ちょうどその事についてお話させていただこうと思っていたところです。あなたのお子さんは見つかりました。」
「…えっ…!!み、見つかったんですか!?」
「はい…えっと、ですが…」
見つかったことに安堵し、喜んだのも束の間だった。次の瞬間、与えられたのは底無しの絶望だった。
「…お子さんは…残念ながら死亡していました。」
「……え…」
「…心中お察しいたします。見つかった時には既に死亡していました。死後2週間程度だと思われます。」
c00lkiddは死んでいた。その事実だけが頭の中をぐるぐる回って、その後の言葉が耳に入らなかった。何も考えられなくなった。立つのもやっとなほどの無力感が007n7を襲う。
「…ご遺体はこちらで預からせていただいています。もしよければ、見ていかれますか…?」
「…はい…」
我が子という生きる希望を失った007n7は、もう今すぐにでも消えてしまおうかと考えていた。でも、死ぬとしても、最期にc00lkiddの顔を見たかった。顔が見れなくてもいい。とにかく姿が見たかった。一度だけでも…
警察署に連れられ、遺体安置室へと入る。黒い納体袋に入った、横たわる冷たくなった我が子。その寝顔は、安らかなようにも、苦しんでいるようにも見える。
「ああ……ああぁぁあぁあ…!!!」
近づいて顔を見た瞬間、堪えきれなくなって涙が溢れ出た。足に力が入らなくなって、その場に崩れ落ちた。
「どうして…!!なんで…!?なんで、こんな…!!ねぇ…っ!!!」
受け止めきれない現実を前に、壊れずにはいられなかった。声が枯れるまで、身体中の水分が全て出切ってしまいそうなほど泣いた。泣き叫んだ。小さかった時の我が子のように。
帰ってきて、c00lkidd…
そう思ってももう手遅れなんだ。戻らない。
愛おしい我が子の顔が、こんなにも冷えきってしまうなんて。こうなってしまうのは自分の方が先だと思っていたのに。
「僕を…置いていかないでよ…c00lkidd…」
それからの日々をどう過ごしたか、もう覚えていない。
…
書いていてこっちも辛くなってくる うわああああああああああああ
この続きも頑張ります…………――――――
コメント
2件

あぁ!!三人とも全員辛い!!鬱大好きです!!😭 投稿ありがとうございます!神小説読めて嬉しいです!!😆😆